イプシロンロケットとMTシステム

1.イプシロンロケット打上げ成功とMTシステム

イプシロンロケット
 先月9月14日午後2時に、JAXAのイプシロンロケットが無事打上げに成功しました。成否を左右する「ロケットの診断」にMTシステムが使われていることは、別の投稿でも記載しました。 JAXAが、さまざまある人工知能技術の中からMTシステムを選んだ理由はいくつかあるでしょう。使い易さ、処理速度のほかに、何と言っても診断精度の良さがあります。

 

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2.初回打ち上げ中止時の計算速度推定

 当初8月22日に予定されていた打ち上げを中止した際のイプシロンロケットの異常検知理由は、0.07秒のデータ転送時間のズレだったようです。  この時の異常検知は人工知能とは無関係と発表されていますが、0.07秒の間に人工知能(MT法)は何回計算できるか...参考までに当社のソフトで確認してみました。前提がいくつかありますが、M距離の計算だけなら約50回です。 この回数はPCの能力を含めた諸条件に依存しますので、あくまでも参考値です。

 前提: イプシロンでは18,000項目を診断します(JAXA資料より)。MTが扱うのは、他の設備監視実績から、全体の10%=1,800項目と仮定しました。

 

3.「入門MTシステム」とイプシロンロケット

 イプシロンロケットは、人工知能にMTシステムを使用していますが、「入門MTシステム」(日科技連出版社)に、よく当てはまる記述があります。本をお持ちの方はご参照ください。なお、文章を簡略にするため、表現を一部変えています。

・計測データは機械が発する声(p.104)  ...設備管理の熟練者は機械の調子をいち早く検知する。赤ん坊を見る母親と同様。しかし、熟練者に多くを依存する時代は過ぎ去ろうとしている →→→ JAXA森田教授は「古いやり方から脱皮しよう」と述べています。

・自動化は熟練者の重要性を増す(p.182)  ...自動化では熟練者が準備したデータが教師となる。高度な自動化では、熟練者の重要性は増す。自動化された機械は、調教されたライオンである。優秀な調教師は残っていなければならない →→→ 一見矛盾に感じますが、「優秀な調教師である熟練技術者は、自動化の前提」ということです。ただ、機械に置き換えられた分、調教師の数は大きく省力化ができます。イプシロンの低コスト化は、そのシナリオです。

 

4.イプシロンでMTはどんな役割を果たしたか

 月刊誌ニュートンなどで、森田泰弘プロジェクトリーダーは人工知能(MT法)の役割について、次のように語っています。

 「エンジニアから経験を抽出し、人工知能に教え込む。バルブの開閉などではモータに電気を流すが、電流の波形を形作るいくつかの特徴どうしの関係を見て、総合的に正常かどうかを判断する。医療の分野で言うと、心電図の診断を医者に代わって機械が行なっていることに相当する。 波形の特徴を個々に見るだけではなく、「正常な場合にみられるはずの、波形を形作る特徴どうしの関係性」を人工知能に教えておき、人工知能は個々のデータのよしあしではなく、いわば複数のデータどうしの関係性をみる。」

 MT法の「正常な状態だけを学習する」という性質をうまく使って、ロケットの健康診断を実施しているようです。

 今後、低価格で信頼性の高いロケット打ち上げのための中心技術となってゆくと思います。

 

 


この記事の著者

手島 昌一

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画像検査、音響などの波形検査は、人間(検査員)への依存度が高く、コスト低減のボトルネックの一つです。MTシステムというパターン認識理論を使うと、処理できる場合がほとんどです。世界中の企業が注目しており、また「付加価値」の必要性を感じる国内…

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