レイノルズ数とは?特徴と定義を紹介

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レイノルズ数とは?特徴と定義を紹介


レイノルズ数は流体力学の重要な無次元数で、流れが粘性力か慣性力に支配されるかを判断するのに使用されます。
この記事では、レイノルズ数の定義、特徴、歴史、および様々な応用領域について詳しく説明し、流体力学、航空力学、船舶工学、生理学などでの活用を紹介します。

 

レイノルズ数とは?

レイノルズ数は、流体の流れの特性を評価するために使用される無次元数です。流体力学において非常に重要な概念であり、流れの挙動が主に粘性力によるものか、それとも慣性力に支配されるかを判断するのに役立ちます。レイノルズ数が高い場合、流れは乱流(不規則で不安定)になりやすく、低い場合は層流(規則的で安定)の傾向があります。

 


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レイノルズ数の歴史

レイノルズ数は、1883年にオズボーン・レイノルズによって導入されました。レイノルズは、流れの性質を理解するための実験を行い、流れが乱流になる特定の条件を発見しました。この発見は、流体の動きを理解し、様々な工学的応用に役立てる重要な基盤となりました。

 

レイノルズ数の特徴紹介


特徴紹介 次元解析に有用

レイノルズ数は次元解析において重要な役割を果たします。これは、異なるスケールや条件での流れを比較する際に、無次元数として使用されるためです。これにより、小規模な実験から得られたデータを、より大きな実際の状況に適用することが可能になります。

 

特徴紹介 異なる流れ領域の特徴づけに利用

レイノルズ数は、流れが層流か乱流かを判断するのに用いられます。例えば、管内流れにおいては、レイノルズ数が約2000未満では層流、それ以上では乱流が発生するとされています。このように、レイノルズ数は流体の流れの性質を区分けするのに役立ちます。

 

レイノルズ数の定義とは


レイノルズ数の定義式

レイノルズ数は、次の式で定義されます:

Re=ρuL/μ
 
 ここで、
ρは流体の密度、
uは流体の速度、
Lは代表的な長さ(例えば管の直径)、そして
μは流体の粘度です。
この式は、流体の慣性力と粘性力の比率を示しており、流れの性質を理解するのに役立ちます。

 

レイノルズ数の定義式を変形させた場合

レイノルズ数の定義式を変形させた場合、次のように表現されます



Re はレイノルズ数です。
u は流体の速度(単位は m/s)です。
L は代表的な長さ(例えば管の直径など、単位は m)です。
ν は動粘性係数(粘度を密度で割ったもの、単位は m²/s)です。
これは慣性力(分子)と粘性力(分母)の比と読みかえることができ、さらには全体の運動量輸送と分子の運動量輸送の比としても考慮することができます。
動粘性係数 ν を使用して、レイノルズ数をより直接的に表現しています。この形式は、特に粘度と密度が既知の流体に対して、レイノルズ数を計算する際に便利です。レイノルズ数のこの表現は、流体の慣性効果と粘性効果の比較を簡潔に示し、流れの性質を評価するのに役立ちます。

 

配管内の流れにおけるレイノルズ数の定義

配管内の流れにおいて、レイノルズ数は一般的に次のように定義されます。

 水力直径

 体積流量(m3/s)

  配管の断面積(m2)

 

四角、長方形、または高さと幅が等しい環状ダクトのような形の場合

四角、長方形、または高さと幅が等しい環状ダクトのような形においては、内部流れの状態に対する特性長さLには次のように定義される水力直径DH が使われます。

 配管の断面積(m2)

 潤辺(m)

水路における潤辺は断面で見た場合の水路と流れが接する周辺長さの合計のことです。
これは、水が空気にさらされる部分の長さは潤辺に含まないことを意味します。

 

チューブインチューブ方式の熱交換器の外部管のような環状ダクトの場合

円管の満水流れにおいては、水力直径は数学的に示される通りの配管の内径に一致します。

チューブインチューブ方式の熱交換器の外部管のような環状ダクトでは、水力直径は次の式に帰着することが代数的に示すことができます。

 外部管の内径

 内部管の外径

 

非円形ダクト内の流れを含む計算においては、水力直径は十分な精度で円形ダクトの直径に置き換えることができます。

 

