品質管理 中国工場管理の基本事例(その23)検査記録と設備メンテ記録

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  品質管理 中国工場管理の基本事例(その23)検査記録と設備メンテ記録
【目次】

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    1. 検査記録のない工場

    わたしは中国工場セミナーの中で、どんなにレベルの低い中国工場でもまったく記録がないというところはない、何らかの検査記録は取っていると話すことがあります。

     

    ところが最近まったく検査記録のない中国工場を続けて2つ見ることになりました。天津郊外にある中国ローカル企業で1社は鉄の加工メーカー、もう1社はメッキ業者でした。両社とも顧客は中国企業ですが、顧客の中国企業を通して海外にも出荷しているとのことでした。

     

    こうしたメーカーは品質保証をどのように考えているのでしょうか。今回は鉄加工メーカーについて書いてみたいと思います。この鉄加工メーカーは中堅クラスで従業員も150人規模の会社です。鉄の曲げ加工やプレスを主に手掛けています。驚いたのは、鉄コイルのスリットを自社でやっていたことです。

     

    この会社、検査をやっていないということではなく検査はやっているが、その記録を残していないのでした。総経理が「うちは記録するという習慣がありません」と言っていました。

     

    品管の責任者が1人いて、その下に検査員が2人います。この2人の検査員が生産工程を巡回して検査しています。検査員が不良を発見すると品管責任者に報告して、責任者が対応すること...

      品質管理 中国工場管理の基本事例(その23)検査記録と設備メンテ記録
    【目次】

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      1. 検査記録のない工場

      わたしは中国工場セミナーの中で、どんなにレベルの低い中国工場でもまったく記録がないというところはない、何らかの検査記録は取っていると話すことがあります。

       

      ところが最近まったく検査記録のない中国工場を続けて2つ見ることになりました。天津郊外にある中国ローカル企業で1社は鉄の加工メーカー、もう1社はメッキ業者でした。両社とも顧客は中国企業ですが、顧客の中国企業を通して海外にも出荷しているとのことでした。

       

      こうしたメーカーは品質保証をどのように考えているのでしょうか。今回は鉄加工メーカーについて書いてみたいと思います。この鉄加工メーカーは中堅クラスで従業員も150人規模の会社です。鉄の曲げ加工やプレスを主に手掛けています。驚いたのは、鉄コイルのスリットを自社でやっていたことです。

       

      この会社、検査をやっていないということではなく検査はやっているが、その記録を残していないのでした。総経理が「うちは記録するという習慣がありません」と言っていました。

       

      品管の責任者が1人いて、その下に検査員が2人います。この2人の検査員が生産工程を巡回して検査しています。検査員が不良を発見すると品管責任者に報告して、責任者が対応することになっているとのことでした。

       

      生産を開始した最初の製品の検査は必ずやることになっているとのこと。加工において設備の調整や条件出しが重要ポイントなので、初品の検査は必須です。この初品検査をやっていることは一応評価できます。ただし、すべてについて本当に実施しているかは、記録がないので確認のしようがありません。

       

      この会社、生産中の製品に対しては、検査員が巡回して検査していますが、出荷検査はやっていません。なんと出荷検査は顧客が実施して出荷検査記録表を作成して最終の顧客に提出しています。

       

      この鉄加工メーカーは、自社ですべて品質を保証するという考えはないようです。必要なところは、顧客の検査に頼るというのが実態のようです。製造業のレベルも上がってきた中国ですが、業種によってはまだまだこのような実態があることを再認識しました。

       

      2. 設備メンテの記録がない工場

      設備保全の記録に関する工場の実態を紹介します。

       

      この工場は品管と同じように設備管理を担当する責任者がおり、設備保全を一手に引き受けていました。設備は定期的にメンテナンスしているとの話がありました。また、金型などの摩耗管理は製品の状態を見て判断する出来映え管理でやっているとのことでした。

       

      ただし、検査記録と同じで設備のメンテに関わる実施記録も一切残していません。それではどの設備をいつメンテしたからわからないと次にいつメンテをするかはどうやってわかるのかと質問しました。

       

      長年の経験からどの設備をいつメンテすればよいかはわかるとの回答がありました。やってはいると思われるのですが、どこまできっちりやっているかは確認のしようがありません。

       

      このように検査や設備保全の記録のない工場ですが、無管理という訳でもありません。無管理で不良が多発していれば、いくら価格が安くても、顧客が中国企業でもリピートオーダーはしないはずですが、この工場多くの受注を抱えているようでした。

       

      日本企業がこの工場の管理状況を見たら、取引先としては選ばないと思います。わたしが新規取引先開拓の責任者だとしても購入先の対象からは外します。仮に取引するという判断をした場合、品質を確保するためには、この工場の管理が十分でないことを理解して、自社で何らかカバーすることが必要になると思います。

       

      取引先工場のレベルによって、自社でやることが変わってくると考えなくてはいけません。管理レベルの違うA社とB社の製品を買う側が同じ管理で使うのは、無理があります。

       

      また、どの程度の品質かは差し置いて、この中国工場の現状の品質は、品質管理責任者や設備保全責任者がいるから保たれていると考えるべきです。個人の力で保たれているのであって、工場の仕組みでこの品質が保たれているということではありません。

       

      もし、この責任者が何らかの理由でいなくなったら、現状の品質を保てなくなると考えなくてはいけません。そのような状況になったときは、取引可否を見直す必要があります

       

      次回に続きます。

       

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      この記事の著者

      根本 隆吉

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