トラブルを未然に防ぐ「良品解析」の重要性、電子部品の事前解析手法と太陽電池の事例

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トラブルを未然に防ぐ「良品解析」の重要性、電子部品の事前解析手法と太陽電池の事例

【目次】

    電子部品やデバイスの品質を担保するためには、故障してから原因を探る「事後解析」だけでなく、市場に出る前に潜在的な欠陥を見つけ出す「事前解析」が欠かせません。本稿では、トラブルの未然防止に貢献する「良品解析」に焦点を当て、その目的や重要性を解説します。さらに、MIL規格に基づくDPAやLSIプロセス診断といった具体的な手法から、身近な太陽電池パネルを用いた解析事例をご紹介します。

     

    1. 良品解析とは

    良品解析は電子部品や電子デバイスの品質改善、品質向上を行うための手法の1つで、部品の状態や欠陥の観察から、将来故障に至る危険性を推定する。通常の信頼性試験は、長時間ストレスを加えて確認しているが、これは品質・信頼性評価に時間とコストがかなりかかってしまうため、代替手段として良品解析を実施する。

     

    故障解析が事後解析といわれるのに対して、良品解析は事前解析とされる保全型アプローチなので、良く出来たものを解析するのではなく、電気的に良品と判断されたものを解析することである。IC/LSI、LED、パワーデバイス、MEMSなどの電子部品、太陽電池、電子機器などの各種分野の部品、機器を対象としている。解析で得られた結果から製造工程上の課題抽出、品質の比較調査や様々な規格に対する合否判定を実施する。

     

    一般に電子部品の品質は製造メーカーで保証されていることが前提であるが、その品質レベルが低くかったり、製造管理不備で、市場に出てから故障が発生してしまう懸念がある。この様な問題を事前に防ぐために良品解析を適用する。特に、車載機器など高信頼性が要求されるメーカーでの部品選定に広く使われている。この方法では、個々に内在している欠陥を診断し、図1に示すように過去の故障解析の事例や信頼性試験の評価事例と照らし合わせて、採点と判定を行う。

      

              トラブルを未然に防ぐ「良品解析」の重要性、電子部品の事前解析手法と太陽電池の事例     

    図1.良品解析

     

    2. 事前解析の手法

    対象部品の開発 ・設計さ らに製作・生産,設置等の使用に先立つ段階での予防的、予測的解析が重要である。現実に半導体デバイスのように出来上がった製品を検査した段階では、ブラックボックスとして外見上は何ら不良とは考えられないが、封止をとり内部を調べてみると不具合が潜在 していることがあるので、トラブルの未然防止のため事前解析が重要となる。

     

    2.1 DPA(Destructive Physical Analysis:破壊物理解析)

    DPAは高信頼性を要求される部品等が、設計通りに製造されているか、過酷な環境下において故障が発生する要因がないかなど、MIL規格(MIL-STD-833...

    トラブルを未然に防ぐ「良品解析」の重要性、電子部品の事前解析手法と太陽電池の事例

    【目次】

      電子部品やデバイスの品質を担保するためには、故障してから原因を探る「事後解析」だけでなく、市場に出る前に潜在的な欠陥を見つけ出す「事前解析」が欠かせません。本稿では、トラブルの未然防止に貢献する「良品解析」に焦点を当て、その目的や重要性を解説します。さらに、MIL規格に基づくDPAやLSIプロセス診断といった具体的な手法から、身近な太陽電池パネルを用いた解析事例をご紹介します。

       

      1. 良品解析とは

      良品解析は電子部品や電子デバイスの品質改善、品質向上を行うための手法の1つで、部品の状態や欠陥の観察から、将来故障に至る危険性を推定する。通常の信頼性試験は、長時間ストレスを加えて確認しているが、これは品質・信頼性評価に時間とコストがかなりかかってしまうため、代替手段として良品解析を実施する。

       

      故障解析が事後解析といわれるのに対して、良品解析は事前解析とされる保全型アプローチなので、良く出来たものを解析するのではなく、電気的に良品と判断されたものを解析することである。IC/LSI、LED、パワーデバイス、MEMSなどの電子部品、太陽電池、電子機器などの各種分野の部品、機器を対象としている。解析で得られた結果から製造工程上の課題抽出、品質の比較調査や様々な規格に対する合否判定を実施する。

