三現主義と5ゲン主義(その2)

更新日

投稿日

 前回の三現主義と5ゲン主義(その1)に続いて、今回は経営者、管理監督者の現場対応事例を紹介します。

 これまでにいろいろな会社・工場に呼ばれました。その中で、経営者・管理監督者の対応の仕方で気になっていることがあります。予め日程調整をしてありますので、実際の訪問時TOPや管理職の方もスケジュールを調整し対応してくれることが多いです。最初は、応接室や会議室で情報交換や進め方等を打ち合わせします。その後、実際に現場に入る時に、以下の2つのパターンに別れます。

1.一緒に現場を見る場合

 元々日程調整がされていますから、経営者や管理職の方が当日のスケジュールを空けておいてくれて、一緒に現場診断に立ち合う場合は、私も診断、指導に熱が入ります。 TOPの方が見慣れた自分の工場・現場を、社外の人に見てもらうことで、違った視点からさらに問題を顕在化させ改善しようとする意気込みを感じるからです。 こういう会社、工場はTOPが熱心ですから、社員の方も一生懸命になります。

 私が行ったところで、特別な会社がありました。 何度も通いましたが、必ず社長が現場診断に立ち合うところです。ここでは訪問の度に現場が改善され、品質も徐々にではありますが、右肩上がりになっていると感じます。 会社が生き生きしています。 そのうちに、お陰さまで利益が出ました。歩留まりが上がりました等と報告を受けると嬉しくなります。 そして、更に指導のレベルを上げて行こう。もっと良く診てやろうと思います。 こうなると、日頃から社長をはじめ管理職の方も現場に入るようになり、現場の人の遣り甲斐にも繋がります。 働きぶりを見てもらったり、仕事への取り組みが評価される、そして誉められれば、現場も生き生きし、品質の向上や、人財育成にも繋がっていきます。これもOJTの一部のようにも思います。 こうなって来ると、上層部と現場の意思疎通ができ、そのパイプが太くなります。そして、悪い情報も隠すのではなく、早く報告がされる風土が出来て来ますから、例え何か問題が起きても被害が最小限に抑えられます。

 品質管理の話になりますが、日本の品質の高さ、強さは、①作業者の品質意識が高い、②工程で品質を作り込む、ことだと言われます。 この背景には、日頃からこういった水面下の地道な努力の積み重ねがあるからこそであって、いきなり出来るわけではないのです。

 

2.現場を見ない場合

 これとは反対の例にも多々遭遇して来ました。会社の規模にもよりますが、経営層の方が最初の打ち合わせや、情報交換の席にまでは同席しても、いざ現場に入ろうと言う時に、「では、後はよろしく!」と言って自分の席に戻ってしまう場合があります。後は、担当者にお任せ、と言うことですね。こうなるとがっかりです。一緒に現場を見てくれるのではないのですか?と言いたくなります。

 この場合、現場で不具合を指摘したり、具体的な指導をして、最後にその日のまとめをする時になって、また会議室に顔を出し、「現場はどうでした?」と聞かれることが多いです。 そこで、その日発見した不具合や問題を報告すると、急に顔色が変わって、「そんなはずはない!うちはそんな指導はしていない!」と言われる事があります。 そして、現場診断に立ち合った担当者に対して「本当にそんなことがあるの? うちの工場はそんなにひどいの?」と怖い顔で問い詰める場合があります。担当者も、自社の上位の方からそんな風に言われると、自分の立場もあるので、「それほどでもないですが・・・」と言葉を濁さずにはいられません。事実が報告出来ないんです...

 前回の三現主義と5ゲン主義(その1)に続いて、今回は経営者、管理監督者の現場対応事例を紹介します。

 これまでにいろいろな会社・工場に呼ばれました。その中で、経営者・管理監督者の対応の仕方で気になっていることがあります。予め日程調整をしてありますので、実際の訪問時TOPや管理職の方もスケジュールを調整し対応してくれることが多いです。最初は、応接室や会議室で情報交換や進め方等を打ち合わせします。その後、実際に現場に入る時に、以下の2つのパターンに別れます。

1.一緒に現場を見る場合

 元々日程調整がされていますから、経営者や管理職の方が当日のスケジュールを空けておいてくれて、一緒に現場診断に立ち合う場合は、私も診断、指導に熱が入ります。 TOPの方が見慣れた自分の工場・現場を、社外の人に見てもらうことで、違った視点からさらに問題を顕在化させ改善しようとする意気込みを感じるからです。 こういう会社、工場はTOPが熱心ですから、社員の方も一生懸命になります。

 私が行ったところで、特別な会社がありました。 何度も通いましたが、必ず社長が現場診断に立ち合うところです。ここでは訪問の度に現場が改善され、品質も徐々にではありますが、右肩上がりになっていると感じます。 会社が生き生きしています。 そのうちに、お陰さまで利益が出ました。歩留まりが上がりました等と報告を受けると嬉しくなります。 そして、更に指導のレベルを上げて行こう。もっと良く診てやろうと思います。 こうなると、日頃から社長をはじめ管理職の方も現場に入るようになり、現場の人の遣り甲斐にも繋がります。 働きぶりを見てもらったり、仕事への取り組みが評価される、そして誉められれば、現場も生き生きし、品質の向上や、人財育成にも繋がっていきます。これもOJTの一部のようにも思います。 こうなって来ると、上層部と現場の意思疎通ができ、そのパイプが太くなります。そして、悪い情報も隠すのではなく、早く報告がされる風土が出来て来ますから、例え何か問題が起きても被害が最小限に抑えられます。

