スループット改善で収益力を高める

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 info342コスト改善の効果的アプローチとしてサービス提供のスループット向上があります。スループットとは単位時間あたりの処理量や出来高を意味します。
 
 例えば2種類の製品AとBがあり、それぞれの粗利益が60%と40%であればどちらを優先して生産した方がより儲かるでしょうか、固定費の違いが無いと仮定して単純に考えると製品Aと答えたいところですが、それはスループットが同じである場合となります。つまり時間当たりの生産量が同じであれば製品Aとなります。しかし製品BのスループットがAの2倍であればどうでしょうか、 数値を用いて考えてみましょう。
 
      •【単価】       A:1000円   B:1000円
 
      •【粗利益】      A:60%    B:40%
 
      •【スループット】   A:10個/時  B:20個/時
 
      •【一日の稼働時間】    A:10時間   B:10時間
 
◆ 製品AとBを30日間フル生産した場合の粗利益を計算してみます。
 
   製品A:1000円×0.6×10個/時×10時間×30日=\1,800,00
 
   製品B:1000円×0.4×20個/時×10時間×30日=\2,400,00
 
 製品Bの方が高くなりました。フルにオーダーが入ることが前提となりますが、単純に利幅だけで考えると判断を誤ることになります。分かりやすくする為に粗利益で比較しましたが、最終的な企業の儲けとして考える場合は販管費なども関わってきますので営業利益での比較をお薦めします。
 
 さてスループット改善は生産現場にだけ言えることではありません。
 注文を受けてから商品を仕入れ販売する場合もリードタイムが長ければ利幅が多少大きくても即納できる商品による利益が高くなります。
 
 装置の組立や保守点検作業など人によるサービスも同じ事が言えます。 4時間で終わる作業と6時間で終わる作業があれば利幅が同じなら前者の方が回転が効くので儲けが高くなります。
 
 この様にコスト改善を考える時に単に原価を抑える方向だけで考えるのでは無く、処理時間を短縮し回転率を上げるアプローチも有効なのです。スループット改善は単に提供するサービスの総量、即ちキャパシティが増大するだけでなく、在庫の縮小や人件費の削減、生産計画の容易さなど様々な副産物も生じます。
 
  一方でスループットを改善する事でコストが増える場合もあります。 例えば運輸業者を変えたので配送時...
 info342コスト改善の効果的アプローチとしてサービス提供のスループット向上があります。スループットとは単位時間あたりの処理量や出来高を意味します。
 
 例えば2種類の製品AとBがあり、それぞれの粗利益が60%と40%であればどちらを優先して生産した方がより儲かるでしょうか、固定費の違いが無いと仮定して単純に考えると製品Aと答えたいところですが、それはスループットが同じである場合となります。つまり時間当たりの生産量が同じであれば製品Aとなります。しかし製品BのスループットがAの2倍であればどうでしょうか、 数値を用いて考えてみましょう。
 
      •【単価】       A:1000円   B:1000円
 
      •【粗利益】      A:60%    B:40%
 
      •【スループット】   A:10個/時  B:20個/時
 
      •【一日の稼働時間】    A:10時間   B:10時間
 
◆ 製品AとBを30日間フル生産した場合の粗利益を計算してみます。
 
   製品A:1000円×0.6×10個/時×10時間×30日=\1,800,00
 
   製品B:1000円×0.4×20個/時×10時間×30日=\2,400,00
 
 製品Bの方が高くなりました。フルにオーダーが入ることが前提となりますが、単純に利幅だけで考えると判断を誤ることになります。分かりやすくする為に粗利益で比較しましたが、最終的な企業の儲けとして考える場合は販管費なども関わってきますので営業利益での比較をお薦めします。
 
 さてスループット改善は生産現場にだけ言えることではありません。
 注文を受けてから商品を仕入れ販売する場合もリードタイムが長ければ利幅が多少大きくても即納できる商品による利益が高くなります。
 
 装置の組立や保守点検作業など人によるサービスも同じ事が言えます。 4時間で終わる作業と6時間で終わる作業があれば利幅が同じなら前者の方が回転が効くので儲けが高くなります。
 
 この様にコスト改善を考える時に単に原価を抑える方向だけで考えるのでは無く、処理時間を短縮し回転率を上げるアプローチも有効なのです。スループット改善は単に提供するサービスの総量、即ちキャパシティが増大するだけでなく、在庫の縮小や人件費の削減、生産計画の容易さなど様々な副産物も生じます。
 
  一方でスループットを改善する事でコストが増える場合もあります。 例えば運輸業者を変えたので配送時間が4割減少した代わりに配送コストが2割上がった様なケースです。コスト増に見合う効果があるか事前に検討しておく必要があります。スループット改善に限らずコスト改善対策は多角的視野からアイデアを考え、効果を見込んでおくことが重要です。
 
 コスト改善はかけるコストに対するリターンが高くなる、即ち高効率となるよう工夫する事であり、決して削減ありきで取り組むアクションアイテムばかりではありません。現在あるリソースを用いて如何に効率を高めるかと言う観点で考え、その結果副産物としてムダやムラも改善され”筋肉質”になっていくものだと思うのです。
 

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この記事の著者

眞名子 和義

ムダ・ムラ・ムリの「3ムの撤廃が企業収益向上に繋がる」を信条とし、お客様の"視座"に立ったご提案を致します

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