信頼性工学に基づく製品開発、仕様から保守までの一貫した品質確保の手法とは

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信頼性工学に基づく製品開発、仕様から保守までの一貫した品質確保の手法とは

【目次】

    1. 仕様

    信頼性工学の原則に基づいた設計を行うことが重要である。適度な冗長性を持たせたり、故障モードを考慮した設計を行うことで、顧客ニーズに適した信頼性の確保ができる。そのためには、まず商品の「目標品質」の内容と判定条件を仕様決めの段階で明確にしてから、製品の開発に着手することが重要である。 「誰が」、「何処で」、「何のために」、「いつまで」、「販売先はどこか」で、求められる製品の目標品質が決まる。 具体的には製品の仕様決定段階で下記の要求条件を明確にする。

    • 「誰が」:製品の使用者は大人か子供か、男か女か、素人(一般人)か、熟練者(プロ)かなど
    • 「何処で」:設置場所は“室内”か“屋外”か、“家庭用”か、“事務所/事業所/工場向け”か、周囲環境は“寒冷地”か、“高温・高湿環境”か、特殊環境は“可燃性ガス/“腐食ガス/塩害”か、“周辺にノイズを発生する大電力機器/高出力電磁波機器が近くにある”かなど
    • 「何のために」:“一般家電製品向け”か、“工場や工事現場”か、“病院や研究施設向け”か、“車載・宇宙防衛向け”かなど
    • 「いつまで」:使用期間は何年か(例えば1~5年)、耐用年数は何年か(例えば10年以上)など

    「販売先はどこか」では、“日本国内向け”か、“欧米向け”か、“その他海外(中国・東南アジアなど)”か、“全世界向け”かなど

     

    2. 設計

    具体設計段階では、製品の機能仕様の確認だけでなく、机上で想定出来る品質対策も確実に実施・確認する。 この段階で特に下記の設計品質を確実に考慮することで、以降の品質問題による手戻りを最小限に押さえることになる。

    •  ・アースの強化
    •  ・配線ルートの最適化
    •  ・放射ノイズ対策
    •  ・筐体設計(ノイズ/熱対策)


    <回路設計>

    回路設計では開発当初からノイズ対策を考慮することが重要である。例えばIC電源のノイズ対策において、コンデンサの選択はノイズの周波数特性や半共振に対応した対策部品の選定をおこなう。電子回路に安定した電源を供給するために高周波対策用のコンデンサはICの電源ピン近くに、低周波対策用はその横に並べて配置する。コンデンサ容量によってインピーダンス周波数特性が異なるので、高周波ノイ...

    信頼性工学に基づく製品開発、仕様から保守までの一貫した品質確保の手法とは

    【目次】

      1. 仕様

      信頼性工学の原則に基づいた設計を行うことが重要である。適度な冗長性を持たせたり、故障モードを考慮した設計を行うことで、顧客ニーズに適した信頼性の確保ができる。そのためには、まず商品の「目標品質」の内容と判定条件を仕様決めの段階で明確にしてから、製品の開発に着手することが重要である。 「誰が」、「何処で」、「何のために」、「いつまで」、「販売先はどこか」で、求められる製品の目標品質が決まる。 具体的には製品の仕様決定段階で下記の要求条件を明確にする。

      • 「誰が」:製品の使用者は大人か子供か、男か女か、素人(一般人)か、熟練者(プロ)かなど
      • 「何処で」:設置場所は“室内”か“屋外”か、“家庭用”か、“事務所/事業所/工場向け”か、周囲環境は“寒冷地”か、“高温・高湿環境”か、特殊環境は“可燃性ガス/“腐食ガス/塩害”か、“周辺にノイズを発生する大電力機器/高出力電磁波機器が近くにある”かなど
      • 「何のために」:“一般家電製品向け”か、“工場や工事現場”か、“病院や研究施設向け”か、“車載・宇宙防衛向け”かなど
      • 「いつまで」:使用期間は何年か(例えば1~5年)、耐用年数は何年か(例えば10年以上)など

      「販売先はどこか」では、“日本国内向け”か、“欧米向け”か、“その他海外(中国・東南アジアなど)”か、“全世界向け”かなど

       

      2. 設計

      具体設計段階では、製品の機能仕様の確認だけでなく、机上で想定出来る品質対策も確実に実施・確認する。 この段階で特に下記の設計品質を確実に考慮することで、以降の品質問題による手戻りを最小限に押さえることになる。

      •  ・アースの強化
      •  ・配線ルートの最適化
      •  ・放射ノイズ対策
      •  ・筐体設計(ノイズ/熱対策)


      <回路設計>

      回路設計では開発当初からノイズ対策を考慮することが重要である。例えばIC電源のノイズ対策において、コンデンサの選択はノイズの周波数特性や半共振に対応した対策部品の選定をおこなう。電子回路に安定した電源を供給するために高周波対策用のコンデンサはICの電源ピン近くに、低周波対策用はその横に並べて配置する。コンデンサ容量によってインピーダンス周波数特性が異なるので、高周波ノイズには小容量を、低周波ノイズには大容量のコンデンサを選択する。