       

      一般に電子部品の品質は製造メーカーで保証されていることが前提であるが、その品質レベルが低くかったり、製造管理不備で、市場に出てから故障が発生してしまう懸念がある。この様な問題を事前に防ぐために良品解析を適用する。特に、車載機器など高信頼性が要求されるメーカーでの部品選定に広く使われている。この方法では、個々に内在している欠陥を診断し、図1に示すように過去の故障解析の事例や信頼性試験の評価事例と照らし合わせて、採点と判定を行う。

        

                トラブルを未然に防ぐ「良品解析」の重要性、電子部品の事前解析手法と太陽電池の事例     

      図1.良品解析

       

      2. 事前解析の手法

      対象部品の開発 ・設計さ らに製作・生産,設置等の使用に先立つ段階での予防的、予測的解析が重要である。現実に半導体デバイスのように出来上がった製品を検査した段階では、ブラックボックスとして外見上は何ら不良とは考えられないが、封止をとり内部を調べてみると不具合が潜在 していることがあるので、トラブルの未然防止のため事前解析が重要となる。

       

      2.1 DPA(Destructive Physical Analysis:破壊物理解析)

      DPAは高信頼性を要求される部品等が、設計通りに製造されているか、過酷な環境下において故障が発生する要因がないかなど、MIL規格(MIL-STD-833、メーカー規格など)に基づく構造解析で、部品内部まで評価する。対象はIC/トランジスタ等の能動部品、抵抗/コンデンサ等の受動部品やコネクタ等で実施されるが、微細なIC/LSIには対応が難しい。MIL-STD-883規格に準拠したDPAの検査事項の概要は以下の通り。

      • 外部目視(非破壊検査):少なくとも10倍の倍率で、デバイスの封止、めっき又は封止ガラスの中の形状欠陥について検査する。
      • 放射線写真方法(非破壊検査):非破壊で内部構造を透視し、ワイヤやダイの状態を検査、異物・ボイドの有無を検査する。
      • 封止(非破壊検査):気密性試験(ファインリーク試験、グロスリーク試験)を実施し、デバイスの気密性を検査する。
      • 内部ガス分析(破壊検査):中空パッケージの内部に含まれる水蒸気量を測定する。
      • 内部目視(破壊検査):デバイスのキャップを取り外し、光学顕微鏡で内部の組立て構造欠陥を検査する。
      • 基準形状:デバイスの外形寸法や内部の部品が、基準設計文書、規程の要求事項を満足しているかを測定する。
      • ボンド強度試験(破壊検査):ボンディングワイヤの引っ張り強度試験を実施し、ボンド強度が基準を満たしているかを測定する。
      • SEM検査(破壊検査):走査型電子顕微鏡(SEM)を用い、チップの金属膜(回路配線等)の構造や欠陥を高倍率で検査する。
      • ダイのせん断試験  :チップを基板から剥がすせん断強度試験を実施し、チップと基板との接着強度が基準を満たしているかを測定する。
      • PIND:Particle Impact Noise Detection(微粒子衝撃雑音検出試験):中空パッケージ部品内部に異物が混入していないことを確認する。

       

      【評価判定基準】

      全ての検査で不良判定基準に該当する欠陥が検出されなかった場合は、そのロットは使用しても差し支えないと判断する。

       

      2.2 LSIプロセス診断

      LSI(大規模集積回路)の複雑化した製造プロセスに起因する内部構造の異常や潜在的な欠陥を詳細に観察・分析し、将来の故障要因となる可能性のある要素や構造のばらつきを推測し、高い信頼性が求められるLSIデバイスの選別を行う。LSIプロセス診断の手順は、非破壊検査で外観検査、X線検査[透過、CT]、超音波探傷検査、開封後の破壊検査で内部検査、チップ表面検査、クレータリング検査、パッケージ断面検査、断面SEM検査、断面TEM検査、界層解析検査の検査項目を用いて実施する。

      • 外観検査では、捺印不良や変色、リードの曲がり、クラック、腐食などを行う。
      • X線検査では、ワイヤの状態やモールド中のボイドなどを確認する。

       

