物流容器の考え方

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1. トラックの荷台とパレット

 皆さんがモノを運ぶ時に必要になる容器。容器にモノを入れて保管、運搬、輸送などを実施しますが、モノが入った状態を荷姿と呼びます。荷姿を形成する容器、単に箱を買ってきてそれを使えばよいという単純なものではありません。容器には思想が必要です。その思想について考えていきたいと思います。
 
 まず容器には「統一感」が必要です。その前提として物流で最大のコストを発生させる工程である輸送を考慮することが重要です。容器は輸送に使う機器をベースに大きさと形状を考えなければなりません。意外とこの発想は少ないようです。その結果として、輸送で大きなロスを発生させてしまっています。先日もある方が話していましたが、パレットを1m四方にしたとのこと。ご存知の通り、JIS規格で最もポピュラーなパレットは1.1m四方です。
 
 JIT規格のパレットでは10トントラックと相性が悪く、縦方向に8枚しか詰まりません。その結果、荷台の後方に40㎝の隙間ができてしまいます。1mのパレットではその隙間が半分の20㎝まで縮まるのです。このようなことを考えることは非常に重要です。もし40㎝の隙間を空けたまま輸送する場合、約2㎥の空間が使われないままということになります。これは荷台のおおよそ4%がロスということになります。たとえば5万円の輸送費だったとしたら、2000円分はムダ金ということになります。先ほどの例ではそのロスは1000円まで縮まります。
 
 パレットの例をお話してきましたが、実際はパレットの上に載せる容器(箱)について考えなければなりません。その時の基本は、パレット上に容器がきっちりと積み込むことができ、容器間に隙間ができないことです。風車組にした時に、真ん中にできる穴、これをピンホールと呼びますが、これが発生するような容器は好ましくありません。つまりパレットに積み上げたときに空間ができず、トラックに積載した時に荷台に余計な空間が発生しないことがポイントです。
 
 SCM
 

2. 容器モジュールの統一

 容器の考え方として統一感が重要なのですが、その統一感の1つが「容器同士が重なること」です。そのためには1つには底面積が同じで高さだけが違うこと、もう1つは底面積が異なったとしても、大きな容器の上に小さな容器が積み重なることがポイントとなります。この考え方はパレットの上に載せる箱型容器でも、大型の鉄製容器でも同じです。要は積み重ねができることを重要ポイントとして考えます。この時に、容器の部位の内、積み重ねる「箇所」がどのようになっているかが重要です。ここが異なっていると底面積が同じでも重ねることができません。
 
 容器の四隅に柱があります。この根元がお椀をひっくり返したような「皿タイプ」と、容器の中央にくぼみがあり、そこに他容器の突起がはまるようになっている「ネスティングタイプ」があります。このタイプを統一することも重要になってくるのです。パレットに載せる小型容器も、大型の鉄製容器も空の時には圧縮できるように設計しなければなりません。
 
 圧縮の仕方にも「折り畳み」と「ネスティング」があります。中に何も入れないときには空容器だけを輸送しますので、できるだけ圧縮することが望ましいでしょう。圧縮には容器保管場を小さくできるというメリットもあります。圧縮するときに「工数がかかる」とか、「誰がたたむべきか」などの不毛な論議を耳にすることがありますが、圧縮しないために会社で余分な輸送費を流出させることの方を論議すべきです。仮に今すぐに折りたためなくても、圧縮仕様にしておけば、その時に圧縮が可能ですから、必ずそのような仕様にしておきましょう。
 
 容器の考え方として「できるだけ種類数を絞る」ことも重要です。種類を増やせば増やすほど管理は大変ですし、輸送上のロスも発生しやすくなります。容器モジュールを決め、その範囲内で荷姿をつくっていくことを心がけましょう。さて容器モジュールを定めた後には運用が待っています。ここももしかしたら少し骨が折れることがあるかもしれません。企業グループとして統一された容器モジュールを活用することは、間違いなく物流効率化につながります。一方でこれができないと様々な物流ロスを発生させかねないので注意が必要です。
 

3. 容器重量に注意

 物流容器は物流工程で欠かせないものであることは事実です。しかしだからといって容器自体があまりにも自己主張しすぎることは望ましくありません。何を言っているのかというと、ユーザーが欲しいものは容器の中に入った製品であり、容器を欲しているわけではないということです。ですから容器はできるだけ薄く、軽くあるべきです。できれば製品は容器を使わずに「裸」のままで運びたいところです。容器は「最小限」であるべきでしょう。
 
 容器設計を行う際には重量に気を配る必要があります。たとえば手でハンドリングするボックスの場合、製品重量と合わせた重量が人に負荷がかかる荷姿重量となります。これを一定の範囲内に収める必要があります。あまりにも箱の重量が重いと、肝心の製品の入り数が少なくなってしまいます。
 
 この考え方は手扱いの容器以外でも当然考えなければならないことです。鉄製ボックスパレットの場合、フォークで荷扱いするためあまり容器重量...