      <基板設計>

      基板配線では、バイパス配線や信号線の反射を考慮した配線の引き回しをする。電気信号はICの出力から信号パターンを通ってICの入力に伝わり、シグナルグランドを通ってICの出力源に戻る。このとき、行きと帰りで信号パターン間の距離が異なると、信号経路差がループアンテナとなってノイズが発生する場合がある。各入力で悪影響を与えないために、パターンの引き回しルートを工夫したり、ダンピング抵抗を挿入して信号波形の歪みを押さえるように設計する。通常の電子回路の信号電流は送信側ICから信号パターンを通って相手のICに伝わり、シグナルグランド層を経由した帰還ルートで戻ってくる。(コモンモード) このときの帰還ルートがシグナルグランド層の孔やスリットの存在で遠回りになってしまうとノイズの発生原因になる場合があるので、配線パターンのルートを確認して基板設計をする必要がある。 

       

      3. 製造

      製造工程での品質管理を徹底し、製品の一貫性を保つことが必要である。適切な製造手法や検査プロセスを導入することで、欠陥品の流出を防げる。製造品質では開発製品が当初の「目標品質」を満足しているかの最終確認を行う。顧客が実際に使用する環境を想定し、その条件下で確実に正常動作することを確認する。そのために、後述する故障期に対し、対策・検証を行う。寿命に関連する故障期に対しては最適な温度サイクル試験、振動試験、湿度試験などの評価試験を選択・実施して長期信頼性を確認する。また、製造欠陥による初期故障はスクリーニング法により、低減する。スクリーニング法は光学顕微鏡や透過X線で欠陥を見つけることと、バーンイン(高温バイアス試験)で欠陥を成長させ、故障にして除去する方法である。これらの品質確認を行うことで、出荷後の偶発故障は最小限に抑える。さらに出荷前に、顧客へ伝えるべき製品品質に関する必要な以下の商品化作業を行う。

      •  ・ 適合規格の取得(VCCI、PSE、CE等)
      •  ・ ドキュメント(取扱説明書、カタログ等)の検証
      •  ・ 製品の正しい設置方法、使い方、注意事項

       

      <電磁波ノイズ>

      EMCの試験規格は各国ごとに異なり、製品を販売するには対象となる国の試験規格をクリアし、その国が定めた認証マークを表示する。認証マークには日本(VCCI/PSE)、米国(FCC/UL)、カナダ(CSA)、欧州(CE)、ロシア(EAC)、中国(CCC)、韓国(KC)、台湾(BSMI)、オーストラリア(RCM)などがある。

       

      信頼性工学に基づく製品開発、仕様から保守までの一貫した品質確保の手法とは

      図. 世界のEMCの規格認証マーク

       

      4. 保守

      <市場クレーム>

      市場品質では、発生したクレームの現状を正確に把握し、いかに素早く的確な対応策がとれたかが重要なポイントとなる。市場クレームでの障害要因にはいくつかのパターンがある。

      • ① 製品の正常な劣化、寿命
      • ② 顧客の誤解で間違った使い方をした
      • ③ 本来の条件と異なる場所や工事で設置されている
      • ④ 製造不良、部品不良または設計不良


      上記の①、②の場合は、素早く適切な説明が出来ればクレームの終息は早い。特に②の場合、顧客は自分が間違っていると思っていないので、時間が掛かると不信感が深まってしまう。③の場合は、納得してもらえるような指導説明が必要である。マニュアルにきちんと記載されていれば解決が速いので、判りやすいマニュアルなど表記方法の改善が必要になる場合がある。④はメーカー側の責任なので、真摯に問題点を認め、改善と顧客対策に取り組む事になる。いずれにしても「三現主義(現場、現物、現実)」で、机上で判断せず、実際に現場で現物をよく観察して、現実を認識した上で、問題の解決を図ることが大切である。


      <故障解析>

      製品に問題があった場合、その要因としては、部品不良、回路設計ミス、ソフトバグ、製造不良などが考えられる。その故障原因はいろいろな分析手法と手段を活用して問題点を絞り込み、再発防止に向けた歯止め対策が必要である。

       

      5. まとめ

      市場から得られるフィードバック情報を活用し、問題点を特定して改善策を講じることが重要である。顧客からの意見や故障データを分析し「PDCA(Plan⇒Do⇒Check⇒Act)」のサイクルを回して、次の製品開発へ活かして行くことで、更により良い製品品質を作り上げて行ける。目標品質の実現は、まず初めにどんな商品にするかの「仕様決め」からスタートする。「設計」、「製造」、更に販売後の「保守・サポート」まで、その商品が「終息」するまでが、お客様へ提供する製品のトータル品質となる。それぞれの開発ステップで得た経験と知識をまた次の開発時に活かして行くことで、より良い製品品質を作り上げていける。

       

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      この記事の著者

      芥 正二郎

      民需向け情報通信機器の開発設計業務に約30年従事 その後、電子部品から電子機器のEMC/製品安全試験の評価と対策、信頼性評価/故障解析の業務に約13年従事

      民需向け情報通信機器の開発設計業務に約30年従事 その後、電子部品から電子機器のEMC/製品安全試験の評価と対策、信頼性評価/故障解析の業務に約13年従事


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