サイコロゲームで知る同期生産の重要性

 サイコロは、1から6までの数値を6分の1の等しい確率で発生させる乱数発生器です。平均3.5で無作為という現象を利用して、ゲーム参加者にとって等しい条件を作り出すことができます。

サプライチェーンの能力変動

図1 サイコロゲームによる能力変動シミュレーション〉

 もしサプライチェーンでサイコロを振って能力が決定されるとすればどうなるでしょう?3の目が出れば3個作り、2の目が出れば2個販売する、というようなサプライチェーンの業務がA,B,C,D,Eの5つから構成されているとします。それぞれの平均能力は3.5になりますが、能力はランダムな非同期の作業となります。AからEまでの順番にサイコロを振って、目の数がそれぞれの作業能力を表し、その数だけのチップを前の箱から取り出して次の作業者の箱に入れます。

 ただしサイコロの目の数が大きくても、自分の前の箱に入っているチップの数がサイコロの目の数よりも小さければ、能力はあっても材料が足りないことを表し、実在庫のチップ数のみ次の作業者の箱に入れます。能力はあっても材料がないので、能力に見合った作業は出来ません。

 逆にチップが充分あってもサイコロの目が小さければ、能力が制約となってサイコロの目の数だけしか移動できません。これはサプライチェーン上での供給と需要の同期化がうまく運営出来なければ、過剰在庫か、機会損失かどちらかのリスクが発生するのと同じことです。

サプライチェーン能力変動の結果
図2 サイコロゲームのシミュレーション結果

 さてこのようなサイコロゲームを10回分累計を取ったものが図2で、興味深い結果が得られました。全くランダムに同期していないAからEまでの5つの作業において、10回の累計でのチップの投入合計数は38個、Eから外部へ出したスループットは20個で、内部に蓄積されたチップの在庫は合計19個になっていました。図2のグラフをみると投入量、スループットの累計は、ジグザグしながらも直線となっていて、この2つの直線の縦軸方向の差が滞留するチップ在庫を表します。

 サプライチェーンから出て行くスループットは、投入量から在庫を引いた数です。これを一定の期間で見ると、スループットはサプライチェーンから出て行く速度で、投入速度から在庫が増える速度を引いたものになります。

 このゲームを現実のビジネスの場面に置き返るならば、サイコロの目で資材を購入し、生産し、輸送して販売する怠惰な「サイコロ経営」をすると、資材購入で流出した資金相当の資材が製品となって資金回収できるのは半分のみで、残りは在庫となっていつまでも積み上がって、やがて会社は倒産することを意味します。

 同期していれば滞留在庫は起こらず、投入した資材は全部製品となって請求書とともに出荷できますが、非同期の場合は時間的な歩留が投入量の半分にしかなりません。同期していればリードタイムが最小時間となりますが、非同期の場合は最小から無限大までばらつき、いつキャッシュが枯渇するか分かりません。同期していれば在庫は滞留せず、物不足も発生しませんが、非同期の場合は、いたるところで物不足と過剰在庫が発生するのです。

サプライチェーン同期の意味
図3 同期生産の重要性


この記事の著者

今岡 善次郎

在庫が収益構造とチームワークの鍵を握ります。人と人、組織と組織のつながり連鎖をどうマネジメントするかを念頭に現場と人から機会分析します。

・製品構成・生産・販売の全体のつながりSCM(サプライチェーンマネジメント)の中でキャッシュ収益を改善します。 ・サプライチェーンマネジメントの源流にトヨタ式経営を求め、そのさらに源流としてドラッカー経営に行きました。 ・マネジメント…

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