荷主との長期取引を続けるためには

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1. コスト削減の必要性

 物流会社の立場から言えば、既存取引先との関係は当然長く続けたいですし、できれば仕事量を増やしていきたいと考えるのは、当然のことでしょう。取引先との関係は続くこともあれば当然のことながら他社へ切り替えられてしまうこともあります。その心配をされている会社はどのようにして取引を継続していったらよいのでしょうか。
 
 荷主側としてみると、同じサービス水準であれば価格が安いところに発注したくなるのは当然です。つまり、どの会社でもできる仕事であれば取引は「価格」で決まる、ということです。荷主は常にコストダウンを迫られています。そのために物流を含めあらゆる分野でコストを削減するためのネタ探しをしているのです。これは「当たり前の活動」ととらえるべきだと思います。特にグローバルで戦っている会社にとってコストは生命線になるからです。100円ショップで売られているものはほとんどが東南アジアで生産されています。なぜなら、これらの安価な商品を日本で作るとなるとほとんど利益を出すことができないからです。
 
 この事例に限らず、日本でなければ生産できないような品物は少なくなってきています。日本企業が日本のコスト高を嫌って海外に進出することは、止まることはないでしょう。世界一高いエネルギーコストで、世界でも最高水準の人件費を使って競争力ある価格でものを提供することは簡単ではありません。東南アジアの品質水準はかなり向上してきていますので、日本の優位性が揺らいでいることは事実だと思われます。
 
 このような環境下で、荷主が物流コスト削減を考えることは至極当然なことであると考えるべきなのです。物流費が上昇すると企業競争力に影響がありますので、更なる海外進出を加速する一因ともなると思われます。ということで、物流の提供側としてもコストダウンの努力は欠かせません。荷主に安価で品質の高い物流商品を提供できなければ取引が継続される保証はないと、認識しなければなりません。
 
 SCM
 

2. 物流改善提案

 荷主からのコスト削減要請に対応しなければならないことは間違いありません。それは、特別な競争力を持つ物流商品を提供できていないのであれば尚更です。荷主会社も物流だけではなくあらゆる発生コストを削減すべく必死になって活動をしています。このレベル以下の活動しかできていない物流会社では太刀打ちできません。どこの会社よりも間違いなくコスト削減の努力をしていると、言えるくらいでなければ物流会社間での競争に負けてしまうことでしょう。ということで、荷主の要求するコストを達成できる物流会社であれば既存荷主と取引を継続できる可能性がぐんと大きくなるでしょう。
 
 コストは大前提としても次に必要とされるのは「提案力」でしょう。この提案力を身に付けるためには既存顧客の物流をよく知ることと、改善スキルを磨く必要があります。まずは顧客の物流現場を穴のあくほど見て、どこにどのような問題があるのかを熟知しておくことが求められます。機会があるごとに積極的に荷主の物流現場に出かけます。そこで、実態をよく見るとともに、荷主の物流現場担当者と親しくなり、いろいろな情報を教えてもらえるようになることです。
 
 そして、このような過程を通して把握した問題点に対して改善提案を行います。これをいくつも行うことで荷主から信頼を獲得することができるでしょう。また、普段の取引の中における物流の実態についてのレポートを荷主に対して行うことをお勧めします。望ましいのは月次レポートです。このレポートを行っている会社は非常に少ないと思われます。それだけにこれを実施する会社は大変目立ち、荷主からも一目置かれることは確実でしょう。
 
 このように常に荷主に対して情報を発信し続けることが大切になります。言われたとおりに物流業務を淡々と行うだけでは魅力に欠けます。そのような仕事の仕方をしていれば、毎年契約更新にあたって入札あるいは再見積り(値下げ)となることは必至でしょう。
 

3. 真の3PL事業に取り組め

 3PL(third-party logistics)という言葉だけが先行している感がありますが、真の3PLはなかなか見つかりません。3PLとは顧客の物流を包括的に請け負い、そして顧客に物流改革を提案できる会社のことを指します。物流改革となると単なる物流改善提案とは次元が異なります。物流改善提案ができないと改革提案には至りません。しかしそれゆえに真の3PLであれば本当に価値があると言えるでしょう。さて既存荷主と長期取引を続けていくにあたって最終的な方策はこの真の3PLになることであると考えられます。
 
 最近は「物流」というよりも「サプライチェーン」全体を効率的なものにしていく必要があります。単なる物流改善だけではなく、調達の効率化、在庫改善、ものづくりの改善などなどサプライチェーンの効率化ということで荷主に貢献していくのです。顧客の物流のみならず、こういった観点でも支援していくことこそが長期...

