ステージゲートプロセスの活用(その1)

更新日

投稿日

1.ステージゲートプロセスの目的

 
 ステージゲートプロセスは、日本では研究開発テーマを管理する手法と理解されていますが、その理解は正しくありません。ステージゲートプロセスの目的は、イノベーションを継続して起こすためのマネジメント体系です。本稿では、ステージゲートプロセスでどうイノベーションを実現するのかを、解説していきます。
 

2.ステージゲートプロセスとは

 
 ステージゲートプロセスとは1980年代にカナダのマクマスター大学のロバート・クーパー教授が創った、研究開発などのテーマをマネジメントし、事業の成功に結び付けるためのマネジメント体系です。開発から30年を経た現在までに世界中で広く利用され、北米の製造業では8割の企業が同法を使用していると言われ、テーマ・マネジメントの世界標準となっています。
 
 ステージゲートプロセスは、テーマの創出から、製品の市場投入、更にはその先までのプロセスを複数の活動、すなわち「ステージ」に分け、各ステージの間には評価の関門である「ゲート」を設け、そこでそのテーマを次のステージに進めるかどうかを評価し意思決定するというプロセスです。図1のように、テーマが市場投入するには複数の関門(「ゲート」)をくぐりぬけることが求められます。
 
           ステージゲート
 図1.製品開発のステージゲートプロセス
 

3.ステージゲートプロセスに組み込まれたイノベーションのための2つの仕組み

 
 ステージゲートプロセスには、2つのイノベーションの仕組みが組み込まれています。
 
 まず1つ目の仕組みですが、革新的テーマ(イノベーション)は、他社が手掛けていないテーマですから、その不確実性は当然高くなります。つまり革新性と不確実性はコインの裏表の関係にあると言えます(図2)。したがって、この不確実性をうまくマネジメントできないと、革新的テーマの創出とその事業での成功を実現することはできません。図2のように、ステージゲートプロセスは、この不確実性をうまくマネジメントし、革新的なテーマを選び事業の成功、すなわちイノベーションを実現するためのシステムです。
 
        ステージゲート
 図2.革...

1.ステージゲートプロセスの目的

 
 ステージゲートプロセスは、日本では研究開発テーマを管理する手法と理解されていますが、その理解は正しくありません。ステージゲートプロセスの目的は、イノベーションを継続して起こすためのマネジメント体系です。本稿では、ステージゲートプロセスでどうイノベーションを実現するのかを、解説していきます。
 

2.ステージゲートプロセスとは

 
 ステージゲートプロセスとは1980年代にカナダのマクマスター大学のロバート・クーパー教授が創った、研究開発などのテーマをマネジメントし、事業の成功に結び付けるためのマネジメント体系です。開発から30年を経た現在までに世界中で広く利用され、北米の製造業では8割の企業が同法を使用していると言われ、テーマ・マネジメントの世界標準となっています。
 
 ステージゲートプロセスは、テーマの創出から、製品の市場投入、更にはその先までのプロセスを複数の活動、すなわち「ステージ」に分け、各ステージの間には評価の関門である「ゲート」を設け、そこでそのテーマを次のステージに進めるかどうかを評価し意思決定するというプロセスです。図1のように、テーマが市場投入するには複数の関門(「ゲート」)をくぐりぬけることが求められます。
 
           ステージゲート
 図1.製品開発のステージゲートプロセス
 

3.ステージゲートプロセスに組み込まれたイノベーションのための2つの仕組み

 
 ステージゲートプロセスには、2つのイノベーションの仕組みが組み込まれています。
 
 まず1つ目の仕組みですが、革新的テーマ(イノベーション)は、他社が手掛けていないテーマですから、その不確実性は当然高くなります。つまり革新性と不確実性はコインの裏表の関係にあると言えます(図2)。したがって、この不確実性をうまくマネジメントできないと、革新的テーマの創出とその事業での成功を実現することはできません。図2のように、ステージゲートプロセスは、この不確実性をうまくマネジメントし、革新的なテーマを選び事業の成功、すなわちイノベーションを実現するためのシステムです。
 
        ステージゲート
 図2.革新性と不確実性との関係
 
 もう1つですが、ステージゲートプロセスには、研究者の「自由」と「管理」のメリハリのついたバランスを実現し、研究者のイノベーションを促進する仕組みが組み込まれています。次回のステージゲートプロセスの活用(その2)では、この2つの仕組みについて解説します。
 
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

浪江 一公

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。

プロフェッショナリズムと豊富な経験をベースに、革新的な製品やサービスを創出するプロセスの構築のお手伝いをいたします。


「ステージゲート法」の他のキーワード解説記事

もっと見る
革新的テーマを継続的に創出するための外発的動機付け

 動機づけには「内発的」なものと「外発的なもの」があるわけですが、一般的に「内発的動機づけ」は「内発的」であるがゆえに、モチベーションを故意に作り出すマネ...

 動機づけには「内発的」なものと「外発的なもの」があるわけですが、一般的に「内発的動機づけ」は「内発的」であるがゆえに、モチベーションを故意に作り出すマネ...


顧客と共同開発することで、技術動向や課題を深く知る

1.顧客と共同開発する意味  顧客との共同開発は、ある具体的な製品や技術で一つの成果を決めて、その成果に向けて取り組むものです。しかし、ここでは顧客を深...

1.顧客と共同開発する意味  顧客との共同開発は、ある具体的な製品や技術で一つの成果を決めて、その成果に向けて取り組むものです。しかし、ここでは顧客を深...


技術の目利きを考える

 時々、私が行なっているステージゲート法のセミナーで参加者の皆さんから出される質問に、テーマの選定には「技術の目利き」が必要かというものがあります。今回は...

 時々、私が行なっているステージゲート法のセミナーで参加者の皆さんから出される質問に、テーマの選定には「技術の目利き」が必要かというものがあります。今回は...


「ステージゲート法」の活用事例

もっと見る
オープンイノベーションにおけるライトハウスカスタマーの事例2件

 情報・知識を多様化するコンセプトとして、オープンイノベーションが注目されています。今回は、そのための情報発信先としてのライトハウスカスタマーについて、B...

 情報・知識を多様化するコンセプトとして、オープンイノベーションが注目されています。今回は、そのための情報発信先としてのライトハウスカスタマーについて、B...


積極的情報発信の事例

  「情報の収集のための積極的情報発信」の必要性については、りんご(情報)を収穫するのに、一つ一つのりんごをりんごの木からもぎ取るのではなく、りんごの木の...

  「情報の収集のための積極的情報発信」の必要性については、りんご(情報)を収穫するのに、一つ一つのりんごをりんごの木からもぎ取るのではなく、りんごの木の...


3Mにおける組織内の知識・情報活用の事例

 研究テーマの設定、推進にあたって、組織内の知識・情報(特に技術に関する)の活用は極めて有用ですが、それを徹底しているのがイノベーションで有名な3Mです。...

 研究テーマの設定、推進にあたって、組織内の知識・情報(特に技術に関する)の活用は極めて有用ですが、それを徹底しているのがイノベーションで有名な3Mです。...