平行2平板間の流れにおけるレイノルズ数の定義

平行な2つの平板間を流れる流体に関して、レイノルズ数は流体の動きを評価するのに用いられます。この場合、代表的な長さは平板間の距離となります。レイノルズ数は、平板間を流れる流体の速度、平板間の距離、流体の密度と粘度を考慮して計算されます。この数値により、流れが層流か乱流かを判断でき、さらに流体の圧力損失や熱伝達の特性を予測するのに役立ちます。

 

開水路流れにおけるレイノルズ数の定義

開水路流れにおけるレイノルズ数は、川や運河などの自然水系や人工水路における流体の挙動を理解するのに使われます。この場合のレイノルズ数は、水の流速、水路の特徴的な寸法(例えば水深や水路の幅)、水の密度と粘性を考慮して計算されます。この値により、流れが層流か乱流かを判断し、河川工学や灌漑システムの設計において重要な指標となります。

 

翼型まわりの流れにおけるレイノルズ数の定義

翼型(航空機の翼や風車のブレードなど)周りの流れにおけるレイノルズ数は、航空力学や風力工学において非常に重要です。この場合のレイノルズ数は、流体(通常は空気)の速度、翼型の代表的な長さ(例えば翼弦長)、空気の密度と粘性を用いて計算されます。レイノルズ数により、翼型周りの流れが層流か乱流かを判断し、翼の性能や流れの挙動を理解するのに役立ちます。


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流れの中の障害物におけるレイノルズ数の定義

流れの中の障害物におけるレイノルズ数は、障害物周囲の流体の挙動を評価するために用いられます。この際、障害物の特徴的な寸法(例えば球の直径)と流れの速度、流体の密度と粘性を考慮して計算されます。レイノルズ数によって、流体が障害物周りで層流か乱流かを判断し、抵抗や揚力などの力学的特性を理解するのに役立ちます。


流れの中の球の場合

球体を取り巻く流れにおけるレイノルズ数は、球体の周囲での流体の挙動を分析する際に使用されます。この場合、レイノルズ数は流体の速度、球体の直径、流体の密度と粘度を用いて計算されます。レイノルズ数により、流れが球体の周りで層流か乱流かを判断し、流れによる抵抗や揚力の特性を理解するのに役立ちます。

 

流れの中の楕円体の場合

楕円体周りの流れに関しても、レイノルズ数が重要です。この場合、代表的な長さは楕円体の主軸の長さや短軸の長さなどになります。レイノルズ数は、流体の速度と楕円体のサイズ、流体の特性を考慮して計算され、流れの性質と楕円体にかかる力を評価するのに使用されます。

 

沈降速度の場合

粒子や物体が流体中を沈降する場合、レイノルズ数はその沈降速度を評価するのに用いられます。この場合のレイノルズ数は、物体の沈降速度、物体の代表的な寸法(例えば直径)、流体の密度と粘性を基に計算されます。これにより、粒子の沈降速度や流体中での挙動を理解し、適切な工程や装置を設計するのに役立ちます。

 

充填層におけるレイノルズ数の定義

充填層(固体粒子で満たされた容器を通る流体の流れ)におけるレイノルズ数は、化学工学やプロセス工学で重要な役割を果たします。この状況では、レイノルズ数は流体の速度、粒子の特徴的な寸法(例えば直径)、流体の密度と粘度を用いて計算されます。この数値により、流体の流れが層流か乱流かを判断し、充填層内での熱伝達や物質移動の効率を評価するのに役立ちます。

 

攪拌槽におけるレイノルズ数の定義

攪拌槽は化学反応や混合プロセスにおいて広く使用されており、この環境でのレイノルズ数は、流体の挙動や混合効率を評価するのに不可欠です。攪拌槽におけるレイノルズ数は、攪拌器の速度、攪拌器の特徴的な寸法(例えば直径)、流体の密度と粘度を用いて計算されます。この数値により、攪拌による流れが層流か乱流かを判断し、攪拌の効果や混合の均一性を理解するのに役立ちます。

 

レイノルズ数の物理的な意味


レイノルズ数の物理的な意味:流れの性質の判断

レイノルズ数は、流体の流れが主に粘性力(内部摩擦)によって支配される層流か、それとも慣性力(流体の質量による影響)によって支配される乱流かを判断するために使用されます。レイノルズ数が低い場合、流れは層流であると考えられ、高い場合は乱流になりやすいです。この判断は、流体の流れの挙動を予測し、工学的設計や解析において重要な意味を持ちます。

