「グループインタビュー」とは、キーワードからわかりやすく解説
1. グループインタビューとは
少人数の対象者グループに座談会形式でインタビューを行って意見を集め、製品・サービスのターゲット層の実態や製品・サービスへの反応を探ります。グループインタビューでは、モデレーター(司会者)のコーディネートにより、参加者間の会話・議論の内容を整理しながら進めることが重要となります。実施時間は90~120分程度が一般的です。
2. インタビュー調査時のラポール形成とは
ラポール形成の元は、心理学でカウンセラーとクライアントの間で築かれた心が開かれた状態をいいます。そのため、コミュニケーションを行うための方法として活用されています。新商品開発を行う時のインタビュー調査ですが、初めて会うお客様とコミュニケーションを取るのは難しいものです。
3. ラポール形成の原則
(1)原則1:肯定と尊重
相手を心から尊敬し肯定することが重要です。インタビューの冒頭にて本音を語って欲しいという意向を伝えます。
(2)原則2:行動の類似性と同調
自分と価値観が似ている人を無意識に信頼する傾向があります。相手との会話の中で、似た属性を見つけ「自分はあなたと同類である」となればラポールが形成しやすくなります。自己紹介で住んでいるところが同じだけで話が弾みます。インタビューの開始前に今日の天気や気温などの雑談をしておきます。
(3)原則3:ページングとリーディング
重要度や評価基準は相手のペースに合わせます。リーディングは会話をリードします。相手の話し方にあわせて質問します。
4. グループインタビュー調査のメリットとは
インタビュー調査のメリットとは、定量調査のデータからは読み取れないユーザーの生の声を聞けること、およびユーザーが日頃企業に伝えにくい製品・サービスの不満点や改善要望を聞けることです。インタビュー調査を行うことにより、顧客・ユーザー分析の解像度を上げることができます。グループインタビューのメリットは、他の参加者とのコミュニケーションで刺激を受けることで、新しいアイデアや幅広い意見が生まれることが期待できます。この効果を「グループ・ダイナミクス」といいます。また効率的に複数の対象者の情報を収集できるのもメリットです。
5. グループインタビュー調査のデメリットとは
参加者が他の参加者の発言や態度に影響されることで、結果にバイアスがかかることがあります。また他の参加者の目が気になって本音を話しにくいこともあります。
6. グループインタビューの具体的な設計と進行
グループインタビューを成功に導くためには、事前の調査企画と当日のモデレーター(司会者)の役割が極めて重要になります。
【調査企画の要点】
まず、グループインタビューを通して「何を知りたいのか」という調査目的を具体的に定義します。例えば、「新商品のパッケージデザインの評価」なのか、「既存サービスにおける顧客の潜在的な不満点」なのかによって、聞くべき内容は大きく異なります。
次に、この目的に沿って適切な対象者を選定します。単に年齢や性別だけでなく、対象となる製品やサービスの利用頻度や知識レベル、行動パターンなども考慮し、均質なグループを構成することが重要です。属性がバラバラすぎると、会話が噛み合わず、有意義なグループ・ダイナミクスが生まれにくくなります。
また、インタビューの進行を司るインタビューフロー(質問項目と時間配分)を作成します。質問は、一般的に「ウォーミングアップ」「本題」「深掘り・意見交換」「まとめ」のセクションに分けて構成します。
- ウォーミングアップ: 参加者の緊張をほぐし、話しやすい雰囲気を作るための簡単な自己紹介や、本題から少し離れた身近な話題(例:今日の天候、最近の出来事など)から入ります。
- 本題: 調査の核心となる質問に移ります。最初は広く浅い質問から始め、徐々に本質的な問いへと移行します。
深掘り・意見交換: 個人の具体的な体験や感情を尋ね、他の参加者の意見との相違点や共通点を探り、議論を活性化させます。
