物流における4M管理とは

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サプライチェーンマネジメント

1、4M変更管理とは

 皆さんの会社では4M管理はしっかりとできていますでしょうか。4Mとは次の4つのMを指します。改めて、4Mについて認識しておきましょう。

  • Man(人)
  • Material(もの)
  • Machine(設備)
  • Method(方法)

 これらは物流業務の基本的な構成要素です。物流の仕事をしっかりとやっていくためにはこの要素を押さえておく必要があります。4Mは物流の品質に重要なインパクトを与えます。この4つのいずれかが変更になった時にミスが起きやすいのです。

 たとえば最初のMである「人」について。よくある話ですが、担当者が変わったとたんに出荷ミスが起こるという現象があります。それもそのはずで、標準作業が確立されていない職場では作業者個々人が自分なりのスタイルで仕事をしていますので、それが他の人になったとたんに何かしらのミスが起こるのです。

 そこで担当者が変更になった場合には、一週間は後工程でチェックを入れる、などの方策が必要になります。こういった対策をあらかじめ定めておくのです。このように4Mのいずれかが変更になった場合に、会社として特別な行為を行うことを定めたものを「4M変更管理基準」と呼びます。

 これはルールとして定めるとともにポケットに入るサイズの基準書にまとめ、それを全従業員に配ると良いでしょう。では4つのMに関してどのような点に注意していったら良いかについて確認していきましょう。

2、物流における人・物の管理

 まず最初のMである「人」について考えてみましょう。前回もお話させていただきました通り「人」が変更になった時にはミスが発生しやすいと思われます。そこで物流監督者は新人に対してしっかりと仕事を教え込む必要があります。これを他人任せにすると失敗する可能性があります。

 まず仕事をやって見せ、仕事の手順と急所を言わせてみせ、実際にやらせてみます。そしてその状況を観察してフィードバックします。つまり正しくない部分についてはその場で修正させるのです。さらにその新人の作業状況をしばらくの間、しっかりと観察します。この時に発見された気になる点についても本人にフィードバックして修正させます。

 これを作業観察といいます。これは物流監督者の仕事の重要な部分です。監督者の給与に含まれる部分ですから決して手を抜いてはなりません。新人に限らず急な欠勤時のピンチヒッターについても同様のことを実施する必要があります。

 次に2番目のMである「もの」について見ていきましょう。物流業務における「もの」は多岐にわたります。パレットや容器、段ボールなどたくさんあると思います。一例を挙げて考えてみましょう。得意先から受託している梱包業務で段ボール箱の印刷が一部変更となり、旧品は使用が不可能になったとします。

 旧品と新品を職場に置いておくと誤って旧品を使って梱包してしまう可能性があります。ですからこの場合は「旧品は職場から撤去する」というルールを作成する必要があります。もし旧品がなくなり次第、新品に変更する場合には、旧品がなくなる前に新品を使ってはならないため、旧品が無くなるまで新品を職場に置かないというルールを作成します。保管場所の表示もしっかりと付けましょう。間違った段ボールを取ることの無いように新旧の区別を分かりやすく表示します。 

3、物流設備と方法の管理

 4M管理における物流設備管理では、点検の「実施時期」「実施項目」「実施記録」などを定め、それがいつでも見られるようにすることが必要です。物流設備にはトラックやフォークリフト、マテハン機器などがあります。これらの機器が故障すると仕事に支障が出ることは確実です。実施記録などはその設備の近くに掲示しておくと良いでしょう。

 もし使う設備が変更になったら何をしなければならないのか、つまり物流設備の4M変更基準を設定しておくのです。「運搬機器をフォークリフトから台車に変更した」ケースや「輸送機器をトラックからトレーラーに変更」、「ピッキングサポート機器をバーコードからデジタルピッキングに変更」など、物流担当者がやるべきこと、注意すべきことを明記した4M変更管理基準を作成し、それに基づいて物流担当者教育を実施します。

 物流業務における「方法」とは?それぞれの作業のやり方についてきちんと定義する必要があります。残念ながら物流作業について標準作業が設定されていないケースが目立ちます。つまり作業のやり方は作業者任せになっているか、その時々の現場リーダーのやり方をやらせているかのどちらかになってしまっているのです。

 これでは高いレベルでの物流品質は望めません。そこで物流を含むものづくりの基本中の基本である「作業の標...