 

レイノルズ数の物理的な意味:流れの相似性の評価

レイノルズ数は、異なるスケールや条件での流れの相似性を評価するために使用されます。例えば、実験室のモデル実験と実際の大規模なシステムの流れが同じレイノルズ数を持つ場合、それらの流れの挙動は類似していると見なすことができます。この原理は、実験データを実際の状況に適用する際に役立ちます。

 

レイノルズ数の物理的な意味:乱流遷移の指標

レイノルズ数は、流れが層流から乱流へと遷移するポイントを決定するのに役立ちます。特定のレイノルズ数を超えると、流れは乱流になりやすいとされています。この知識は、流体の流れを制御し、効率的なシステム設計や運用において非常に有用です。

 

レイノルズ数の物理的な意味:流体の挙動の予測

レイノルズ数は、特定の流体の流れの挙動を予測する際にも使用されます。例えば、管内流れや翼周りの流れなど、特定の条件下での流体の速度、圧力損失、乱流の強度などを予測するのに役立ちます。

 

レイノルズ数の物理的な意味:流体の力学的特性の理解

レイノルズ数は、流体の力学的特性を理解するための重要なツールです。流体の密度、粘性、流速、代表的な長さなどを考慮することで、流体の挙動や力学的特性をより深く理解することが可能になります。これは、工学的設計や科学的研究において、流体の挙動を正確に把握する上で非常に重要です。

 


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レイノルズ数が活用されている分野


レイノルズ数が活用されて...

レイノルズ数とは?特徴と定義を紹介


レイノルズ数は流体力学の重要な無次元数で、流れが粘性力か慣性力に支配されるかを判断するのに使用されます。
この記事では、レイノルズ数の定義、特徴、歴史、および様々な応用領域について詳しく説明し、流体力学、航空力学、船舶工学、生理学などでの活用を紹介します。

 

レイノルズ数とは?

レイノルズ数は、流体の流れの特性を評価するために使用される無次元数です。流体力学において非常に重要な概念であり、流れの挙動が主に粘性力によるものか、それとも慣性力に支配されるかを判断するのに役立ちます。レイノルズ数が高い場合、流れは乱流(不規則で不安定)になりやすく、低い場合は層流(規則的で安定)の傾向があります。

 


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レイノルズ数の歴史

レイノルズ数は、1883年にオズボーン・レイノルズによって導入されました。レイノルズは、流れの性質を理解するための実験を行い、流れが乱流になる特定の条件を発見しました。この発見は、流体の動きを理解し、様々な工学的応用に役立てる重要な基盤となりました。

 

レイノルズ数の特徴紹介


特徴紹介 次元解析に有用

レイノルズ数は次元解析において重要な役割を果たします。これは、異なるスケールや条件での流れを比較する際に、無次元数として使用されるためです。これにより、小規模な実験から得られたデータを、より大きな実際の状況に適用することが可能になります。

 

特徴紹介 異なる流れ領域の特徴づけに利用

レイノルズ数は、流れが層流か乱流かを判断するのに用いられます。例えば、管内流れにおいては、レイノルズ数が約2000未満では層流、それ以上では乱流が発生するとされています。このように、レイノルズ数は流体の流れの性質を区分けするのに役立ちます。

 

レイノルズ数の定義とは


レイノルズ数の定義式

レイノルズ数は、次の式で定義されます:

Re=ρuL/μ
 
 ここで、
ρは流体の密度、
uは流体の速度、
Lは代表的な長さ(例えば管の直径)、そして
μは流体の粘度です。
この式は、流体の慣性力と粘性力の比率を示しており、流れの性質を理解するのに役立ちます。

 

レイノルズ数の定義式を変形させた場合

レイノルズ数の定義式を変形させた場合、次のように表現されます



Re はレイノルズ数です。
u は流体の速度(単位は m/s)です。
L は代表的な長さ(例えば管の直径など、単位は m)です。
ν は動粘性係数(粘度を密度で割ったもの、単位は m²/s)です。
これは慣性力(分子)と粘性力(分母)の比と読みかえることができ、さらには全体の運動量輸送と分子の運動量輸送の比としても考慮することができます。
動粘性係数 ν を使用して、レイノルズ数をより直接的に表現しています。この形式は、特に粘度と密度が既知の流体に対して、レイノルズ数を計算する際に便利です。レイノルズ数のこの表現は、流体の慣性効果と粘性効果の比較を簡潔に示し、流れの性質を評価するのに役立ちます。

