事業戦略の立案と戦略の効果的、効率的な展開:事業戦略の技法とは

 優れた事業戦略の立案と戦略の効果的、効率的な展開を目的として、多くの技法が提唱され、様々な業界で活用されてきました。ここでは、事業戦略の立案から展開に至る各プロセスにおいて、広く使われている代表的な技法をご紹介します。個々の技法の詳細については、各技法のページを、ご参照下さい。
 

◆ 事業戦略立案のプロセス

 各事業の戦略は、企業全体の経営戦略の一部を構成します。経営戦略は、経営の理念、目的、目標を明確にし、それらと現実とのギャップを埋めるために何をどのように成すべきかを決めるものです。したがって、各事業の戦略もまた、全社の経営戦略と整合性を取りながら、事業の置かれている環境を分析し、どのような市場にどのような商品・手段で事業展開するかを明確にするものでなくてはなりません。事業戦略は、一般に以下のプロセスで立案されます。
 
(1)環境分析
(2)市場・事業領域の決定
(3)展開戦略(マーケティング戦略、パートナーシップ戦略等)の策定
(4)経営との整合性を維持した事業展開
 

(1)環境分析

 自社の事業が置かれている状況を市場や競合他社等の外部の状況も含めて、客観的に分析して、戦略立案の前提となる情報を整理するプロセスです。ここでは、3C分析、SWOT分析、PEST分析などが使われます。3C分析は、Company(自社)とCustomer(顧客)、Competitor(競合)の3つの観点から、事業の内部環境と外部環境を分析するものです。自社の経営資源を有効に使って競合に対して競争優位に立ち、顧客のニーズに如何に応えるべきかを明らかにします。
 
 SWOT分析は、Opportunity(機会)、Threat(脅威)という外部環境に対して、自社のStrength(強み)、Weakness(弱み)がどのような関係にあるかを分析するもので、自社の強みを活かし、弱みをカバーして、外部環境の変化に如何に対応すべきかを検討するのに役立ちます。
 
 PEST(ペスト)分析は、Politics(政治)、Economy(経済)、Society(社会)、Technology(技術)の4つの観点からマクロな外部環境を分析する手法で、マクロ環境が自社の事業に与える影響を評価するときに使います。
 

(2)市場・事業領域の決定

 環境分析の結果を踏まえ、どの市場で、競合他社に対してどのようなポジションを取って競争するかを決定します。ここでは、アンゾフの成長ベクトル、PPM、5F分析、BMOなどが使われます。アンゾフの成長ベクトルは、事業領域を既存市場と新規市場、既存商品と新規商品という2つの軸で分け、さらにそれを組み合わせで2×2=4通りに分類して、新規事業のターゲゲットとアプローチを分析する手法です。
 
                     
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 PPM(プロダクト・ポートフォリオ・マネジメント)は、シェアと成長率の2つの軸を組み合わせて2×2=4通りに商品を分類し、商品ポートフォリオや経営資源配分の全体最適を検討する手法です。
 
             
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 5F(ファイブフォーシズ)分析、競争環境を①同業者間の競争、②買い手の交渉力、③売り手の交渉力、④新規参入の脅威、⑤代替品の脅威、の5つの競争要因に着目して分析する手法です。同業者との競争だけでなく、業界を取り巻く競争要因を多角的に分析することで、業界構造を総合的に明らかにするのに役立ちます。BMOは、新規事業に参入する場合、その成功確率を事業の魅力度と自社への適社度から評価する手法です。60点満点で、魅力度35点以上、かつ、魅力度と適社度の合計が80点以上の場合、成功率は80%以上とされています。
 

(3)展開戦略

 ターゲットとして選択した市場に浸透するための具体的な戦略を策定するプロセスです。マーケティング戦略や業務効率化のための施策、などが含まれます。ここでは、ランチェスター戦略、STPマーケティング、4Pマーケティングミックス、DEAなどが使われます。
 
 ランチェスター戦略は、軍事目的に研究された戦力と損害量の関係を、マーケティング分野に応用した考え方です。ランチェスター戦略は、第1法則は1対1の局地戦を想定した第1法則と、1対多を攻撃できる広域戦を想定した第2法則の2つの法則から成り、第2法則の場合では、第1法則の場合に比べて兵力が多い方がより有利となることを示しています。これをマーケティングに応用して、経営資源が限定される企業(弱者)は第1法則を、逆に、経営資源の豊富な企業(強者)は第2法則を適用できる市場で戦うよう戦略を立案します。
 
 STPマーケティングは、①Segmentation(セグメント化)、②Targeting(ターゲット選定)、③Positioning(ポジショニング)の順に検討を進め、どこの誰にどのような価値を提供するかを明確にするためのフレームワークです。
 
 4Pマーケティングミックスは、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(宣伝)の4つの要素の整合性を維持しながら、マーケティング施策の効果の極大化を目指す手法です。
 
 DEA(包絡分析法)は、事業体の効率を相対的に評価するための手法です。金額で評価できない項目も含めて複数の入力と出力の関係を分析し、かつ、評価対象ごとに複数の入力項目間の重み付けを効率が最大になるよう調整することにより、個別の実情にあった客観的な評価が可能となります。
 

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(4)経営との整合性を維持した事業展開

 会社全体の経営戦略と個別の事業戦略との間の整合性を常に維持し、環境と各戦略の変化に応じて全体最適を保つためのフレームワークとして、BSCなどのフレームワークが使われます。
 
 BSC(バランスト・スコアカード)では、財務の視点、顧客の視点、業務プロセスの視点、学習と成長の視点の4つの視点で、戦略目標、評価指標、ターゲット、プログラムを設定して相互に関連付け、そのパフォーマンスを客観的、総合的に把握して経営戦略や事業戦略にフィードバックを行い、経営全体の最適化を目指します。
 

この記事の著者

谷萩 祐之

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