製造業CS(顧客満足)向上のポイント -スターバックスに学ぶ-

 CS(顧客満足)の向上は「事前期待」を把握することから始まるというのが、サービスサイエンスの理論です。今回は、高いCSやリピーターを獲得するために、スターバックスの事例をお話します。製造業のCS(顧客満足)を考えるヒントとしてください。

 スターバックスのサービス説明は他の記事や関連書籍に譲らせて頂きたいのですが、スターバックスと言えば、質の高いサービスの代表例ではないかと思います。入店と同時に聞こえる印象の良い挨拶。注文の際の共感性のある親しみあるコミュニケーション。素早く正確なコーヒーの提供。混雑時などの状況に応じた柔軟な席案内。ゆっくり寛げる安心感ある空間と雰囲気。何度行っても満足して、また行きたくなるという方も多いのではないでしょうか。このような高いCSの評価を得てリピータを獲得することができるサービスは、どのように生み出されているのでしょうか?

 

1.マニュアルが無いスターバックス

 実は、スターバックスにはマニュアルがありません。その代わりにあるのが、「グリーンエプロンブック」と呼ばれる、サービスのビジョンを共有する為のものです。そこには次の5項目が挙げられています。

・歓迎する ・心を込めて ・豊富な知識を蓄える ・思いやりを持つ ・参加する

 実にシンプルな言葉で、スターバックスとしてのサービスのビジョンを共有していますね。更にはこのビジョンを実現するために柔軟な対応ができるよう、各店舗に多くの権限を預けています。

 「マニュアル」ではなく、「ビジョン共有と権限移譲」でサービス品質を高めている。これをサービスサイエンスの視点から見てみるとCS向上についての重要なヒントが浮かび上がります。先に結論を申し上げますと、(マニュアルが悪いというわけではなくて)「サービスコンセプトに合ったCS向上の努力の方向」というものがあるということです。

  

2.CS向上の努力方向

 先ず、CS向上の努力の方向については、大きく2つあります。それは「失点をなくす努力」と「得点を増やす努力」の2つです。

 「失点をなくす努力」とは、お客様を怒らせないことを重視したもので、マニュアルの活用やマナー教育がその代表例に当たります。この種の努力はこれまで多くの企業でも実施されてきたのではないでしょうか。しかし今の時代、この「失点をなくす努力」だけでは、高いCSを獲得してリピーターを獲得することが難しくなっています。そこで注目されているのが「得点を増やす努力」です。これは、お客様の期待に応えたり、思いもよらないサービスを提供して大満足や感動をして頂くものです。そしてこれを実現するために必要な施策のひとつが「ビジョン共有と権限移譲」による柔軟なサービスの提供です。これによって、CS向上のポイントである「個別的事前期待」「状況で変化する事前期待」「潜在的事前期待」に応えて高い評価を得ることが可能になるのです。

 ただし、「CS向上の努力方向」も、サービスのコンセプトに合った方向性でなければなりません。やみくもにマニュアルを廃止して、ビジョン共有と権限移譲をしたところで、成果に繋がるとは限らないのです。つまり、マニュアルが非常に有効なサービスもあれば、そうでないサービスもあるということです。大切なのは、自社のサービスがどういったサービスの種類・コンセプトなのかをしっかりと定義して、それに合った努力は何かをしっかりと考えるということです。

 

3.サービスの種類を定義する

 例えばサービスを2つの切り口で分類してみると、サービスの種類によって努力のポイントが違ってくることが分かると思います。今回のケースでは「手順型⇔気付き型」「ハイトレーニング⇔ロートレーニング」の2軸で分類してみました。

 「手順型×ロートレーニング」のサービスには、例えば配送サービス・清掃サービスが該当します。ここでの努力のポイントは、「マニュアル化、手順化、チェックリスト化」になります。

 「気付き型×ハイトレーニング」のサービスには、例えばコンシェルジュサービスやカウンセリングなどが該当します。この場合の努力のポイントは、「共感性、ビジョン共有、権限移譲」となります。

 ここで言いたいのは(どちらが優れているかということではなくて)、「手順型×ロートレーニング」サービスでの努力のポイントを、「気付き型×ハイトレーニング」サービスに適用しても、効果的なCS向上施策にはなりにくいということです。その逆も然りです。

 このようにCS向上の努力のポイントを考えることは、自社のサービスの種類・コンセプトと、そこで実行すべき努力を考えることなのです。それを考えるためのヒントとして、「CS向上の方向には2つある」ということと、「サービスを2軸で分類してみる」ということをご紹介しました。

 ちなみにこういった視点で見てみると、スターバックスは「コーヒー提供サービス」ではなくて「コンシェルジュサービス」と言えそうです。だからこそ、「マニュアル」ではなく、「ビジョン共有と権限移譲」によるサービス品質向上に価値があるのです。スターバックスの他店にはない魅力が、少し論理的に理解できたような気がします。


この記事の著者

松井 拓己

数少ないサービスサイエンスの専門家として、業界を問わずいろんな企業・団体の方々に面白がっていただいております。

<サービスサイエンスとは>  いまや日本のGDPの約75%はサービス業が生み出しており、残る15%を占める製造業や農業においても顧客ニーズの中心がサービスに移行しており、サービスは競争優位そのものになっています。  そこで、一流の…

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