 

配管内の流れにおけるレイノルズ数の定義

配管内の流れにおいて、レイノルズ数は一般的に次のように定義されます。

 水力直径

 体積流量(m3/s)

  配管の断面積(m2)

 

四角、長方形、または高さと幅が等しい環状ダクトのような形の場合

四角、長方形、または高さと幅が等しい環状ダクトのような形においては、内部流れの状態に対する特性長さLには次のように定義される水力直径DH が使われます。

 配管の断面積(m2)

 潤辺(m)

水路における潤辺は断面で見た場合の水路と流れが接する周辺長さの合計のことです。
これは、水が空気にさらされる部分の長さは潤辺に含まないことを意味します。

 

チューブインチューブ方式の熱交換器の外部管のような環状ダクトの場合

円管の満水流れにおいては、水力直径は数学的に示される通りの配管の内径に一致します。

チューブインチューブ方式の熱交換器の外部管のような環状ダクトでは、水力直径は次の式に帰着することが代数的に示すことができます。

 外部管の内径

 内部管の外径

 

非円形ダクト内の流れを含む計算においては、水力直径は十分な精度で円形ダクトの直径に置き換えることができます。

 

平行2平板間の流れにおけるレイノルズ数の定義

平行な2つの平板間を流れる流体に関して、レイノルズ数は流体の動きを評価するのに用いられます。この場合、代表的な長さは平板間の距離となります。レイノルズ数は、平板間を流れる流体の速度、平板間の距離、流体の密度と粘度を考慮して計算されます。この数値により、流れが層流か乱流かを判断でき、さらに流体の圧力損失や熱伝達の特性を予測するのに役立ちます。

 

開水路流れにおけるレイノルズ数の定義

開水路流れにおけるレイノルズ数は、川や運河などの自然水系や人工水路における流体の挙動を理解するのに使われます。この場合のレイノルズ数は、水の流速、水路の特徴的な寸法(例えば水深や水路の幅)、水の密度と粘性を考慮して計算されます。この値により、流れが層流か乱流かを判断し、河川工学や灌漑システムの設計において重要な指標となります。

 

翼型まわりの流れにおけるレイノルズ数の定義

翼型(航空機の翼や風車のブレードなど)周りの流れにおけるレイノルズ数は、航空力学や風力工学において非常に重要です。この場合のレイノルズ数は、流体(通常は空気)の速度、翼型の代表的な長さ(例えば翼弦長)、空気の密度と粘性を用いて計算されます。レイノルズ数により、翼型周りの流れが層流か乱流かを判断し、翼の性能や流れの挙動を理解するのに役立ちます。


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流れの中の障害物におけるレイノルズ数の定義

流れの中の障害物におけるレイノルズ数は、障害物周囲の流体の挙動を評価するために用いられます。この際、障害物の特徴的な寸法(例えば球の直径)と流れの速度、流体の密度と粘性を考慮して計算されます。レイノルズ数によって、流体が障害物周りで層流か乱流かを判断し、抵抗や揚力などの力学的特性を理解するのに役立ちます。


流れの中の球の場合

球体を取り巻く流れにおけるレイノルズ数は、球体の周囲での流体の挙動を分析する際に使用されます。この場合、レイノルズ数は流体の速度、球体の直径、流体の密度と粘度を用いて計算されます。レイノルズ数により、流れが球体の周りで層流か乱流かを判断し、流れによる抵抗や揚力の特性を理解するのに役立ちます。

 

流れの中の楕円体の場合

楕円体周りの流れに関しても、レイノルズ数が重要です。この場合、代表的な長さは楕円体の主軸の長さや短軸の長さなどになります。レイノルズ数は、流体の速度と楕円体のサイズ、流体の特性を考慮して計算され、流れの性質と楕円体にかかる力を評価するのに使用されます。

 

