製造業のサービス力を強化する3つのポイント

 製造業においてもサービスは競争優位そのものになってきているという事実は。これまでの記事でご理解頂けたものと思います。今回はもう少し具体的に、サービス強化チェックの視点を3つご紹介したいと思います。

 

1.世の中にあるサービスをシンプルに整理する

 サービスサイエンスでは先ず、世の中にあるサービスを整理して全体像を明らかにする検討を行いました。具体的には、経済産業省の外郭団体のホームページにある日本のサービス業種一覧に掲載されている約450種類のサービス業を、基本サービスメニューで分類してみた結果、世の中にあるサービス業は、たった21種類になりました。これによって、世の中の優れたサービスの構成要素を整理してポイントを理解することができるようになってきました。そして、この基本サービスメニュー21分類をさらに3つにまで集約してみました。

 

2.基本サービスメニューの3つの分類

集約された3つの基本サービスメニューは以下の通りです。

(1)モノ提供サービス

 モノを提供する事に価値の源泉があるサービス業で、先ほどの21種類の基本サービスメニューの中では「作ったモノを提供する」「食事や飲み物を提供する」「モノを貸し出す」など、5種類が該当します。

(2)情報提供サービス

 情報提供が中心のサービス業で、「価値ある情報を提供する」「いろいろなことを相談する」「代わりに設計する」など、5種類の基本サービスメニューが分類されています。

(3)快適提供サービス

 ここには「所有物を修理する」「移動を支援する」「娯楽を提供する」「能力向上を支援する」など11種類の基本サービスメニューが該当し、中分類として「安心提供」「楽(らく・たのしさ)提供」「自己実現」の3つに分類されて所属しています。

 

3.基本サービスメニューから見えるサービス強化のヒント

 以上の3分類から、改めてサービス要素を見直してみましょう。ここでは、製造業での活用もイメージしやすいように「農業」を例に考えてみたいと思います。

 まず、一般的な農家は作った野菜を農協に納めて収入を得ています。これは、先程の基本サービスメニュー3分類で言うところの、野菜という「モノ提供サービス」と考えることができます。

 続いて、都会近郊の農家では、例えば秋口に旅行会社とタイアップして芋掘りツアーを企画したりします。これは、芋という「モノ提供サービス」に、芋堀りという「快適提供サービス(楽しさ提供)」という要素が加わったサービスです。

 そして最近流行の、無農薬有機野菜が季節ごとに産地から直接自宅に段ボールで送られてくる季節の野菜便は、野菜という「モノ提供サービス」に、無農薬からくる安心・安全や有機野菜のおいしさ、楽しみに待つワクワク感といった「快適提供サービス」の要素が加わっています。さらに届いた段ボールを開けてみると、農家の方の顔写真付きのお手紙や、初めて見るような野菜を美味しく食べるためのレシピなどが入っていて、「情報提供サービス」の要素も含まれていることが分かります。

 このように、季節の野菜便は「モノ提供サービス」「情報提供サービス」「快適提供サービス」の3つの要素をバランスよく取り入れることで、付加価値の高いサービスを提供しているのです。あるデータでは、大根1本当たりの農家の収入が、野菜を農協に納める場合と季節の野菜便とで約10倍異なるとも言われています。

 今回の例は農業でしたが、例えば製造業でこの3つの要素をバランスよく取り入れているサービスは、スマートフォンや自動車など、元気の良い業界が多いことが分かります。

 このように、基本サービスメニューの3分類「モノ提供サービス」「情報提供サービス」「快適提供サービス」の視点で自社サービスを見直してみて、取り組んでいない部分やバランスの悪い部分が見つかれば、そこにサービス強化のヒントが見つかるでしょう。

 以前の記事で触れた内容では、例えばタニタ食堂やルクエカフェ、KID-O-KIDなど、店舗に製品を並べるだけでなく、製品を実際に使って楽しめるサービスを提供する事で製品の魅力を伝える工夫をしているケースがあります。これは、「モノ提供サービス」に「快適提供サービス(楽しさ提供)」を加えたサービス強化と見ることができます。

 また最近進んでいるレンタル事業化は、製品という「モノ提供サービス」よりも「快適提供サービス」の方に価値の源泉をシフトするサービス強化と捉えることができます。もちろんこのときレンタルサービスを活用したライフスタイル情報の発信など「情報提供サービス」も極めて有効です。

 

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4.サービス強化のヒントが見つかったら

 今回は簡単にサービス強化のヒントを見つけるためのポイントとして、基本サービスメニューの3分類をご紹介しました。

 ここでヒントが見つかったら、次は本格的に腰を据えてサービス強化の検討を進めなければなりませんが、その際まずはお客様の事前期待を把握することが必要です。 これまで触れてきたとおり、「サービスはお客様と一緒になって作るもの」「お客様の事前期待に適合したものをサービスという(事前期待に適合していないものは、余計なお世話などと言われてしまう)」というポイントが極めて重要です。勝手にサービスを作ってお客様にぶつけても、全く評価されないということがよくあります。サービス強化を進める場合には、やはり「事前期待重視」の視点で取り組みましょう。


この記事の著者

松井 拓己

数少ないサービスサイエンスの専門家として、業界を問わずいろんな企業・団体の方々に面白がっていただいております。

<サービスサイエンスとは>  いまや日本のGDPの約75%はサービス業が生み出しており、残る15%を占める製造業や農業においても顧客ニーズの中心がサービスに移行しており、サービスは競争優位そのものになっています。  そこで、一流の…

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