確率論的アプローチこそがリーンシックスシグマの核心

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 パワーポイントを使って一時間近く、くどくどとリーンシックスシグマについて説明した後、退屈した一人の参加者が「では一言で言って、リーンシックスシグマとは一体何ですか?」と聞いてきました。決して彼を雲に巻くつもりはなかったのですが、一時間の内容を一言でまとめれば「リーンシックスシグマは確率論的アプローチをとる問題解決方法です」と答えました。この確率論的アプローチこそがリーンシックスシグマの核心だと思うからです。
 
 リーンシックスシグマでは、平均値とか最大(最小)値とかはそれほど重要ではなく、むしろある値がバラツキの中に存在する確率や、ある値が最大(最小値)を超えてしまう確率の方がよっぽど問題を解決するには重要だからです。
 
 なにも統計の話だけをしているわけではありません。リーンシックスシグマで使われる一般的なツール類も同じです。一般的なツールであっても必ずと言って良いほど、項目を数値化し、そして項目の優先順位付けを行います。優先順位はつまり、成功の”確率”だったりリスクの”確率”を意味します。そのためリーンシックスシグマは「確率を求めたいが故にツールを使う」「確率の精度を上げたいが故にツールを選ぶ」とも言えるかもしれません。
  品質工学
 
 確率論的アプローチ(Probabilistic Approach)の反対は決定論的アプローチ(Deterministic Approach)です。決定論的アプローチは平均値や最大(最小)値といった定数を使って、問題を解決しようとします。例えばあるプロセスを改善した場合、処理速度の平均値が下がったからプロセスが改善したと言えるでしょうか。いったい平均値をどのように求めたのでしょうか? サンプル数は? 分布の形状は? 分散の度合いは? 平均値だけではプロセスの改善を正確に判断することはできないでしょう。
 
 リーンシックスシグマはツール類を多用しますが、ツール類の使い方を覚えるのがリーンシックスシグマだと理解すると、リーンシックスシグマの本質を見失うことになります。企業は 1 パーセント刻みで売り上げ目標や コストダウン目標に掲げますが、それらが成功する確率を少しでも上げるためにリーンシックスシグマは各種ツールを使います。例えば FEMA はRPN(Risk Priority Number)を求めてリスク項目に優先順位を付けますが、それはリスクを減らし企業の利益を最大限にするための確率を求めている、といっても良いでしょう。
 
 しかし一般社会では決定論的アプローチで物事が判断される場合が殆どです。新聞を見ても、日頃の会話の中でも、平均値や最悪値をもとに議論されています(飛行機事故や原子力災害などが良い例です)。確率で議論されることは非常に稀です。そのためでしょう...
 
 パワーポイントを使って一時間近く、くどくどとリーンシックスシグマについて説明した後、退屈した一人の参加者が「では一言で言って、リーンシックスシグマとは一体何ですか?」と聞いてきました。決して彼を雲に巻くつもりはなかったのですが、一時間の内容を一言でまとめれば「リーンシックスシグマは確率論的アプローチをとる問題解決方法です」と答えました。この確率論的アプローチこそがリーンシックスシグマの核心だと思うからです。
 
 リーンシックスシグマでは、平均値とか最大(最小)値とかはそれほど重要ではなく、むしろある値がバラツキの中に存在する確率や、ある値が最大(最小値)を超えてしまう確率の方がよっぽど問題を解決するには重要だからです。
 
 なにも統計の話だけをしているわけではありません。リーンシックスシグマで使われる一般的なツール類も同じです。一般的なツールであっても必ずと言って良いほど、項目を数値化し、そして項目の優先順位付けを行います。優先順位はつまり、成功の”確率”だったりリスクの”確率”を意味します。そのためリーンシックスシグマは「確率を求めたいが故にツールを使う」「確率の精度を上げたいが故にツールを選ぶ」とも言えるかもしれません。
  品質工学
 
 確率論的アプローチ(Probabilistic Approach)の反対は決定論的アプローチ(Deterministic Approach)です。決定論的アプローチは平均値や最大(最小)値といった定数を使って、問題を解決しようとします。例えばあるプロセスを改善した場合、処理速度の平均値が下がったからプロセスが改善したと言えるでしょうか。いったい平均値をどのように求めたのでしょうか? サンプル数は? 分布の形状は? 分散の度合いは? 平均値だけではプロセスの改善を正確に判断することはできないでしょう。
 
 リーンシックスシグマはツール類を多用しますが、ツール類の使い方を覚えるのがリーンシックスシグマだと理解すると、リーンシックスシグマの本質を見失うことになります。企業は 1 パーセント刻みで売り上げ目標や コストダウン目標に掲げますが、それらが成功する確率を少しでも上げるためにリーンシックスシグマは各種ツールを使います。例えば FEMA はRPN(Risk Priority Number)を求めてリスク項目に優先順位を付けますが、それはリスクを減らし企業の利益を最大限にするための確率を求めている、といっても良いでしょう。
 
 しかし一般社会では決定論的アプローチで物事が判断される場合が殆どです。新聞を見ても、日頃の会話の中でも、平均値や最悪値をもとに議論されています(飛行機事故や原子力災害などが良い例です)。確率で議論されることは非常に稀です。そのためでしょうか、弊社のブラックベルト氏でも「平均値が下がったからプロジェクトが成功した」と平気で言ったりします。
 
 確かに平均値は簡単で分かりやすい指標です。しかし 1 パーセントの誤差が企業に 100 億円の影響を与えるような場合、平均値だけで物事を判断するわけには行きません。成功には必ずリスクがつきものです。成功の確率がリスクの確率を上回るかどうか、そこが知りたいのです。リーンシックスシグマはそのための道具箱です。
 

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この記事の著者

津吉 政広

リーンやシックスシグマ、DFSSなど、問題解決のためのフレームワークを使った新製品の開発や品質の向上、プロセスの改善を得意としています。「ものづくり」に関する問題を一緒に解決してみませんか?

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