1. コスト削減の必要性

 物流会社の立場から言えば、既存取引先との関係は当然長く続けたいですし、できれば仕事量を増やしていきたいと考えるのは、当然のことでしょう。取引先との関係は続くこともあれば当然のことながら他社へ切り替えられてしまうこともあります。その心配をされている会社はどのようにして取引を継続していったらよいのでしょうか。
 
 荷主側としてみると、同じサービス水準であれば価格が安いところに発注したくなるのは当然です。つまり、どの会社でもできる仕事であれば取引は「価格」で決まる、ということです。荷主は常にコストダウンを迫られています。そのために物流を含めあらゆる分野でコストを削減するためのネタ探しをしているのです。これは「当たり前の活動」ととらえるべきだと思います。特にグローバルで戦っている会社にとってコストは生命線になるからです。100円ショップで売られているものはほとんどが東南アジアで生産されています。なぜなら、これらの安価な商品を日本で作るとなるとほとんど利益を出すことができないからです。
 
 この事例に限らず、日本でなければ生産できないような品物は少なくなってきています。日本企業が日本のコスト高を嫌って海外に進出することは、止まることはないでしょう。世界一高いエネルギーコストで、世界でも最高水準の人件費を使って競争力ある価格でものを提供することは簡単ではありません。東南アジアの品質水準はかなり向上してきていますので、日本の優位性が揺らいでいることは事実だと思われます。
 
 このような環境下で、荷主が物流コスト削減を考えることは至極当然なことであると考えるべきなのです。物流費が上昇すると企業競争力に影響がありますので、更なる海外進出を加速する一因ともなると思われます。ということで、物流の提供側としてもコストダウンの努力は欠かせません。荷主に安価で品質の高い物流商品を提供できなければ取引が継続される保証はないと、認識しなければなりません。
 
 SCM
 

2. 物流改善提案

 荷主からのコスト削減要請に対応しなければならないことは間違いありません。それは、特別な競争力を持つ物流商品を提供できていないのであれば尚更です。荷主会社も物流だけではなくあらゆる発生コストを削減すべく必死になって活動をしています。このレベル以下の活動しかできていない物流会社では太刀打ちできません。どこの会社よりも間違いなくコスト削減の努力をしていると、言えるくらいでなければ物流会社間での競争に負けてしまうことでしょう。ということで、荷主の要求するコストを達成できる物流会社であれば既存荷主と取引を継続できる可能性がぐんと大きくなるでしょう。
 
 コストは大前提としても次に必要とされるのは「提案力」でしょう。この提案力を身に付けるためには既存顧客の物流をよく知ることと、改善スキルを磨く必要があります。まずは顧客の物流現場を穴のあくほど見て、どこにどのような問題があるのかを熟知しておくことが求められます。機会があるごとに積極的に荷主の物流現場に出かけます。そこで、実態をよく見るとともに、荷主の物流現場担当者と親しくなり、いろいろな情報を教えてもらえるようになることです。
 
 そして、このような過程を通して把握した問題点に対して改善提案を行います。これをいくつも行うことで荷主から信頼を獲得することができるでしょう。また、普段の取引の中における物流の実態についてのレポートを荷主に対して行うことをお勧めします。望ましいのは月次レポートです。このレポートを行っている会社は非常に少ないと思われます。それだけにこれを実施する会社は大変目立ち、荷主からも一目置かれることは確実でしょう。
 
 このように常に荷主に対して情報を発信し続けることが大切になります。言われたとおりに物流業務を淡々と行うだけでは魅力に欠けます。そのような仕事の仕方をしていれば、毎年契約更新にあたって入札あるいは再見積り(値下げ)となることは必至でしょう。
 

3. 真の3PL事業に取り組め

 3PL(third-party logistics)という言葉だけが先行している感がありますが、真の3PLはなかなか見つかりません。3PLとは顧客の物流を包括的に請け負い、そして顧客に物流改革を提案できる会社のことを指します。物流改革となると単なる物流改善提案とは次元が異なります。物流改善提案ができないと改革提案には至りません。しかしそれゆえに真の3PLであれば本当に価値があると言えるでしょう。さて既存荷主と長期取引を続けていくにあたって最終的な方策はこの真の3PLになることであると考えられます。
 
 最近は「物流」というよりも「サプライチェーン」全体を効率的なものにしていく必要があります。単なる物流改善だけではなく、調達の効率化、在庫改善、ものづくりの改善などなどサプライチェーンの効率化ということで荷主に貢献していくのです。顧客の物流のみならず、こういった観点でも支援していくことこそが長期取引の絶対的な要件となるのです。
 
 自分たちは物流会社であるから、「輸送」については貢献できるものの「在庫」は顧客がコントロールすることであって自分たちにはそれはできない、という認識であれば、今後長期取引は難しいと考えた方がいいでしょう。もう物流だけという頭は切り替えなければなりません。これが長期取引の秘訣です。
 
 いかがでしょうか。これは結構壮大なことかもしれません。しかし難しいからこそ他社ができない可能性が大きいのです。さらに踏む込むとすれば、荷主の物流部門を吸収してしまうことです。物流戦略を立案し、それを実行することで顧客の物流改革に寄与するのです。これを4PLと称します。日本ではまだなじみがありませんが、米国では実際に4PL事業が行われています。
 
 ここで一つ注意すべきことがあります。3PL、4PL業務は「物流会社でなくてもできる」ということです。実際に商社がこのビジネスを手掛けています。つまり物流会社は商社以上の努力が求められるということです。どこよりも勉強し、どこよりも熱心に顧客のことを考えることで顧客の信頼を得ていくのです。将来的に長期的取引を実現していくためにも、どこにも負けない努力が必要だということです。
  

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人...


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