特許侵害訴訟のリスク事例(サトウの切り餅) 前編

1.はじめに

 特許訴訟は、アップルとサムスンのような超巨大企業の間のみで起こるように思われがちですが、実際にはすべての企業が巻き込まれるおそれがあります。最近では以下のニュースが話題になりました。 

「サトウ」に製造禁止と賠償の判決、切り餅の特許侵害訴訟で知財高裁

 切り餅に入れる切り込みの特許権侵害をめぐり、越後製菓(長岡市)が佐藤食品工業(新潟市東区)に商品の製造・販売差し止めと、59億4000万円の損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決公判が22日、知財高裁であり、飯村敏明裁判長は佐藤食品工業に「サトウの切り餅 パリッとスリット」など五つの商品の製造禁止と約8億円の賠償を命じた。佐藤食品工業は最高裁に上告する。
   判決確定前でも強制執行が可能になる仮執行も認め、製造装置の廃棄も命じた。佐藤食品工業は現在、5商品の製造、出荷はしていない。(新潟日報2012年3月22日)

  本事件は、切り餅という身近な商品での特許訴訟ですので、内容がイメージしやすいと思います。ここでは、切り餅事件から、特許法上の細かい内容は省いて、ビジネス上参考にできる部分について解説したいと思います。

 

2.事例分析

(1)越後製菓特許の概要

 越後製菓の特許は下図のように切り餅の側面に切り込みを入れたものです。餅を焼いたときに餅の側面がまず裂けるように餅が膨張しますので、餅がきれいに焼けるという効果があります。

(出典:特許第4111382号)

 

 なお、実際には権利範囲は特許請求の範囲の記載に基づいて定められますが、本件は少々請求項の記載が難解でしたので、今回の説明は図面で代用しています。

 図のように、切り餅のような身の回りのシンプルな発明でも技術分野によっては特許権を取ることが可能です。逆に、特許権がないと勝手に判断して商売を始めることは非常に危険といえるでしょう。

 

(2)サトウ食品製品の概要

 サトウ食品が販売していた切り餅の構造は以下の通りです。

(出典:平成23年(ネ)第10002号 特許権侵害差止等請求控訴事件判決文)

  図のように、切り餅の側面に切込み(切り込み部13)が入っています。この部分が、越後食品の特許権を侵害していると知財高裁では判断されました。

 

(3)訴訟の経過及びその影響

 第一審の地裁では越後製菓が敗訴しましたが、第二審の知財高裁では越後製...

菓が逆転勝訴しました(現在、最高裁へ上告中)。

 知財高裁の判決では、サトウ食品に対し、商品の製造禁止及び製造装置の廃棄が命じられ(差止)、約8億円の賠償が命じられました(損害賠償)。

 包装餅でサトウ食品は3割近くのシェアを占め、同社の年間売上高約270億円のうち、差止が命じられた5商品は100億円程度に上る(出典:中国新聞2012/3/22)とされますので、差止による100億円程度の売上減は経営上何らかの影響があると思われます。

 

このような争いを防止するにはどうすればよいかを、次回後編にて解説します。

 

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