物流業界と5S活動

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5S 

1. 5S:倉庫の状況が瞬時に判断される

 物流業界で今一つ浸透しきれていないのが5S活動です。製造業では5Sがすべての基本となっている感がありますが、物流業ではなぜ進まないのでしょうか。物流業では荷主の荷物を預かり、指示のもと出庫を行い指定場所まで届けることになります。荷主会社はあまり委託先である倉庫を訪問することがないのかもしれませんが、もし訪問する機会があったとしたら今の倉庫の5S状況で満足できるかどうか確認してみるとよいでしょう。自社製品の上に埃が積もっていたらどう感じるでしょうか。自社製品を手荒に扱われていたとしたらどのように思うでしょうか。
 
 この顧客の視点が結構重要なポイントになりそうです。先日もある倉庫を訪問した際に、荷主の訪問があるかどうか尋ねてみたところ、年間を通してほとんどないことがわかりました。一つには見られていないからあえて工数をかけてまで5S活動をやる必要はないと思っているセンター長がいるかもしれません。もう一つの可能性として、5S活動自体を知らないまたは理解していないことが挙げられます。実際に5Sという言葉を知らない物流マンがいることも事実です。
 
 今更ながら5Sの重要性について話をするまでもないかもしれませんが、上記のような状況も鑑み改めて5Sについて考えてみようと思います。5Sは「整理・整頓・清潔・清掃・しつけ」の頭文字をとったものです。この内「整理と整頓」を最初に取り組むべきということで2Sと呼びます。「整理」とは要るものと要らないものを分け、要らないものを捨てることを言います。「整頓」とは要るものをわかりやすく並べることを言います。いつも申し上げていることですが、物流倉庫では「第三者が一目で見て、正常か異常かの判断ができる」状態にあることが望まれます。つまり初めて訪れた荷主が倉庫の状況を瞬時に判断できることが望ましい状態だと言えるのです。これは難しいように聞こえますが、5Sの基本を守って取り組みを行うことで最終的にこのハードルを飛び越えることができるのです。
 

2. 5S:最初の合意 

 5S活動を効果的にするために最初に合意しておくことが必要なことはなんでしょうか。それは「決められたことをきちんと守る」ということです。当たり前のようなことですがこれが結構難しいようです。過去に5S活動に取り組んだけれどしばらく経つと元に戻ってしまった、という話がよくあります。せっかく時間を投資して活動をしたのに元に戻ってしまうのでは非常にもったいないことです。このケースでは真の5S活動はできていなかったことになります。元に戻ってしまったということは、「しつけ」の部分がしっかりとしていなかったということになるのです。この「しつけ」についても当たり前だから、ということで手を付けない会社があります。会社としてモラルが完璧であればあえて「しつけ」などということもないのかもしれません。しかし大半の会社では当たり前のことができていないのです。特に「しつけ」の部分を軽視しがちなのが日本企業です。それは性善説に立っているかと言えるかもしれません。
 
 海外では性悪説を前提にしていることの方が多いかもしれません。だからこそ5S活動の効果は大きく、いったん決められたことをはきちんと守ろうという意識が働くのでしょう。いかなる理由があってもこの合意事項は厳守されなければなりません。これを大前提に5S活動をスタートしましょう。多くの物流現場で残念ながら機能していないことがあります。それが物流の命ともいえる「在庫管理の4原則」です。
 
(1) 在庫の所在がすぐわかる
(2) 在庫の数がすぐわかる
(3) 先入先出ができる
(4) アクションの緊急度がわかる
 
 この4項目ができていない物流現場が多いことは事実です。まずここから始めなければなりません。実際に在庫の所在がわからずに探し回るムダや、数量をきちんと把握できていなかったために余分なものを発注してしまったというムダも発生しているのです。在庫を置く場所を定め、先入先出ができるレイアウトとし、最大数量と最小数量・発注や生産指示などのアクションの基準を記した表示を付けるようにしましょう。
 

3. 5S:活動の前提とは

 在庫管理の4原則は物流のプロとしてはどうしても守らなければならない原則であり、5Sの観点からも非常に重要なことだと言えるでしょう。これを確立するのは当然として、それ以外にもきちんと整備しておくべきことがあります。たとえば在庫以外のものを置く場所についてです。フォークリフトを駐車しておく場所、容器を保管する場所、トラックの駐車位置など、しっかりと区画を実施し、白線でその場所を囲みます。この場所の明確化は「清掃用具」や「消火器」などといった物流作業とは直接関係のないものも行っていきましょう。また倉庫内の保管場所や梱包スペースなどと通路は明確に分けておく必要があります。物流スペースと通路スペースは床の色を変えるのも一つの方法です。通路はフォークリフトが走る部分と...
5S 

1. 5S:倉庫の状況が瞬時に判断される

 物流業界で今一つ浸透しきれていないのが5S活動です。製造業では5Sがすべての基本となっている感がありますが、物流業ではなぜ進まないのでしょうか。物流業では荷主の荷物を預かり、指示のもと出庫を行い指定場所まで届けることになります。荷主会社はあまり委託先である倉庫を訪問することがないのかもしれませんが、もし訪問する機会があったとしたら今の倉庫の5S状況で満足できるかどうか確認してみるとよいでしょう。自社製品の上に埃が積もっていたらどう感じるでしょうか。自社製品を手荒に扱われていたとしたらどのように思うでしょうか。
 
