前回は、クリーンルーム用の筆記具の話題でした。今回は、現場診断・指導から見えるものをテーマに解説します。クリーン化の現場診断・指導依頼を受け、これまで色々な現場を訪問して来ました。その都度各会社、拠点によって、風土や雰囲気などかなり違うものだと感じています。
まず、受付では儀礼的、事務的なところもありますが、その地方の温かさを感じるところもあります。受付に役員あるいは担当者が迎えに来て、応接室、あるいは会議室に通されると言うのが割と多いスタイルです。この移動時に、簡単な挨拶や情報交換をするということが多いです。
例えば、「今日は飛行機は揺れました?」とか、「雪で予定通り到着するのか心配していました」あるいは、「昨夜のホテルではゆっくり出来ましたか?」等と、との時々の話題に触れることが出来ます。その過程で、この方は心からもてなしてくれそうなのか、事務的な対応なのかを感じることが出来ます。すると、その後始まる会議や現場診断・指導への対応をどのようにすべきか、心構えが出来て来ます。
約束の時間よりも早めに到着するよう心がけていますので、応接室や会議室で少し待つ場合もありますが、ここには、様々な情報がありますので、事前情報を入手する場でもあります。例えば、社是や会社の各種活動などが掲示されているところが多いので、それらを頭に置きながら現場診断・指導に活用することが出来ます。それらが活きたものなのか、単に看板だけなのかと言うことが現場に入ると見えて来ます。
ある小規模の会社に呼ばれた時のことです。私は、和気あいあいと言う雰囲気でやるつもりでいたのですが、到着時から妙に雰囲気が固いので、何か変だと感じていました。現場で対応する担当者や、オペレータの視線が冷たく鋭い感じなのです。これでは、思ったように指摘や指導ができません。そのことを後で役員の方に聞いてみたところ、実は役員の言うことを現場の人達に中々聞いてもらえないので、“厳しい監査員が来る”と言うアナウンスをし、第三者を活用して厳しく指導してもらうつもりだったのが裏目に出てしまったと言うのです。
どうも、その役員の方も、日頃から現場に良く入ると言う行動はしていなかったようで、たまに入った時に気がついたことを指摘するものの、たまにしか現場に入らないので、徹底した指導に繋がらないため、それを私を通じて現場に伝えようとしたのだそうです。つまり、上層部と現場とのコミュニケーションが取れていないと言うことです。これでは、たまに工場に入って来て指摘をする。その時だけ凌げば、しばらくはまた色々言われないだろうと言う繰り返しで、進歩がありません。
そう言えば、工場の廊下を案内されていた時に、すれ違う従業員の方で挨拶をしてくれた方が殆どいませんでした。廊下には、社長室長の名のもとに、“社長に会ったら挨拶しましょう”と言う掲示がいたるところに貼り出されていました。私は社長ではないので、挨拶は無しか?と思いました。直接、口頭で伝達するのではなく、紙に書いて掲示することで指示したと言う意識もあるのでしょう。
現場を管理したり、現場との意思の疎通をはかると言うのは、小規模の会社では特に経営者としても必要なことです。その過程で沢山の情報や問題が拾われることが多いからです。
現在は、日本の景気は上昇傾向です。まだ、隅々までその波が行き届いているわけではありませんが、そう言ったある種の報道に気持ちが緩んでいる部分もあるように思います。他社や世の中の情報は良く目につくのですが、足元である自分の会社の実情はどうなのかが、きちんと把握されていないのかもしれません。
逆に、社長や役員が第三者の現場診断にしっかり対応し、自分たちが良いと思っていた現場には、まだこんなにたくさんの問題があるのかと言うことを認識する行動をしているところもあります。 こういうところは、指摘、指導、アドバイスがし易く感じます。お互いに本音が出せますので、価値ある機会になります。
こういう企業は、日頃からも経営者や管理職の方が現場に良く入りますので、現場の実態はある程度把握されています。さらに第三者が見ることで、慣れて見落としていたことや、自分にはなかった見方を習得することで、更に高いレベルの現場改善に繋がります。
前者は、何度訪問しても改善があまり進まないのですが、後者の場合は、改善ス...