      更に超音波による内部剥離やボイドの確認、熱抵抗測定による内部接続状況確認を行う。実装工程を評価するため、LSIを開封して光学顕微鏡やSEM(走査型電子顕微鏡)でワイヤの状況やチップの状態、ダイボンディングの状況などを確認する。続いてチップの表面観察で、チップの欠けやダイシングなどアッセンブリに関する観察を行う。チップ自体の断面評価では、SEMやより高解像度な像が得られるTEMにより、界層解析(エッチバック解析)やLSI構造の詳細解析(断面解析)で配線の異常や結晶欠陥を観察する。各検査で得られたデータは、LSIプロセス診断評価項目に基づいて、項目ごとに定めた詳細な診断基準に従い評価・採点を行う。LSIプロセス診断の流れを図2に示す。

       

      トラブルを未然に防ぐ「良品解析」の重要性、電子部品の事前解析手法と太陽電池の事例

      図2. LSIプロセス診断の流れ

       

      評価項目には工程ごとに具体的な欠陥例が記述され、検査で検出された不具合構造と照合することで、定量的な評価と採点が可能である。採点は個々の欠陥ごとに信頼性観点から独自に重み付けをした点数で、1,000点満点から減点法で行う。LSIプロセス診断法により短期の信頼性試験や電気的特性検査では検出不可能な故障にいたる潜在的欠陥を検出することができる。

       

      3. 太陽電池パネルの良品解析例

      市販の太陽電池パネルを購入して、良品解析を行った事例を紹介する。太陽電池は半導体の一種でPV(Photovoltaic)と呼ばれ、太陽の光が入射したときの日射量に応じて電気を起こす半導体である。太陽からのエネルギーを直接電気に変換する。太陽電池に光が当たると、P型半導体の(-)電子がN型半導体(+)のホールに移動し、不安定な状態になったN型半導体の自由電子(-)が導線を伝ってP型半導体に向かって移動することにより、電流が流れる。太陽電池パネルは最小の単位(セル)を60~100セルつなぎ合わせ、ガラスやプラスチックで保護して1つのモジュールで構成している。さらにモジュールを10~20並べたアレイと呼ばれる状態で家の屋根などに設置される。図3に太陽電池パネルの構成を示す。

       

      トラブルを未然に防ぐ「良品解析」の重要性、電子部品の事前解析手法と太陽電池の事例

      図3. 太陽電池パネルの構成

       

      太陽電池パネル内に水蒸気のような粒子の小さい水分が入り込むと樹脂が劣化し、「層間剥離」が発生する。この剥離した部分は白く変色し太陽光からの発電はできなくなり、剥離していない部分の発電効率を下げる可能性がある。太陽電池モジュールの形成不具合例を図4に示す。外観検査で汚れやクラックが観察された。断面構造検査ではインターコネクタ部のはんだのボイド、クラックや異物、断線が観察されたので、経年劣化の可能性が高く、長期信頼性に懸念を与える可能性がある。 太陽電池セルの形成不具合例を図5に示す。セル本体は薄型化が進み、割れやすくなっていると、アセンブリ工程で微細なクラックが発生する可能性がある。セル内部の接合部には、形成時のストレスにより結晶欠陥が発生しやすいので、欠陥部はリークパスとなる可能性がある

       

       トラブルを未然に防ぐ「良品解析」の重要性、電子部品の事前解析手法と太陽電池の事例

      図4. モジュールの形成不具合例 

       

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      図5. セルの形成不具合例

       

      太陽電池パネルの寿命は約20年とされているが、通常のセル経年劣化率は5年で3~5%発電量が低下していく。しかし上記の様な不具合が内在していると、太陽電池パネルの交換単位は個々のセルではなくモジュール毎となるので、発電効率が更に低下してしまう可能性がある。

       

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      この記事の著者

      芥 正二郎

      民需向け情報通信機器の開発設計業務に約30年従事 その後、電子部品から電子機器のEMC/製品安全試験の評価と対策、信頼性評価/故障解析の業務に約13年従事

      民需向け情報通信機器の開発設計業務に約30年従事 その後、電子部品から電子機器のEMC/製品安全試験の評価と対策、信頼性評価/故障解析の業務に約13年従事


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