【モデレーターの役割とスキル】
モデレーターは、単に質問を読み上げる「進行役」ではなく、グループ内の議論を質的に高め、目的とする情報を引き出すファシリテーターとしての役割を担います。
- 話しやすい場の創出: 常に中立的な立場で、参加者全員が心理的安全性を感じられる雰囲気を作ります。どんな意見も肯定的に受け止め、「正解はない」「率直な意見を聞きたい」というメッセージを明確に伝えます。
- 議論のコントロール: 特定の参加者だけが発言を独占しないよう、発言が少ない人にも優しく問いかけ、意見を引き出すよう配慮します。逆に、話が脱線したり、議論が過度に感情的になったりした場合は、さりげなく本題に引き戻す軌道修正力が必要です。
- 本音の深掘り: 参加者の発言に対し、単に「なぜですか?」と問うだけでなく、「その時、具体的にどう感じましたか?」「その行動の裏にはどんな考えがありましたか?」などと掘り下げて質問することで、潜在的な動機(インサイト)を探ります。非言語的なサイン(表情、ジェスチャー、声のトーンなど)にも注意を払い、言葉の裏にある真意を読み取ろうとします。
- グループ・ダイナミクスの最大化: 意見が対立した際に、それを単なる衝突として終わらせず、「なるほど、Aさんの意見とは異なりますね。Bさんがそう感じるのはどうしてでしょう?」のように、あえて意見の対立構造を可視化し、新たな視点や深い洞察を引き出すきっかけとするスキルも求められます。
7. 収集した情報の分析と活用
グループインタビューで得られた情報は、定性データ(数値化しにくい、言葉や感情、動機などの情報)です。これを調査目的に沿った価値ある情報に変えるには、適切な分析プロセスが必要です。
【データの整理と構造化】
インタビューの録音や録画を基に発言の文字起こしを行い、データ化します。その後、発言を質問テーマや参加者の属性ごとに分類し、構造化します。
特に重要なのは、参加者の発言の裏にある「文脈」や「真意」を捉えることです。表面的な言葉だけでなく、「なぜその言葉を選んだのか」「どのような経験からその意見に至ったのか」といった背景を理解することが、インサイトの発見につながります。
【分析の着眼点:傾向と例外】
分析では、以下の点に着目します。
- 発言の頻度と共通点(傾向): 複数の参加者が共通して言及した不満点や評価点、あるいは無意識に使っていた言葉(キーワード)は、顧客層全体に共通する大きな傾向を示唆します。
- 意見のばらつきと例外(多様性): グループ内で意見が大きく分かれた点や、特定の参加者のみが発した少数意見は、既存の仮説を覆す新たな視点や、ニッチな顧客層のニーズを示している可能性があり、重要なインサイトの源泉となることがあります。
- 言葉と非言語情報の一致・不一致: 「とても良い」と言いながらも表情が曇っていたり、話すスピードが遅くなったりといった、言葉と非言語情報との不一致は、参加者が本音を隠している、あるいは複雑な感情を抱えているサインであり、さらに掘り下げるべきポイントです。
【インサイトの発見とレポート化】
分析結果から、「なぜ顧客はそのように行動したり、感じたりするのか」という本質的な理由、すなわちインサイトを抽出します。
最終的に、調査で得られたインサイトと具体的な発言例を盛り込んだレポートを作成します。このレポートは、単なる事実の羅列ではなく、「この発見から、我々は何をすべきか」という具体的な施策の提言に繋げる形でまとめることが、グループインタビューをビジネスに活用する上で最も重要なステップとなります。
8. まとめ
インタビュー調査には大きく分けて、1対1で行うデプスインタビューと複数の対象者を集めて行うグループインタビューがあり、それぞれの長短を考慮して目的に応じて使い分けます。インタビュー調査の実施に当たっては、調査目的を具体的に決めて共有すること、対象者や関連分野について事前に調べておくこと、聞き手が回答を誘導しないことなどの注意点があります。