工場物流の誤解とは (その3)

投稿日

SCM
 前回のその2に続いて解説します。
 

5. 情報を運ぶ

 構内物流が生産コントロールを行うには適切なタイミングで部品などを届けるということをお話させていただきました。実はこれ以外にあと2つ容易なやり方があります。その1つは完成品を入れる容器を生産計画数分だけ届けるということです。たとえば生産計画が100台だとしましょう。この時に完成品が20個入る容器はいくつ届ければよいでしょうか。
 
 これは簡単ですね。100÷20で5台だけ届ければよいことになります。部品が200台分供給されていたとしても、完成品用容器が100台分しかないわけですから、生産工程は100台を超えて生産することができません。もう1つの方法は「完成品」を必要な数しか引き取らないというやり方です。生産工程は部品と工数があれば生産計画以上に生産することが可能です。明日のために多少先行しておきたい、明日以降何が起きるかわからないので貯金をつくっておきたいと考えることはあり得ます。
 
 仮に生産計画以上の生産ができたとしても、物流が完成品を引き取ってくれなければラインエンドが完成品であふれて置ききれなくなります。結果として生産を止めざるを得ない状況になるのです。ここで生産コントロールが効いたということになるでしょう。前回ご紹介した生産計画に見合った数量の部品だけ届けることを「入口統制」と呼びます。入口とは生産工程の入口のことを指します。一方で完成品の引き取りで生産コントロールを行うことを「出口統制」と呼びます。もちろん出口は生産工程の出口のことです。
 
 このいずれかを行うことで構内物流は、見事に生産コントロールをやってのけることになります。いかがでしょうか。受け身の物流とは全く異なることにお気づきかと思います。さらに構内物流は工場の中を動き回って仕事をするという特殊な立場にあります。この立場を利用して「情報を運ぶ」ことも行うべきなのです。
 
 つまりどこかの工程でトラブルが発生していることを発見したら、その情報を必要な部署に運ぶのです。この行為を通して、工場のさらなるトラブル拡大、たとえば得意先への未納や大幅な生産遅れなどを防止することができるのです。この「生産コントロール」こそが構内物流のメイン業務だと言っても過言ではないでしょう。
 

6. フールプルーフを導入する

 今までご説明してきた構内物流が生産コントロールを行うには、標準化のPDCAを実行していただき、場合によってはマンネリ化解消策を行っていただきたいと思います。ここまでは「お金をかけない改善」です。もちろん改善は原則お金をかけないことが基本です。お金をかけずに知恵を出して実行していくのが改善だからです。しかし、もし、ゆとりがあるのであれば「フールプルーフ」を導入することも考えてもよいかもしれません。フールプルーフとは知らない人が作業を行っても間違いが起きないような仕掛けのことです。
 
 たとえば電子レンジは扉が閉まっていないと加熱できないようになっています。これは思いがけない事故を防止するための仕掛けです。自動車のエンジンはミッションレバーがパーキングかニュートラルに入っていなければ始動できません。この趣旨は電子レンジと同様です。物流工程では作業者が間違いを起こさないようなポカヨケがいくつかあります。たとえばデジタルピッキング装置。作業者はランプが点灯した間口から表示された数量だけ取り出すことでピッキングミスを防止しようというものです。
 
 この逆がデジタルアソートシステムで、ランプのついた間口に表示された数量だけ投入します。これと類似したしくみがシャッター式ピッキング装...
SCM
 前回のその2に続いて解説します。
 

5. 情報を運ぶ

 構内物流が生産コントロールを行うには適切なタイミングで部品などを届けるということをお話させていただきました。実はこれ以外にあと2つ容易なやり方があります。その1つは完成品を入れる容器を生産計画数分だけ届けるということです。たとえば生産計画が100台だとしましょう。この時に完成品が20個入る容器はいくつ届ければよいでしょうか。
 
 これは簡単ですね。100÷20で5台だけ届ければよいことになります。部品が200台分供給されていたとしても、完成品用容器が100台分しかないわけですから、生産工程は100台を超えて生産することができません。もう1つの方法は「完成品」を必要な数しか引き取らないというやり方です。生産工程は部品と工数があれば生産計画以上に生産することが可能です。明日のために多少先行しておきたい、明日以降何が起きるかわからないので貯金をつくっておきたいと考えることはあり得ます。
 
 仮に生産計画以上の生産ができたとしても、物流が完成品を引き取ってくれなければラインエンドが完成品であふれて置ききれなくなります。結果として生産を止めざるを得ない状況になるのです。ここで生産コントロールが効いたということになるでしょう。前回ご紹介した生産計画に見合った数量の部品だけ届けることを「入口統制」と呼びます。入口とは生産工程の入口のことを指します。一方で完成品の引き取りで生産コントロールを行うことを「出口統制」と呼びます。もちろん出口は生産工程の出口のことです。
 
 このいずれかを行うことで構内物流は、見事に生産コントロールをやってのけることになります。いかがでしょうか。受け身の物流とは全く異なることにお気づきかと思います。さらに構内物流は工場の中を動き回って仕事をするという特殊な立場にあります。この立場を利用して「情報を運ぶ」ことも行うべきなのです。
 