 この顧客の視点が結構重要なポイントになりそうです。先日もある倉庫を訪問した際に、荷主の訪問があるかどうか尋ねてみたところ、年間を通してほとんどないことがわかりました。一つには見られていないからあえて工数をかけてまで5S活動をやる必要はないと思っているセンター長がいるかもしれません。もう一つの可能性として、5S活動自体を知らないまたは理解していないことが挙げられます。実際に5Sという言葉を知らない物流マンがいることも事実です。
 
 今更ながら5Sの重要性について話をするまでもないかもしれませんが、上記のような状況も鑑み改めて5Sについて考えてみようと思います。5Sは「整理・整頓・清潔・清掃・しつけ」の頭文字をとったものです。この内「整理と整頓」を最初に取り組むべきということで2Sと呼びます。「整理」とは要るものと要らないものを分け、要らないものを捨てることを言います。「整頓」とは要るものをわかりやすく並べることを言います。いつも申し上げていることですが、物流倉庫では「第三者が一目で見て、正常か異常かの判断ができる」状態にあることが望まれます。つまり初めて訪れた荷主が倉庫の状況を瞬時に判断できることが望ましい状態だと言えるのです。これは難しいように聞こえますが、5Sの基本を守って取り組みを行うことで最終的にこのハードルを飛び越えることができるのです。
 

2. 5S:最初の合意 

 5S活動を効果的にするために最初に合意しておくことが必要なことはなんでしょうか。それは「決められたことをきちんと守る」ということです。当たり前のようなことですがこれが結構難しいようです。過去に5S活動に取り組んだけれどしばらく経つと元に戻ってしまった、という話がよくあります。せっかく時間を投資して活動をしたのに元に戻ってしまうのでは非常にもったいないことです。このケースでは真の5S活動はできていなかったことになります。元に戻ってしまったということは、「しつけ」の部分がしっかりとしていなかったということになるのです。この「しつけ」についても当たり前だから、ということで手を付けない会社があります。会社としてモラルが完璧であればあえて「しつけ」などということもないのかもしれません。しかし大半の会社では当たり前のことができていないのです。特に「しつけ」の部分を軽視しがちなのが日本企業です。それは性善説に立っているかと言えるかもしれません。
 
 海外では性悪説を前提にしていることの方が多いかもしれません。だからこそ5S活動の効果は大きく、いったん決められたことをはきちんと守ろうという意識が働くのでしょう。いかなる理由があってもこの合意事項は厳守されなければなりません。これを大前提に5S活動をスタートしましょう。多くの物流現場で残念ながら機能していないことがあります。それが物流の命ともいえる「在庫管理の4原則」です。
 
(1) 在庫の所在がすぐわかる
(2) 在庫の数がすぐわかる
(3) 先入先出ができる
(4) アクションの緊急度がわかる
 
 この4項目ができていない物流現場が多いことは事実です。まずここから始めなければなりません。実際に在庫の所在がわからずに探し回るムダや、数量をきちんと把握できていなかったために余分なものを発注してしまったというムダも発生しているのです。在庫を置く場所を定め、先入先出ができるレイアウトとし、最大数量と最小数量・発注や生産指示などのアクションの基準を記した表示を付けるようにしましょう。
 

3. 5S:活動の前提とは

 在庫管理の4原則は物流のプロとしてはどうしても守らなければならない原則であり、5Sの観点からも非常に重要なことだと言えるでしょう。これを確立するのは当然として、それ以外にもきちんと整備しておくべきことがあります。たとえば在庫以外のものを置く場所についてです。フォークリフトを駐車しておく場所、容器を保管する場所、トラックの駐車位置など、しっかりと区画を実施し、白線でその場所を囲みます。この場所の明確化は「清掃用具」や「消火器」などといった物流作業とは直接関係のないものも行っていきましょう。また倉庫内の保管場所や梱包スペースなどと通路は明確に分けておく必要があります。物流スペースと通路スペースは床の色を変えるのも一つの方法です。通路はフォークリフトが走る部分と人が通行する部分を分けることも安全上望ましいことでしょう。
 
 表示類も誰が見てもわかるように付けていきます。「フォークリフトの速度」や「一時停止表示」、「安全標語」や「企業理念」などもわかりやすく表示していきましょう。また日常清掃もきちんと実施しましょう。汚れのない職場では異常が発見しやすくなります。ピカピカの通路にフォークリフトのタイヤ跡があれば、何か無理な操作を行った証拠になります。フォークリフトも傷や汚れがあればそこに異常があることを示していることになります。これが汚れたままの物流エリアでは何が何だか判断がつきませんよね。すべてを一気に行うことが難しければ、月間目標を決めてそれを徹底的に実行することも一つの方法です。たとえば今月はフォークリフトのタイヤ跡をゼロにする、トラックだけはピカピカにするなどといった目標を定めます。そしてそれを全員で達成できるように活動するのです。
 
 物流現場では5Sに始まり5Sに終わると言っても過言ではありません。あまりに基本すぎることなので見過ごされがちですが、これを貫徹できている会社は多くありません。自社にも必ず改善すべき点があるはずという前提に立って5S活動に取り組まれることをお勧めします。
  

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人...


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