イノベーションの創造 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その133)

 

【この連載の前回:普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その132)へのリンク】

現在「切り取った知識の重要部分を発想するフレームワークを使って、イノベーションを発想する」にむけて、日々の活動の中でどうイノベーションを創出するかについて、解説しています。前回はナッジという言葉で表した、「踏み出すこと・踏み出そうとすることで発生する直接的な金銭的コスト」をあらかじめ負担し、リスクテイクを促進する仕組みについて、アドビのキックボックスを例に挙げ解説しました。今回は、踏み出した「後」に、チャレンジを複数することにより一定の確率で発生する失敗の金銭的コストの主体的対処について、解説をします。

 

◆関連解説『技術マネジメントとは』

●プロジェクトの失敗の金銭的コストを事前に織り込みリスクテイクを促進

チャレンジングなプロジェクトは、その性質上、チャレンジングであるゆえ全て成功するわけではありません。逆に、手掛けたプロジェクトがすべて成功するようでは、むしろそれらはチャレンジとは呼べないハードルの低いプロジェクトと考えられます。ある一定の確率で失敗が発生するような、プロジェクト(群)にチャレンジしなければなりません。

 

チャレンジを効果的にマネジメントするには、失敗のコストを事前に織り込み、それを積極的に受け入れる仕組みを用意しておくことが重要です。金銭面で言えは、あらかじめ失敗によるコストを、予算として見込んでおくということです。それにより、企業におけるリスクテイクへのハードルを各段に下げ、チャレンジを多いに促進することができます。

 

●初期段階では、各プロジェクトへの投入金額は低く抑える:リアルオプション

失敗のコストは大きくしてはなりません。そこでの工夫が、リアルオプションです。

 

リアルオプションとは、一つのプロジェクトのプロセスを複数のフェーズに分け、初期には少額の投資によりまずやってみて、うまくいったら次に進め、だんだん投資額を増やしていくというものです。

 

リアルオプションのポイントは、不確実性の高い初期段階では、まず少額の投資でとりあえずやってみる。仮にうまく行かなくても、少額の投資なので、失敗のコストは小さく抑えられる。また、とりあえずなにか活動を行えば、不確実性を確実に低減することができます。その結果、うまくいった場合は、次のフェーズでは不確実が低減していますので、投資額を増やしても良いというものです。

 

●とりあえずちょっとやってみて、失敗してもそのコストを許容する

「とりあえずちょっとやってみて」、仮にその試みがうまくいかなくても、その「小さな」コストは許容する心づもりをするということです。

 

個人の場合には、

行ってみる

などの活動をするということです。

 

●人間は失敗のコストを過大に見積もる傾向がある

人間はそもそも失敗のコストを過大に見積もり、また一方で、チャレンジしたことで得られるメリット(やってみれば成功する「かもしれない」ことと、失敗してもそこから学べることの2つのメリット)を、過少評価する強い傾向があるように思えます。

 

以上のように、失敗のコストを実質的に低減し、また同時にチャレンジして得られることに目を向けることで、チャレンジを多いに促進することができます。

次回に続きます。

 

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