 つまりどこかの工程でトラブルが発生していることを発見したら、その情報を必要な部署に運ぶのです。この行為を通して、工場のさらなるトラブル拡大、たとえば得意先への未納や大幅な生産遅れなどを防止することができるのです。この「生産コントロール」こそが構内物流のメイン業務だと言っても過言ではないでしょう。
 

6. フールプルーフを導入する

 今までご説明してきた構内物流が生産コントロールを行うには、標準化のPDCAを実行していただき、場合によってはマンネリ化解消策を行っていただきたいと思います。ここまでは「お金をかけない改善」です。もちろん改善は原則お金をかけないことが基本です。お金をかけずに知恵を出して実行していくのが改善だからです。しかし、もし、ゆとりがあるのであれば「フールプルーフ」を導入することも考えてもよいかもしれません。フールプルーフとは知らない人が作業を行っても間違いが起きないような仕掛けのことです。
 
 たとえば電子レンジは扉が閉まっていないと加熱できないようになっています。これは思いがけない事故を防止するための仕掛けです。自動車のエンジンはミッションレバーがパーキングかニュートラルに入っていなければ始動できません。この趣旨は電子レンジと同様です。物流工程では作業者が間違いを起こさないようなポカヨケがいくつかあります。たとえばデジタルピッキング装置。作業者はランプが点灯した間口から表示された数量だけ取り出すことでピッキングミスを防止しようというものです。
 
 この逆がデジタルアソートシステムで、ランプのついた間口に表示された数量だけ投入します。これと類似したしくみがシャッター式ピッキング装置です。ピッキング棚の各間口にシャッター(蓋)がついており、オーダーに基づき該当間口のシャッターが開きます。これは他の間口からピッキングすることを防ぐためのサポートツールです。デジタルピッキング装置よりもサポート性は高いと思われます。デジタルピッキングではランプが点灯した間口からでなくても製品を取り出せますが、シャッター式ではそれができません。
 
 最近は間口にスクリーンが付いていて、オーダーに基づき該当間口にオーダーが表示されるしくみもあります。システムは徐々に進化してきています。自社にふさわしいポカヨケを導入することをお勧めします。ただしこれらのしくみは万能ではないことは認識しておくべきです。ポカヨケを導入しても標準作業を守らないことでエラーは発生するからです。もちろんこれらのしくみは投資が必要ですから「対投資効果」をきっちりと見極めてから実施しましょう
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人...


「サプライチェーンマネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
生産材メーカーサプライチェーンの機会と脅威

 サプライチェーン上のポジショニングで見ることにより、金型・工具・工作機械など生産財メーカーの製品は、どのようにビジネスの機会が広がるでしょう?   生...

 サプライチェーン上のポジショニングで見ることにより、金型・工具・工作機械など生産財メーカーの製品は、どのようにビジネスの機会が広がるでしょう?   生...


サプライチェーンの戦略的経営モデル -人間系と情報技術(ICT)の融合-

 生産財メーカーの今後の経営モデルをサプライチェーンの原理原則からみると、熟練をベースとした人間系と情報技術(ICT)の融合といえます。「BTB(ビジネス...

 生産財メーカーの今後の経営モデルをサプライチェーンの原理原則からみると、熟練をベースとした人間系と情報技術(ICT)の融合といえます。「BTB(ビジネス...


SCMの定義と長期的価値

1.サプライチェーンの需要と供給はコインの表裏  生産も販売も、顧客から見ると供給業務の連鎖です。また生産から見ると販売は需要であり、販売からみれば生産...

1.サプライチェーンの需要と供給はコインの表裏  生産も販売も、顧客から見ると供給業務の連鎖です。また生産から見ると販売は需要であり、販売からみれば生産...


「サプライチェーンマネジメント」の活用事例

もっと見る
後工程はお客様 物流最高品質を生み出すものとは(その3)

       物流品質で高い水準を示す相手は顧客ばかりとは限りません。自社内であっても高品質で喜ばれることは大変重要なことだと言えます。工場内物流で...

       物流品質で高い水準を示す相手は顧客ばかりとは限りません。自社内であっても高品質で喜ばれることは大変重要なことだと言えます。工場内物流で...


物流のワンストップサービス サプライチェーンで効率化(その1)

◆ 一括物流とは  昔は魚を買いに魚屋さんへ、野菜が欲しければ八百屋さんへ、お酒は酒屋さんへと出掛けて行きました。商店街に行くとそういったいわゆる「...

◆ 一括物流とは  昔は魚を買いに魚屋さんへ、野菜が欲しければ八百屋さんへ、お酒は酒屋さんへと出掛けて行きました。商店街に行くとそういったいわゆる「...


本気で会社が変わろうという意識 物流改善技術とともに大切なこと(その1)

  ◆ 改善戻りに対する歯止めとは  いろいろな会社で物流改善のお手伝いをさせていただく過程で非常に重要だと感じることがあります。それが...

  ◆ 改善戻りに対する歯止めとは  いろいろな会社で物流改善のお手伝いをさせていただく過程で非常に重要だと感じることがあります。それが...