決断こそが社長の仕事 (その1)


 決断することは社長にしかできない仕事です。どれだけ情報を集めても、意見を他人に求めてみても、自動的に魔法のような論理で決まることはありません。多くの場合「やる」と「やらない」といったような二者択一を迫られて、社長は悩み抜いて決断することが多いと思います。本稿では、3回に分けて適切な判断のために用いることができる論理的思考法を、事例を交えてご紹介します。
 

1.論理だけで決まるなら社長は要らない

 論理的思考(ロジカルシンキング)は、すっかりポピュラーになりました。書店に行けば書籍が多数ありますし、ウェブサイトにも多くの記事が掲載されています。ロジカルシンキングが日本で知られるようになったのは、2001年に発行された「ロジカルシンキング」(照屋華子・岡田恵子、東洋経済新報社)がきっかけだと思われます。人によっては、ロジカルシンキングは和製英語で、本来はクリティカルシンキング(批判的思考)だと考えています。クリティカルシンキングは1930年代にアメリカで始まり、日本では1970年代から議論されていますので、さらに長い歴史があります。また、論理学の起源はギリシア哲学まで遡りますので、そう考えると論理的思考はもう2000年以上もの長い間、広く用いられてきたことになります。いずれにしても、ロジカルシンキングは日本のビジネスパーソンの間に浸透し、少なくとも言葉としては一般化しているといって良いでしょう。
 
 しかし、果たしてロジカルシンキングだけで意思決定ができるものなのでしょうか。もし、ロジカルシンキングというフレームワークだけで物事を決定できるとしたら、経営判断を誰が行っても構わないことになります。極論すれば、社長は不要となってしまうのです。もちろん、この疑念に対する答えは「否」です。ではどうやって意思決定するのでしょうか。
 

2.勘・経験・度胸(KKD)だけで判断するのは禁物

 経験豊富な経営者は、理屈で導かれるものではないにしても、状況を読んで、受け入れられるリスクは取り、然るべく経営判断を行っているものです。勘と経験、そして度胸で判断することを頭文字を取り、KKDと呼ぶことがあります。直観に基づいて経営判断を行った場合には、意思決定し、後から理由付けをしていることがよくあります。「直観」はパッと見て分かることを意味しており、神のお導きのような「直感」(インスピレーション)とは異なることに注意して下さい。普段あまり意識していない膨大な知識や経験、価値観を持ち、それらを状況に応じて取捨選択して組み合わせ、瞬時に判断するのが経験豊富な経営者にひらめく直観です。
 
 社長の経営判断は、時としてKKDでエイヤッと決める必要もあるでしょう。懸案事項が決まっていないことは最悪で、決めること自体が重要である場合も多いからです。しかし、どのように行ったにせよ、経営判断には常に理由付けができなくてはなりません。仮に理由を挙げられなかったとすれば、経営層や社員が納得できる説明ができませんし、結果的に失敗に終わってしまった時に判断を誤った理由を分析できません。失敗から今後の経営判断に生かすことができる知識を得られなければ、経営者としての成長もおぼつかなくなります。次回、論理的思考を味方につける(その2)では、事例を上げて論理的思考法を解説します。次回は、その2です。

この記事の著者

中津山 恒

経営をよくする!問題解決プロフェッショナル 〜 論理的思考とIT活用で目標を達成 〜

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