1. トラックの荷台とパレット

 皆さんがモノを運ぶ時に必要になる容器。容器にモノを入れて保管、運搬、輸送などを実施しますが、モノが入った状態を荷姿と呼びます。荷姿を形成する容器、単に箱を買ってきてそれを使えばよいという単純なものではありません。容器には思想が必要です。その思想について考えていきたいと思います。
 
 まず容器には「統一感」が必要です。その前提として物流で最大のコストを発生させる工程である輸送を考慮することが重要です。容器は輸送に使う機器をベースに大きさと形状を考えなければなりません。意外とこの発想は少ないようです。その結果として、輸送で大きなロスを発生させてしまっています。先日もある方が話していましたが、パレットを1m四方にしたとのこと。ご存知の通り、JIS規格で最もポピュラーなパレットは1.1m四方です。
 
 JIT規格のパレットでは10トントラックと相性が悪く、縦方向に8枚しか詰まりません。その結果、荷台の後方に40㎝の隙間ができてしまいます。1mのパレットではその隙間が半分の20㎝まで縮まるのです。このようなことを考えることは非常に重要です。もし40㎝の隙間を空けたまま輸送する場合、約2㎥の空間が使われないままということになります。これは荷台のおおよそ4%がロスということになります。たとえば5万円の輸送費だったとしたら、2000円分はムダ金ということになります。先ほどの例ではそのロスは1000円まで縮まります。
 
 パレットの例をお話してきましたが、実際はパレットの上に載せる容器(箱)について考えなければなりません。その時の基本は、パレット上に容器がきっちりと積み込むことができ、容器間に隙間ができないことです。風車組にした時に、真ん中にできる穴、これをピンホールと呼びますが、これが発生するような容器は好ましくありません。つまりパレットに積み上げたときに空間ができず、トラックに積載した時に荷台に余計な空間が発生しないことがポイントです。
 
 SCM
 

2. 容器モジュールの統一

 容器の考え方として統一感が重要なのですが、その統一感の1つが「容器同士が重なること」です。そのためには1つには底面積が同じで高さだけが違うこと、もう1つは底面積が異なったとしても、大きな容器の上に小さな容器が積み重なることがポイントとなります。この考え方はパレットの上に載せる箱型容器でも、大型の鉄製容器でも同じです。要は積み重ねができることを重要ポイントとして考えます。この時に、容器の部位の内、積み重ねる「箇所」がどのようになっているかが重要です。ここが異なっていると底面積が同じでも重ねることができません。
 
 容器の四隅に柱があります。この根元がお椀をひっくり返したような「皿タイプ」と、容器の中央にくぼみがあり、そこに他容器の突起がはまるようになっている「ネスティングタイプ」があります。このタイプを統一することも重要になってくるのです。パレットに載せる小型容器も、大型の鉄製容器も空の時には圧縮できるように設計しなければなりません。
 
 圧縮の仕方にも「折り畳み」と「ネスティング」があります。中に何も入れないときには空容器だけを輸送しますので、できるだけ圧縮することが望ましいでしょう。圧縮には容器保管場を小さくできるというメリットもあります。圧縮するときに「工数がかかる」とか、「誰がたたむべきか」などの不毛な論議を耳にすることがありますが、圧縮しないために会社で余分な輸送費を流出させることの方を論議すべきです。仮に今すぐに折りたためなくても、圧縮仕様にしておけば、その時に圧縮が可能ですから、必ずそのような仕様にしておきましょう。
 
 容器の考え方として「できるだけ種類数を絞る」ことも重要です。種類を増やせば増やすほど管理は大変ですし、輸送上のロスも発生しやすくなります。容器モジュールを決め、その範囲内で荷姿をつくっていくことを心がけましょう。さて容器モジュールを定めた後には運用が待っています。ここももしかしたら少し骨が折れることがあるかもしれません。企業グループとして統一された容器モジュールを活用することは、間違いなく物流効率化につながります。一方でこれができないと様々な物流ロスを発生させかねないので注意が必要です。
 

3. 容器重量に注意

 物流容器は物流工程で欠かせないものであることは事実です。しかしだからといって容器自体があまりにも自己主張しすぎることは望ましくありません。何を言っているのかというと、ユーザーが欲しいものは容器の中に入った製品であり、容器を欲しているわけではないということです。ですから容器はできるだけ薄く、軽くあるべきです。できれば製品は容器を使わずに「裸」のままで運びたいところです。容器は「最小限」であるべきでしょう。
 
 容器設計を行う際には重量に気を配る必要があります。たとえば手でハンドリングするボックスの場合、製品重量と合わせた重量が人に負荷がかかる荷姿重量となります。これを一定の範囲内に収める必要があります。あまりにも箱の重量が重いと、肝心の製品の入り数が少なくなってしまいます。
 
 この考え方は手扱いの容器以外でも当然考えなければならないことです。鉄製ボックスパレットの場合、フォークで荷扱いするためあまり容器重量について論議されることはないかもしれません。しかし手扱いボックスと同様、容器重量が重すぎると製品を入れる数量が制限されることがあります。なぜなら鉄製ボックスパレットに製品を入れてトラック輸送する場合があるからです。つまりトラック輸送の場合の過積載の問題があるのです。会社としてはできるだけ多くを輸送したいと思ったとしても、容器重量の分だけ製品を運べない事実があります。出荷等で輸送が伴う荷姿はこの容器重量にはデリケートになる必要があると思います。
 
 また、輸送を伴う荷姿の内、台車タイプの荷姿についても考えてみたいと思います。容器に車輪がついているタイプを想像してみましょう。輸送の前後工程で運搬が発生する場合、その容器そのものに車輪を付けておけば、荷降ろししたらそのまま牽引等で運搬できるので便利だという考え方です。この利便性はよく理解できます。ただしトラックの荷台の上では車輪の分だけ「ロススペース」になってしまい、それだけ荷を積載できません。短距離輸送であまりトラック積載率を考慮しなくてもよい場合は台車タイプの容器もありだと思います。短距離輸送は積載率以上にトラック回転率が重要だからです。しかし長距離輸送の場合は望ましくありません。むしろ荷降ろし時に平台車に載せて運搬するといった工夫をした方がよいと思います。
 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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