サプライチェーンマネジメント

1、4M変更管理とは

 皆さんの会社では4M管理はしっかりとできていますでしょうか。4Mとは次の4つのMを指します。改めて、4Mについて認識しておきましょう。

  • Man(人)
  • Material(もの)
  • Machine(設備)
  • Method(方法)

 これらは物流業務の基本的な構成要素です。物流の仕事をしっかりとやっていくためにはこの要素を押さえておく必要があります。4Mは物流の品質に重要なインパクトを与えます。この4つのいずれかが変更になった時にミスが起きやすいのです。

 たとえば最初のMである「人」について。よくある話ですが、担当者が変わったとたんに出荷ミスが起こるという現象があります。それもそのはずで、標準作業が確立されていない職場では作業者個々人が自分なりのスタイルで仕事をしていますので、それが他の人になったとたんに何かしらのミスが起こるのです。

 そこで担当者が変更になった場合には、一週間は後工程でチェックを入れる、などの方策が必要になります。こういった対策をあらかじめ定めておくのです。このように4Mのいずれかが変更になった場合に、会社として特別な行為を行うことを定めたものを「4M変更管理基準」と呼びます。

 これはルールとして定めるとともにポケットに入るサイズの基準書にまとめ、それを全従業員に配ると良いでしょう。では4つのMに関してどのような点に注意していったら良いかについて確認していきましょう。

2、物流における人・物の管理

 まず最初のMである「人」について考えてみましょう。前回もお話させていただきました通り「人」が変更になった時にはミスが発生しやすいと思われます。そこで物流監督者は新人に対してしっかりと仕事を教え込む必要があります。これを他人任せにすると失敗する可能性があります。

 まず仕事をやって見せ、仕事の手順と急所を言わせてみせ、実際にやらせてみます。そしてその状況を観察してフィードバックします。つまり正しくない部分についてはその場で修正させるのです。さらにその新人の作業状況をしばらくの間、しっかりと観察します。この時に発見された気になる点についても本人にフィードバックして修正させます。

 これを作業観察といいます。これは物流監督者の仕事の重要な部分です。監督者の給与に含まれる部分ですから決して手を抜いてはなりません。新人に限らず急な欠勤時のピンチヒッターについても同様のことを実施する必要があります。

 次に2番目のMである「もの」について見ていきましょう。物流業務における「もの」は多岐にわたります。パレットや容器、段ボールなどたくさんあると思います。一例を挙げて考えてみましょう。得意先から受託している梱包業務で段ボール箱の印刷が一部変更となり、旧品は使用が不可能になったとします。

 旧品と新品を職場に置いておくと誤って旧品を使って梱包してしまう可能性があります。ですからこの場合は「旧品は職場から撤去する」というルールを作成する必要があります。もし旧品がなくなり次第、新品に変更する場合には、旧品がなくなる前に新品を使ってはならないため、旧品が無くなるまで新品を職場に置かないというルールを作成します。保管場所の表示もしっかりと付けましょう。間違った段ボールを取ることの無いように新旧の区別を分かりやすく表示します。 

3、物流設備と方法の管理

 4M管理における物流設備管理では、点検の「実施時期」「実施項目」「実施記録」などを定め、それがいつでも見られるようにすることが必要です。物流設備にはトラックやフォークリフト、マテハン機器などがあります。これらの機器が故障すると仕事に支障が出ることは確実です。実施記録などはその設備の近くに掲示しておくと良いでしょう。

 もし使う設備が変更になったら何をしなければならないのか、つまり物流設備の4M変更基準を設定しておくのです。「運搬機器をフォークリフトから台車に変更した」ケースや「輸送機器をトラックからトレーラーに変更」、「ピッキングサポート機器をバーコードからデジタルピッキングに変更」など、物流担当者がやるべきこと、注意すべきことを明記した4M変更管理基準を作成し、それに基づいて物流担当者教育を実施します。

 物流業務における「方法」とは?それぞれの作業のやり方についてきちんと定義する必要があります。残念ながら物流作業について標準作業が設定されていないケースが目立ちます。つまり作業のやり方は作業者任せになっているか、その時々の現場リーダーのやり方をやらせているかのどちらかになってしまっているのです。

 これでは高いレベルでの物流品質は望めません。そこで物流を含むものづくりの基本中の基本である「作業の標準化」を実施しましょう。「標準作業」はその時に考えられうるベストな状態を標準とします。つまりこの言葉に裏には改善することでどんどん標準作業は進化、変化するということです。「改善は永遠」ですから物流作業も日々進化していくことになります。その都度標準作業は見直していけば良いのです。

 ただしこの「方法」つまり仕事のやり方が変更になった時には注意が必要です。なぜなら変更時には間違いが発生しやすいからなのです。間違いを犯して物流品質が劣化してしまっては元も子もありません。この「方法」の変化点管理はしっかりとやっておきましょう。「方法」における4M変更管理として作業者教育とその新たなやり方での作業観察をぜひ実施していきたいものです。

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 いかがでしょうか。非常に簡単ではありますが物流における4M管理についてお話をさせていただきました。物流SQDC[1]を高度化するためにはこの4M管理が欠かせません。必ずドキュメントにまとめ、全従業員に配布して教育していきましょう。それが御社の競争力を圧倒的に高めることにつながるでしょう。

 [1]:物流SQDC(安全、品質、納期、コスト)

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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