 品質管理の話になりますが、日本の品質の高さ、強さは、①作業者の品質意識が高い、②工程で品質を作り込む、ことだと言われます。 この背景には、日頃からこういった水面下の地道な努力の積み重ねがあるからこそであって、いきなり出来るわけではないのです。

 

2.現場を見ない場合

 これとは反対の例にも多々遭遇して来ました。会社の規模にもよりますが、経営層の方が最初の打ち合わせや、情報交換の席にまでは同席しても、いざ現場に入ろうと言う時に、「では、後はよろしく!」と言って自分の席に戻ってしまう場合があります。後は、担当者にお任せ、と言うことですね。こうなるとがっかりです。一緒に現場を見てくれるのではないのですか?と言いたくなります。

 この場合、現場で不具合を指摘したり、具体的な指導をして、最後にその日のまとめをする時になって、また会議室に顔を出し、「現場はどうでした?」と聞かれることが多いです。 そこで、その日発見した不具合や問題を報告すると、急に顔色が変わって、「そんなはずはない!うちはそんな指導はしていない!」と言われる事があります。 そして、現場診断に立ち合った担当者に対して「本当にそんなことがあるの? うちの工場はそんなにひどいの?」と怖い顔で問い詰める場合があります。担当者も、自社の上位の方からそんな風に言われると、自分の立場もあるので、「それほどでもないですが・・・」と言葉を濁さずにはいられません。事実が報告出来ないんですね。これは、同席した管理・監督者も同じです。すると経営者の方は、「そうだよな。いつも厳しく指導しているはずだから、そんなにひどいことは無いはずだ」と言うことで、折角現場を見ても、事実よりも“はず”の方が優先されてしまいます。そんな場面に遭遇しますと、「私は何のためにここに来たんだろう」と思いますし、これだけ話が食い違うのだから、上層部の方も、現場を見ていないんだろうと思います。

 こういうところでは、何度訪問しても、改善はあまり進まず、体質は良くなりません。上層部と現場との繋がりも薄いと感じます。 これでは指導にも力が入りません。そこにノウハウを沢山公開しても、かえって混乱するだろうし、ノウハウの価値も認めてもらえないと思うからです。

 あなたの現場は、どちらでしょうか?

◆関連解説『環境マネジメント』

   続きを読むには・・・


この記事の著者

清水 英範

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

在社中、クリーン化25年の経験、国内海外のクリーン化教育、現場診断・指導多数。ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め...


「クリーン化技術」の他のキーワード解説記事

もっと見る
クリーン化の進め方 クリーン化について(その43)

     前回、クリーンルームの定義について説明しました。概念図でクリーンルームのイメージがおよそ把握できたと思います。クリーンル...

     前回、クリーンルームの定義について説明しました。概念図でクリーンルームのイメージがおよそ把握できたと思います。クリーンル...


素材が短繊維か長繊維か,知識を持ちながら拭き取ることとは

 今回は、清掃手順にも関連する“短繊維と長繊維”についてお話します。 清掃手順の中では、寝室から先に清掃をします。なぜなら寝室は布団等寝具からゴミが出る、...

 今回は、清掃手順にも関連する“短繊維と長繊維”についてお話します。 清掃手順の中では、寝室から先に清掃をします。なぜなら寝室は布団等寝具からゴミが出る、...


人財育成(その5) クリーン化について(その100)

  クリーン化について、人財育成に触れています。今回のその5、前回に引き続き、人を育てるにはです。 【この連載の前回:クリーン化について...

  クリーン化について、人財育成に触れています。今回のその5、前回に引き続き、人を育てるにはです。 【この連載の前回:クリーン化について...


「クリーン化技術」の活用事例

もっと見る
人はタイミングよく誉めよ -3つの例を添えて-

 私はクリーン化指導で多くの現場に立ち会ってきましたが、どんな業種、職種でも、人財育成はその会社、企業にとっては非常に大切なことです。故に日本では、昔から...

 私はクリーン化指導で多くの現場に立ち会ってきましたが、どんな業種、職種でも、人財育成はその会社、企業にとっては非常に大切なことです。故に日本では、昔から...


事例紹介、東南アジアでの資材購入

 東南アジアの工場での資材購入について説明します。国内空洞化と言われ、東南アジアに進出する企業も多いですが、現地に工場を構えると、資材も現地調達しなければ...

 東南アジアの工場での資材購入について説明します。国内空洞化と言われ、東南アジアに進出する企業も多いですが、現地に工場を構えると、資材も現地調達しなければ...


顧客満足度向上 クリーン化の目的 (その3)

 クリーン化の目的の下記4点から、今回は、(3)CSの向上(Audit対応)、翻ってCSの向上につなげることについて解説します。      (1)歩留...

 クリーン化の目的の下記4点から、今回は、(3)CSの向上(Audit対応)、翻ってCSの向上につなげることについて解説します。      (1)歩留...