沈降速度の場合

粒子や物体が流体中を沈降する場合、レイノルズ数はその沈降速度を評価するのに用いられます。この場合のレイノルズ数は、物体の沈降速度、物体の代表的な寸法(例えば直径)、流体の密度と粘性を基に計算されます。これにより、粒子の沈降速度や流体中での挙動を理解し、適切な工程や装置を設計するのに役立ちます。

 

充填層におけるレイノルズ数の定義

充填層(固体粒子で満たされた容器を通る流体の流れ)におけるレイノルズ数は、化学工学やプロセス工学で重要な役割を果たします。この状況では、レイノルズ数は流体の速度、粒子の特徴的な寸法(例えば直径)、流体の密度と粘度を用いて計算されます。この数値により、流体の流れが層流か乱流かを判断し、充填層内での熱伝達や物質移動の効率を評価するのに役立ちます。

 

攪拌槽におけるレイノルズ数の定義

攪拌槽は化学反応や混合プロセスにおいて広く使用されており、この環境でのレイノルズ数は、流体の挙動や混合効率を評価するのに不可欠です。攪拌槽におけるレイノルズ数は、攪拌器の速度、攪拌器の特徴的な寸法(例えば直径)、流体の密度と粘度を用いて計算されます。この数値により、攪拌による流れが層流か乱流かを判断し、攪拌の効果や混合の均一性を理解するのに役立ちます。

 

レイノルズ数の物理的な意味


レイノルズ数の物理的な意味:流れの性質の判断

レイノルズ数は、流体の流れが主に粘性力(内部摩擦)によって支配される層流か、それとも慣性力(流体の質量による影響)によって支配される乱流かを判断するために使用されます。レイノルズ数が低い場合、流れは層流であると考えられ、高い場合は乱流になりやすいです。この判断は、流体の流れの挙動を予測し、工学的設計や解析において重要な意味を持ちます。

 

レイノルズ数の物理的な意味:流れの相似性の評価

レイノルズ数は、異なるスケールや条件での流れの相似性を評価するために使用されます。例えば、実験室のモデル実験と実際の大規模なシステムの流れが同じレイノルズ数を持つ場合、それらの流れの挙動は類似していると見なすことができます。この原理は、実験データを実際の状況に適用する際に役立ちます。

 

レイノルズ数の物理的な意味:乱流遷移の指標

レイノルズ数は、流れが層流から乱流へと遷移するポイントを決定するのに役立ちます。特定のレイノルズ数を超えると、流れは乱流になりやすいとされています。この知識は、流体の流れを制御し、効率的なシステム設計や運用において非常に有用です。

 

レイノルズ数の物理的な意味:流体の挙動の予測

レイノルズ数は、特定の流体の流れの挙動を予測する際にも使用されます。例えば、管内流れや翼周りの流れなど、特定の条件下での流体の速度、圧力損失、乱流の強度などを予測するのに役立ちます。

 

レイノルズ数の物理的な意味:流体の力学的特性の理解

レイノルズ数は、流体の力学的特性を理解するための重要なツールです。流体の密度、粘性、流速、代表的な長さなどを考慮することで、流体の挙動や力学的特性をより深く理解することが可能になります。これは、工学的設計や科学的研究において、流体の挙動を正確に把握する上で非常に重要です。

 


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レイノルズ数が活用されている分野


レイノルズ数が活用されている分野紹介 流体力学

レイノルズ数は、流体力学の分野で広く活用されています。この数値は、流れの特性を理解し、管内流れ、開水路流れ、境界層流れなど、多様な流体システムの設計と解析に不可欠です。レイノルズ数により、流れの挙動や圧力損失、熱伝達率などを予測できます。

 

レイノルズ数が活用されている分野紹介 航空力学

航空力学では、レイノルズ数が航空機の翼や胴体周りの流れを分析するのに重要です。この数値は、航空機の性能、特に揚力と抗力のバランスを理解するのに役立ちます。また、風洞実験や飛行試験のデータを解釈する際にも重要な役割を果たします。

 

レイノルズ数が活用されている分野紹介 船舶工学

船舶工学において、レイノルズ数は船体や推進器周りの流れの分析に用いられます。この数値により、船の抗水力や効率的な船体設計が可能になり、燃費の最適化や船舶の安定性の向上に寄与します。

 

