「PR(広報)戦略」とは、関連キーワードでわかりやすく解説 

 

1. PR(広報)戦略とは、

PR(広報)はマーケティング4Pの一つPromotionの一部です。いくら良い製品を作っても、その情報が必要な人たちに届かなければ絶対に売れませんし、社会の役にも立ちません。もの余りの時代にあってPRの重要性はますます高まっています。旧来の新聞、雑誌広告、パンフレットといった紙媒体に加え、ホームページ、ネット広告、メルマガ、SNSといったネット媒体の重要度が拡大しています。紙、ネットにかかわらず、メディアに取り上げられるための積極的な活動も重要です。

2. 展開戦略としての広報戦略 

ターゲットとして選択した市場に浸透するための具体的な戦略を策定するプロセスが広報戦略です。マーケティング戦略や業務効率化のための施策、などが含まれます。ここでは、ランチェスター戦略、STPマーケティング、4Pマーケティングミックス、DEAなどが使われます。
 
ランチェスター戦略は、軍事目的に研究された戦力と損害量の関係を、マーケティング分野に応用した考え方です。ランチェスター戦略は、第1法則は1対1の局地戦を想定した第1法則と、1対多を攻撃できる広域戦を想定した第2法則の2つの法則から成り、第2法則の場合では、第1法則の場合に比べて兵力が多い方がより有利となることを示しています。これをマーケティングに応用して、経営資源が限定される企業(弱者)は第1法則を、逆に、経営資源の豊富な企業(強者)は第2法則を適用できる市場で戦うよう戦略を立案します。
 
STPマーケティングは、①Segmentation(セグメント化)、②Targeting(ターゲット選定)、③Positioning(ポジショニング)の順に検討を進め、どこの誰にどのような価値を提供するかを明確にするためのフレームワークです。
 
4Pマーケティングミックスは、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(宣伝)の4つの要素の整合性を維持しながら、マーケティング施策の効果の極大化を目指す手法です。
 
DEA(包絡分析法)は、事業体の効率を相対的に評価するための手法です。金額で評価できない項目も含めて複数の入力と出力の関係を分析し、かつ、評価対象ごとに複数の入力項目間の重み付けを効率が最大になるよう調整することにより、個別の実情にあった客観的な評価が可能となります。

3. 経営との整合性を維持した広報戦略の展開

会社全体の経営戦略と個別の事業戦略との間の整合性を常に維持し、環境と各戦略の変化に応じて全体最適を保つ広報戦略が必要です。この展開ためのフレームワークとして、BSCなどのフレームワークが使われます。
 
BSC(バランスト・スコアカード)では、財務の視点、顧客の視点、業務プロセスの視点、学習と成長の視点の4つの視点で、戦略目標、評価指標、ターゲット、プログラムを設定して相互に関連付け、そのパフォーマンスを客観的、総合的に把握して経営戦略や事業戦略にフィードバックを行い、経営全体の最適化を目指します。
 

4. 広報戦略の具体的な展開

広報戦略を成功させるためには、その展開フェーズにおいて、ターゲットとなるステークホルダーごとに具体的なアプローチを設計し、実行していくことが不可欠です。ステークホルダーとは、企業活動に影響を与える、または影響を受けるすべての関係者を指します。これには、顧客、株主、従業員、メディア、地域社会などが含まれます。

【ステークホルダー別広報戦略】

顧客に対する広報は、製品やサービスの価値を伝え、信頼関係を築くことに主眼を置きます。ここでは、単なる製品情報の提供だけでなく、ブランドストーリーや企業の社会的責任(CSR)活動を積極的に発信することが重要です。顧客が共感できるストーリーは、単なる機能的価値を超えた感情的なつながりを生み出し、ロイヤリティを高めます。たとえば、環境に配慮した製品開発の背景や、地域貢献活動への取り組みなどを、ブログ記事やSNSで発信します。これにより、企業イメージが向上し、長期的なファンを獲得できます。

 

株主・投資家に対する広報は、企業の成長性、安定性、透明性を伝えることが中心です。IR(Investor Relations)活動として、決算説明会、株主総会、統合報告書の作成などを通じて、経営状況や将来のビジョンを明確に伝えます。この透明性が、投資家からの信頼を勝ち取り、資本市場での評価を高めることに繋がります。

 

従業員に対する広報は、社内広報(インターナル・コミュニケーション)と呼ばれ、企業文化の醸成や従業員エンゲージメントの向上に貢献します。経営ビジョンや戦略を共有し、従業員一人ひとりが自身の役割を理解し、主体的に業務に取り組むモチベーションを高めます。社内報やイントラネット、社内SNSなどを活用し、経営陣からのメッセージや各部署の成功事例などを共有することで、組織の一体感を強化します。

 

メディアに対する広報は、パブリシティ活動として知られています。記者会見、プレスリリースの配信、メディア向けの個別取材対応などを通じて、自社の情報をニュースとして取り上げてもらうことを目指します。メディアが取り上げる情報は、客観的な第三者の視点として受け取られるため、広告よりも高い信頼性を獲得できます。メディアとの良好な関係を築くことは、危機管理広報においても非常に重要です。

 

5.  広報戦略とデジタルマーケティングの融合

現代の広報戦略は、デジタル技術の進化に伴い、デジタルマーケティングとの融合が不可避となっています。旧来の一方向的な情報発信に加え、双方向のコミュニケーションが可能なデジタルチャネルを最大限に活用することが重要です。

 

SEO(検索エンジン最適化)は、広報活動の基盤となる要素です。企業が発信するコンテンツ(プレスリリース、ブログ記事、ホワイトペーパーなど)が、検索エンジンの上位に表示されるよう最適化することで、潜在的な顧客やメディア関係者に効率的にリーチできます。たとえば、新製品のプレスリリースに、関連するキーワードを適切に盛り込むことで、検索からの流入を増やすことが可能です。

 

SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)は、企業とステークホルダーが直接コミュニケーションを取るための強力なツールです。企業の公式アカウントを通じて、日々の活動や製品情報をリアルタイムで発信し、ユーザーからのコメントや質問に迅速に対応することで、エンゲージメントを高めます。SNSは、ブランドの個性を表現し、より人間味のあるコミュニケーションを築くのに適しています。

 

コンテンツマーケティングは、ユーザーにとって価値のある情報を提供することで、見込み客の獲得やロイヤリティ向上を目指す手法です。広報活動で得た情報(成功事例、業界トレンド、専門家の知見など)を、ブログ、動画、インフォグラフィックといった多様なコンテンツ形式で発信します。これにより、企業は単なる売り手ではなく、業界のオピニオンリーダーとしての地位を確立できます。

 

インフルエンサーマーケティングも、デジタル時代における重要な広報手法です。特定の分野で大きな影響力を持つインフルエンサーに協力を依頼し、製品やサービスをPRしてもらうことで、そのフォロワー層に効果的に情報を届けられます。この手法は、特に特定のニッチな市場や若年層をターゲットとする場合に有効です。

 

これらのデジタル手法を組み合わせることで、広報活動はより多角的で効果的なものとなり、企業のブランド価値を最大化する統合的なコミュニケーション戦略へと進化します。広報は、もはや単なる情報発信ではなく、企業価値を創造し、ステークホルダーとの関係性を深めるための戦略的な経営活動なのです。

 


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