機能の分類 設計機能(その3)

【設計機能 連載目次】

 前回のその2に続いて解説します。
 
 多くの製品やサービスにおいては、顕在的な機能は定義しやすいが、潜在的な機能は見逃しやすくなります。それを漠然と捉えて、本質を見失っていた可能性もあります。この潜在的な機能の中に、機会損失が多く含まれている場合が多いため、この機能を漏れなく抽出する必要があります。漏れをなくすため、ここでは機能をロジカルシンキングのMECE的に、いくつかの意味に分類して俯瞰できるようにしてみました。
 
 つまり、機能にはいろいろな意味が考えられます。機能をいくつかの意味で括ってみると図1のような構成になります。また違った視点で本質的な機能にフォーカスしてみてください。
 
図1. 機能の分類
 

1. 方式具現化機能

 
 対象にとって本来必要な機能をより具体的な方式、手段、仕様として落とし込むために必要な機能になります。例えば、トースターの場合には、次のようになります。
 
 【目的】パンを焼く。
 【方式具現化機能】パンに熱を加えること。あるいは、パンに焦げ目をつけること。
 【原理】ニクロム線等のヒーターを利用する。
 
 上記のトースターのようなものは、対象が複数の部品から構成されているため、機能もシステム的になります。一般的に機能は、次のように表現されます。 
 IN機能(電流を流す)➡ 中間機能(電流を熱に変換する)➡ OUT機能(熱を発生する)
 
 IN機能は次のように定義(表現)します。但し、一つのシステムに一つとは限りません。また、上記のトースターの例のように、他のシステムのOUT機能がそのままIN機能となるケースもあります。
 「・・を受ける」「・・を吸収する」「・・を導く」「・・を検知する」等
 
 中間機能は次のように定義(表現)します。但し、これも一つのシステムに一つとは限りません。
 「・・を保持する」「・・を伝達する」「・・を抑制する」「・・を増幅する」等
 
 OUT機能は次のように定義(表現)します。但し、一つのシステムに一つとは限りません。他のシステムのOUT機能がそのままIN機能となるケースもあります。
 「・・を供給する」「・・を発生する」「・・を排出する」「・・を流す」等
 

2. 補足機能

 
 補足機能は、方式補足機能と条件補足機能に分けられます。
 

(1) 方式補足機能とは

 
 特定の方式を選んだために、対象の機能を十分果たせない場合の補足となります。方式選択に誤りがあると大きな機会損失が発生します。例えば、軸の回転を支えるためにメタル式ベアリングを採用したとします。その結果、摩擦熱により「熱」が発生し、空気等で冷却したり、油で潤滑したりする機能を補う必要性が発生します。
 

(2) 条件補足機能

 
 与えられた機能条件、使用条件、制約条件等を十分果たせなかったケースにこれを補う機能のことを言います。例えば、ベアリングを屋外で使用する条件では、「錆を防ぐ」機能が付加されます。寿命を7年間とすれば、回転部の摩耗を防ぐことが必要になります。
 

3.結合機能

 
 複数の部品間を何らかの方法で結合する機能が必要になります。
 

(1) 製品をどこかに置く機能

 この場合は次のように定義(表現)しまます。
 「・・を固定する」「・・を取り付ける」「・・を止める」等
 

(2) システム内の部品間を結合する機能

 この場合は次のように定義(表現)します。
 「・・に固定する」「・・に結合する」「・・に止める」等
 

4. 魅力向上機能

 
 その機能が無くても製品本来の機能は果たせて...
いる上で、さらに売り易くするために盛り込まれる機能になります。この場合は次のように定義(表現)します。ソフトウェアの場合には、主にこの機能のことを「非機能要件」と定義しています。
 「・・を操作しやすくする」「・・をメンテナンスしやすくする」「外観を美しくする」等
 
注:機能要件とは、要件定義のうち、機能要件に当てはまるもの以外を「非機能要件」と呼びます。可用性、性能/拡張性、運用/保守性、移行性、セキュリティ、システム環境/エコロジーのことを主に指しています。
 
  
◆関連解説『技術マネジメントとは』

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