レイノルズ数が活用されている分野紹介 生理学

生理学の分野では、レイノルズ数が血流動態の解析に利用されます。血管内の血液流れの特性を理解し、動脈硬化や血栓形成などの病態生理の解明に寄与しています。また、人工心臓や血管ステントの設計においても重要な指標となっています。

 

 

レイノルズ数の式の導出


レイノルズ数の式の導出紹介 バッキンガムのΠ定理

レイノルズ数の式の導出には、バッキンガムのΠ定理が使用されます。この定理は次元解析に基づいており、物理的な現象に関連する変数間の関係を無次元数で表す方法を提供します。レイノルズ数の場合、流体の速度、特徴的な長さ、密度、粘性などの変数が考慮され、これらの変数を組み合わせて無次元数であるレイノルズ数が導出されます。

バッキンガムのΠ定理とは

バッキンガムのΠ定理は「物理現象を表すパラメータの個数がn、そこに現れる単位(次元)の種類がmの場合、n-m個の無次元量π1,...,πn-mと関係式fが存在し

 と書ける」という定理です。

 

流体(圧縮性の流体)運動の現象を表すパラメータは以下の6つです

密度ρ
粘性μ
音速a
圧力p
平均速度V
特性長さD

(単位はkg、m、sの3種類です。)

したがってΠ定理より、6-3=3つの無次元量が存在することが分かります。

これらのパラメータを組み合わせて作られる無次元量には通常レイノルズ数Re、マッハ数Maおよび圧力を無次元化した圧力係数ψ:

をとり、関係式には

を多くの場合とります。

 

流体を非圧縮性と仮定した場合は、音速a→∞であることから、マッハ数Maを考える必要がありません。これにより関係式は

 

レイノルズ数の式の導出紹介 ナビエ-ストークス方程式

レイノルズ数はナビエ-ストークス方程式(非圧縮性で外力なし)を無次元形に変形することで、方程式を支配する唯一のパラメータとして得ることができます。

上式中の各項は、体積力(単位体積当たりの力、N/m3)、もしくは同等な表現として、加速度と密度の積(m/s2kg/m3)の単位を持っています。 物理的サイズに直接的によらない形の式を得るため、方程式を無次元化します。

無次元式を得るひとつの方法として次の係数を式全体に掛ける方法があります

 平均速度 または 流体との相対速度(m/s)

 特性長さ(m)

 流体密度(kg/m3)

ここで次のように各物理量を無次元化します

これにより、ナビエ-ストークス方程式を次の無次元化された方程式に書き直すことができます。

この式にはパラメータが右辺第2項にしか現れていません。このパラメータを以下のように書き換え、レイノルズ数と定義します

そして、数式を読みやすさを向上させるためにプライムを省いてリライトすると以下のようになります。

この式はパラメータとしてレイノルズ数Re しか持ちません。従って同じレイノルズ数を持ち、かつ境界条件も相似形である流れは数学的に全て同等です。

上記の式でRe → ∞のとき、粘性項が消えます。したがって、高レイノルズ数流れはおよそ非粘性の自由流れと同じとなります。

 

まとめ

この記事では、レイノルズ数の概念、その歴史、定義、そして様々な応用について詳細に説明しました。レイノルズ数は流体力学の基本的な概念であり、流れの性質を理解するのに不可欠です。この数値によって、流体の流れが層流か乱流かを判断し、さまざまな工学的応用において重要な意思決定を行うことができます。

また、レイノルズ数の物理的な意味やその導出方法についても説明し、流れの相似性や乱流遷移の指標としての役割についても触れました。さらに、レイノルズ数が流体力学、航空力学、船舶工学、生理学など多岐にわたる分野でどのように活用されているかを紹介しました。

この情報は、流体の挙動を理解し、さまざまな流れの状況を評価する上で役立つでしょう。レイノルズ数の概念は、工学や科学の分野で広範な応用を持つ基本的なツールであり、それを理解することは多くの専門家にとって重要です。

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この記事の著者

大岡 明

改善技術(トヨタ生産方式(TPS)/IE)とIT,先端技術(IoT,IoH,xR,AI)の現場活用を現場実践指導、社内研修で支援しています。

改善技術(トヨタ生産方式(TPS)/IE)とIT,先端技術(IoT,IoH,xR,AI)の現場活用を現場実践指導、社内研修で支援しています。


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