多重度因子、かたより因子:金属材料基礎講座(その135)

投稿日

多重度因子、かたより因子:金属材料基礎講座(その135)

【目次】

    1. 多重度因子

    回折が例えば(100)で起こる時、同じ面間隔を持つ(010)、(001)などの面も同様に回折を起こします。

     

    この時、(100)、(010)、(001)は異なるミラー指数ですが、同じ回折を起こすため、回折強度はこれら3つの等価な面から起こる回折強度の合計となります。

     

    このように回折を起こすミラー指数のうち、等価な面のミラー指数の数を多重度因子として表します。例えば、立方晶の{100}の多重度因子は(100)、(010)、(001)、(-100)、(0-10)、(00-1)の6個です。また{111}の場合(111)、(-111)、(1-11)、(11-1)、(-1-11)、(-11-1)、(1-1-1)、(-1-1-1)の8個となり、{100}よりも回折を起こす面が多くなります。

     

    立方晶の多重度因子を下表に示します。面指数が複雑になるほど(等価な面が多いほど)多重度因子は多くなる傾向があります。

    表.立方晶の多重度因子

    多重度因子、かたより因子:金属材料基礎講座(その135)

     

    2. かたより因子

    X線は電磁波であり、ターゲット内で電子を急減速することによって発生します。

     

    そのため電子とX線は相互作用があると言えます。電子にX線を入射すると散乱が起こりますが、その強さは散乱角によって異なります。これをかたより因子(偏光因子)といいます。

     

    かたより因子は入射ビームの強度を基準にして散乱ビームの強度を与えます。これを表すと式(1)になります。cosで表されるように0°と180°(入射ビームの前方または後方)で最大になり、入射ビームの垂直方向は最小となります。

    多重度因子、かたより因子:金属材料基礎講座(その135)

     

    次回に続きます。

    関連解説記事:マランゴニ対流~宇宙でもきれいに混ざらない合金の不思議 

    ◆...

    多重度因子、かたより因子:金属材料基礎講座(その135)

    【目次】

      1. 多重度因子

      回折が例えば(100)で起こる時、同じ面間隔を持つ(010)、(001)などの面も同様に回折を起こします。

       

      この時、(100)、(010)、(001)は異なるミラー指数ですが、同じ回折を起こすため、回折強度はこれら3つの等価な面から起こる回折強度の合計となります。

       

      このように回折を起こすミラー指数のうち、等価な面のミラー指数の数を多重度因子として表します。例えば、立方晶の{100}の多重度因子は(100)、(010)、(001)、(-100)、(0-10)、(00-1)の6個です。また{111}の場合(111)、(-111)、(1-11)、(11-1)、(-1-11)、(-11-1)、(1-1-1)、(-1-1-1)の8個となり、{100}よりも回折を起こす面が多くなります。

       

      立方晶の多重度因子を下表に示します。面指数が複雑になるほど(等価な面が多いほど)多重度因子は多くなる傾向があります。

      表.立方晶の多重度因子

      多重度因子、かたより因子:金属材料基礎講座(その135)

       

      2. かたより因子

      X線は電磁波であり、ターゲット内で電子を急減速することによって発生します。

       

      そのため電子とX線は相互作用があると言えます。電子にX線を入射すると散乱が起こりますが、その強さは散乱角によって異なります。これをかたより因子(偏光因子)といいます。

       

      かたより因子は入射ビームの強度を基準にして散乱ビームの強度を与えます。これを表すと式(1)になります。cosで表されるように0°と180°(入射ビームの前方または後方)で最大になり、入射ビームの垂直方向は最小となります。

      多重度因子、かたより因子:金属材料基礎講座(その135)

       

      次回に続きます。

      関連解説記事:マランゴニ対流~宇宙でもきれいに混ざらない合金の不思議 

      関連解説記事:金属材料基礎講座 【連載記事紹介】

       

      連載記事紹介:ものづくりドットコムの人気連載記事をまとめたページはこちら!

       

      【ものづくり セミナーサーチ】 セミナー紹介:国内最大級のセミナー掲載数 〈ものづくりセミナーサーチ〉 はこちら!

       

         続きを読むには・・・


      この記事の著者

      福﨑 昌宏

      金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。

      金属組織の分析屋 金属材料の疲労破壊や腐食など不具合を解決します。


      「金属・無機材料技術」の他のキーワード解説記事

      もっと見る
      脱成分腐食とは:金属材料基礎講座(その70)

        ◆ 黄銅の脱成分腐食  脱成分腐食は、合金の特定の成分や特定の相だけが優先的に腐食されることです。選択腐食と呼ばれることもあります。...

        ◆ 黄銅の脱成分腐食  脱成分腐食は、合金の特定の成分や特定の相だけが優先的に腐食されることです。選択腐食と呼ばれることもあります。...


      疲労破壊 金属材料基礎講座(その2)

        1. 疲労破壊 (1) 金属疲労について  疲労という言葉は一般的に使用されており、人が様々なストレスにさらされて疲れた状態のこと...

        1. 疲労破壊 (1) 金属疲労について  疲労という言葉は一般的に使用されており、人が様々なストレスにさらされて疲れた状態のこと...


      ボルタ電池 金属材料基礎講座(その54)

        ◆ ボルタ電池の仕組み  2枚の材質の異なる電極を希硫酸などの電解質に浸すと電流が流れます。これは酸による腐食の簡単なモデルです(図...

        ◆ ボルタ電池の仕組み  2枚の材質の異なる電極を希硫酸などの電解質に浸すと電流が流れます。これは酸による腐食の簡単なモデルです(図...


      「金属・無機材料技術」の活用事例

      もっと見る
      金代替めっき接点の開発事例 (コネクター用貴金属めっき)

       私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...

       私は約20年前に自動車用コネクターメーカーで、接点材料の研究開発を担当していました。当時の接点は錫めっきが主流でした。一方、ECU(エンジンコントロール...


      ゾルゲル法による反射防止コートの開発と生産

       15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...

       15年前に勤務していた自動車用部品の製造会社で、ゾルゲル法による反射防止コートを樹脂基板上に製造する業務の設計責任者をしていました。ゾルゲル法というのは...