経営者は積極的に現場へ

 今回は、経営者は積極的に現場へ、と言う論点で、現場診断での事例から解説します。
 

1. 現場診断事例

 私の現場診断での事例を紹介します。ある会社から依頼を受け、現場診断・指導を実施しました。事前に日時は打ち合わせてあり、最初の挨拶などの時は役員の方も同席しました。
 
 ところが、現場に入ると言う時になって、担当者に「あとはお願い」と言っていなくなってしまいました。本当は短時間でも現場診断に立ち会ってもらえると思っていたので、その時は少々気落ちしました。
 
 当日の予定が終了し、会議室でまとめをする頃、その役員の方が顔を出しました。そして「先生、工場はどうでしたか」と聞くので、不具合箇所を幾つか指摘しました。すると、その役員の方は、「そんなはずはない。うちはそんな指導はしていない。いつも厳しく言っている」と言って怒り出してしまいました。
 
 一緒に現場を見て貰えたら、このようにはなっていなかったと思います。担当者に、「今の話は本当か」と聞くのです。担当者の上司の、また上司と言うような関係ですから、激情している時に叱られたくないという雰囲気もあります。そこで、「それほどでもありませんが・・・」と言葉を濁してしまうのです。それを聞いた役員の方は、「そうだよな、いつも厳しく言っているから、工場は良いはずだ」と集まった社員の前で言ってしまうのです。
 
 このような例は一つではありません。何回か類似の経験をしました。この事例から感じることですが、厳しく言っている。日頃から指導しているというけれど、言っているだけではないかと感じます。実際の現場を見ていないのです。
 
 役員が朝礼などで全社員に話をしても、現場の人達は、あれはあれ、でも現場は、現実は違うんだと区別している場合があります。役員は言っただけでその通りになっていると思い込んでいるのです。こうなると、トップダウン、一方通行の話になってしまい、社員は話を聞いただけになります。言われたことしかやらない。ただ仕事をしていればいいという風潮になりがちです。
 
 こうなると次に訪問しても、不具合の改善は殆ど進んでいないとことが多いです。トップダウンだけでは会社は良くならないのです。社長、役員の方が経営側の言うとおりにしなさいでは、経営側と現場とが遊離するだけで会社の成長は難しいと思います。経営側が少ない場合は、少ない情報で偏った、個人的な判断になりがちです。
 
 
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2. 事実は現場に

 一方で、現場診断の時、社長、役員の方が一緒に現場を回ってくれる会社もあります。そういうところは、トップや管理職の方も日頃から良く工場を見ています。その上で指摘箇所があると、自分の見方とは違う。こんな見方があるのかなどと、現場の着眼点の幅、深さが広がります。その時から、また成長スピードが上がります。
 
 そして上層部と社員との距離も近くなります。情報が集まるアンテナも沢山立ちます。社員の声も聴く、つまり一方通行ではなくトップダウンとボトムアップがうまく行くのです。こういうところは、次に現場を見に行っても改善が進んでいます。
 
 これは別な解釈をすると、社員の経営への参加という部分もあると感じます。社員も成長するし、経営視点での着眼点も出て来ると思います。現場から、或いは現場で学ぶことが出来るのです。“事実は現場にあり”です。
 
 先日も、大手企業の品質問題について、社長の会見の言葉の中に、社員が勝手にやってしまったとありました。これを聞いて非常にがっかりしました。作業者の上にも監督者、管理職が幾層にもあるはずです。作業者の責任だけではないですね。
 
 納入先からの品質監査、或いは自社の社内品質監査などはどうなっているのか。それらの不具合が生かされているのかと思います。会社の上層部では、自分の思っているイメージとずれている。こんなはずではなかったということでしょう。
 
 また現場が良いことをやっていても、現場を見ていないので褒めることや評価もせず、経営側とずれるということも起きていると感じることがあります。ここのところの大企業の報道を見ていても、“品質管理は日本の最後の砦”これが崩れたと感じます。上層部と現場との遊離が進んでいるとつくづく感じます。
 
 近年、日本のものづくり企業での危機感、危機意識が薄れてきているように感じます。これは恐らく私だけではないでしょう。上層部の皆さん、現場に入りましょう。自分の目で、足で事実を確認し、現場の体質強化に繋げましょう。
  

この記事の著者

清水 英範

ゴミによる品質問題への対応(クリーン化活動)を中心に、安全、人財育成等も含め多面的、総合的なアドバイス。クリーンルームの有無に限らず現場中心に体質改善、強化のお手伝いをいたします。

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