「サービスマネジメント」とは

サービスとは、人や組織体に何らかの価値をもたらす活動で、サービスマネジメントはそれを管理することです。 製品と対比した時のサービスは無形性、同時性、異質性、消滅性といった特性があるため、その管理は生産マネジメントに比べて、(1)品質の評価が難しい、(2)事前の準備が難しい、(3)均一な品質の提供が難しい、といった特徴があります。 いまや日本のGDPの約75%はサービス業が生み出している一方、残る25%の製造業や農業においてもモノのコト化が進む中で、顧客ニーズの中心がサービスに移行しており、サービスマネジメントの考え方を取り入れる重要性が高まっています。

 

それでは、こうした特有の難しさを持つサービスマネジメントを、企業はどのように実践していくべきなのだろうか。生産マネジメントにおける「工場の品質管理」の手法をそのまま適用できない以上、サービスマネジメントには人間心理やプロセス(一連の手順)に着目した独自の専門的なアプローチが必要となる。具体的には、前述した3つの特徴(課題)を乗り越えるための3つの柱が重要である。

 

第1の柱は、品質の評価を可能にするための「顧客期待のコントロールと可視化」である。サービスの品質は、提供される客観的な内容だけで決まるのではない。顧客が事前に抱いていた「期待値」と、実際に受けた「知覚価値(実感した価値)」のギャップによって決まる。そのため、買い手の期待を過度に煽りすぎず、等身大の価値を正しく伝えるコミュニケーションが求められる。また、形のないサービスを評価しやすくするために、サービスを構成する要素を分解してマニュアルや「サービス・ブループリント(業務プロセスの設計図)」として可視化し、どの段階でどのような価値が生まれているかを測定可能な状態にすることが不可欠である。

 

第2の柱は、事前の準備が難しいという同時性・消滅性への対策としての「需要と供給の柔軟なコントロール」である。サービスは在庫として保管できないため、需要の波に合わせた体制づくりが死守すべきテーマとなる。需要側のコントロールとしては、予約制の導入、時間帯別の価格設定(ダイナミック・プライシング)、あるいはピーク時を避けた利用への特典付与などが有効である。一方、供給側のコントロールとしては、従業員の多能工化(複数の業務をこなせるようにすること)を進めて混雑部署へ人員を臨機応変に配置転換したり、一部のプロセスをセルフサービス化して顧客自身に担ってもらったりする工夫が挙げられる。

 

第3の柱は、均一な品質の提供という異質性へのアプローチとしての「標準化と人間性のバランス」である。サービスを提供するのが「人」である以上、その日の体調や担当者によってばなしが出るのは自然なことである。これを防ぐために、徹底的なITの活用や自動化によって「誰がやっても同じ成果になる部分(標準化)」を広げる一方、個々の顧客の状況に寄り添う「感情労働」や「おもてなし」といった人間特有の付加価値を高める教育を行う。つまり、機械的な一律さを目指すのではなく、「最低限保証すべき品質の底上げ」と「個別の顧客満足を生む柔軟性」を両立させることが、現代のサービスマネジメントの神髄といえる。

 

さらに、近年のデジタル技術の進化は、サービスマネジメントに劇的な変革をもたらしている。AI(人工知能)やデータ分析技術の発展により、これまで「見えなかった」顧客の行動特性や潜在的なニーズがリアルタイムで把握できるようになり、サービスの無形性や異質性という壁は少しずつ崩れ始めている。また、製造業が単に製品を売るだけでなく、IoT(モノのインターネット)を通じて製品の利用データを回収し、継続的な保守や改善提案を行う「サービタイゼーション(製造業のサービス化)」の動きも加速している。

 

このように、サービスマネジメントはもはやサービス業だけのものではない。あらゆる産業において、顧客との関係性を一回限りの「売買」で終わらせず、長期的な「体験の共有」へと進化させるための共通言語となっている。

 

これからの時代におけるサービスマネジメントの成功は、単に効率性を追求してコストを削減することではない。顧客を価値の共同創造者(コ・クリエーター)として巻き込み、企業と顧客の双方が満足感や豊かさを感じられるような仕組みをデザインし、運用し続けることである。変化の激しい市場環境の中で、顧客の心に残り続ける存在であり続けるために、このマネジメント手法を深く理解し、実践していくことの意義は極めて大きい。

◆CS経営とは 【連載記事紹介】

◆クレーム対応とは【連載記事紹介】


「サービスマネジメント」のキーワード解説記事

もっと見る
顧客の満足度やロイヤルティを測定するための指標、NPSとは

  今回はアンケート調査でよく見かけるNPSについて解説します。NPSはフレッド・ライクヘルド氏が提唱し、調査対象のロイヤルティを測定する...

  今回はアンケート調査でよく見かけるNPSについて解説します。NPSはフレッド・ライクヘルド氏が提唱し、調査対象のロイヤルティを測定する...


CCS法 【快年童子の豆鉄砲】(その52)

  ◆CCS(Customer Communication System)法 CCS法は、「顧客情報処理システムそのもの」とは大きく違い...

  ◆CCS(Customer Communication System)法 CCS法は、「顧客情報処理システムそのもの」とは大きく違い...


お客様相談室の最大の使命 クレーム対応とは(その26)

       2. 顧客がゼロになってしまう恐ろしさを知れ!  前回のその25に続いて、解説します。    今回は、「顧客」という認識につ...

       2. 顧客がゼロになってしまう恐ろしさを知れ!  前回のその25に続いて、解説します。    今回は、「顧客」という認識につ...


「サービスマネジメント」の活用事例

もっと見る
製造業CS(顧客満足)向上のポイント -スターバックスに学ぶ-

 CS(顧客満足)の向上は「事前期待」を把握することから始まるというのが、サービスサイエンスの理論です。今回は、高いCSやリピーターを獲得するために、スタ...

 CS(顧客満足)の向上は「事前期待」を把握することから始まるというのが、サービスサイエンスの理論です。今回は、高いCSやリピーターを獲得するために、スタ...