磁性体と磁気をわかりやすく解説

 

 

1.磁性体とは

その材質に外部から磁界をかけたとき、材質内部が強く磁化する、つまり強く磁気を帯びるとき、その材質を強磁性体と呼びます。そして外部磁界を取り除いても磁化が多く残るものを硬磁性体と呼びます。磁石は硬磁性体といえます。また外部磁界を取り除いたらほとんど磁化が残らないものを軟磁性体と呼びます。鉄やニッケルなどは軟磁性体です。

磁性体

一方、外部磁界をかけた時にごく弱く磁化するものがあり、それを常磁性体と呼びます。空気やアルミなどは常磁性体です。また、外部磁界をかけたときにわずかですが反対方向に磁化するものがあります。それは反磁性体と呼びます。水、銅、亜鉛がそうです。

磁性体

では、なぜ物質によって磁気を帯びたりするのでしょうか。磁気とは何なのでしょうか。

 

2.磁気とは

磁気とは磁石に吸いよせられたり、反発したり、磁界中で力を受けたりすることを言いますし、磁界とはそういう力を与えるポテンシャルを言います。では磁気の源は何でしょうか。磁気の源は電子のスピンです。スピンには原子核の周りを回る公転と自分が回る自転がありますが、自転が支配的です。 たくさんある電子スピンの向きが偏っていると磁気を帯びますし。偏ってないと帯びないということになります。

磁性体

3.強磁性体になるわけ

⑴原子の構造と電子の収容ルール

原子には原子核とその周囲を回転運動する電子からなることはご存じと思います。個々の電子はルールによって軌道配置されており、決められた軌道内を運動します。また各軌道は殻(カク)とよばれる軌道の収容場のようなものに収容されています。

 

そもそも原子核の周りには原子番号が増えるに従い、K殻、L殻、M殻、N殻・・・が配置されています。そしてK殻にはS軌道が一つ存在できます。S軌道には電子2つまで入ることができますので。K殻1つでHとHeに対応できます。原子番号3になりますと、K殻にはもう電子が入りませんのでL殻ができ、L殻に入っていきます。L殻には電子が2つまで入庫できるS軌道に加えp軌道というものが加わります。p軌道は3つの直交する軌道からなり各軌道には電子2個入庫できますので、最大3×2=6個の電子が入庫できるということになります。

 

先ほど言いましたK殻のS軌道は1番目なので1S軌道といい、L殻のS軌道は2S軌道、p軌道は2p軌道ということになっています。ですからK殻+L殻で電子は2+(2+3×2)=10個収容できます。原子番号10のNeまでですね。

 

さらに原子番号は増えると次はM殻に入っていきます。M殻には電子2個の3S軌道、電子3×2個の3p軌道、に加え3d軌道を持っています。d軌道には5つの軌道があり各軌道には電子2個入庫できますので5×2=10個入庫できます。M殻には2+(3×2)+(5×2)=18個の電子が収容できることになります。M殻のそとにはさらにN殻が配置されます。

 

磁性体

 

【電子殻への電子配置】

通常は原子番号の順にエネルギー順位の低い殻の内側から順序よく埋まっていき、電子は逆向きのスピンがペアになるよう入っていくので、磁気モーメントは小さい。

磁性体

⑵ルール破りな遷移金属

M殻の3p軌道がいっぱいになったら3d軌道にいくかと思いきや、エネルギー順位はわずかにN殻の4s軌道のほうが小さいため、3d軌道ではなく4s軌道に電子は埋まって...

 

 

1.磁性体とは

その材質に外部から磁界をかけたとき、材質内部が強く磁化する、つまり強く磁気を帯びるとき、その材質を強磁性体と呼びます。そして外部磁界を取り除いても磁化が多く残るものを硬磁性体と呼びます。磁石は硬磁性体といえます。また外部磁界を取り除いたらほとんど磁化が残らないものを軟磁性体と呼びます。鉄やニッケルなどは軟磁性体です。

磁性体

一方、外部磁界をかけた時にごく弱く磁化するものがあり、それを常磁性体と呼びます。空気やアルミなどは常磁性体です。また、外部磁界をかけたときにわずかですが反対方向に磁化するものがあります。それは反磁性体と呼びます。水、銅、亜鉛がそうです。

磁性体

では、なぜ物質によって磁気を帯びたりするのでしょうか。磁気とは何なのでしょうか。

 

2.磁気とは

磁気とは磁石に吸いよせられたり、反発したり、磁界中で力を受けたりすることを言いますし、磁界とはそういう力を与えるポテンシャルを言います。では磁気の源は何でしょうか。磁気の源は電子のスピンです。スピンには原子核の周りを回る公転と自分が回る自転がありますが、自転が支配的です。 たくさんある電子スピンの向きが偏っていると磁気を帯びますし。偏ってないと帯びないということになります。

磁性体

3.強磁性体になるわけ

⑴原子の構造と電子の収容ルール

原子には原子核とその周囲を回転運動する電子からなることはご存じと思います。個々の電子はルールによって軌道配置されており、決められた軌道内を運動します。また各軌道は殻(カク)とよばれる軌道の収容場のようなものに収容されています。

 

そもそも原子核の周りには原子番号が増えるに従い、K殻、L殻、M殻、N殻・・・が配置されています。そしてK殻にはS軌道が一つ存在できます。S軌道には電子2つまで入ることができますので。K殻1つでHとHeに対応できます。原子番号3になりますと、K殻にはもう電子が入りませんのでL殻ができ、L殻に入っていきます。L殻には電子が2つまで入庫できるS軌道に加えp軌道というものが加わります。p軌道は3つの直交する軌道からなり各軌道には電子2個入庫できますので、最大3×2=6個の電子が入庫できるということになります。

 

先ほど言いましたK殻のS軌道は1番目なので1S軌道といい、L殻のS軌道は2S軌道、p軌道は2p軌道ということになっています。ですからK殻+L殻で電子は2+(2+3×2)=10個収容できます。原子番号10のNeまでですね。

 

さらに原子番号は増えると次はM殻に入っていきます。M殻には電子2個の3S軌道、電子3×2個の3p軌道、に加え3d軌道を持っています。d軌道には5つの軌道があり各軌道には電子2個入庫できますので5×2=10個入庫できます。M殻には2+(3×2)+(5×2)=18個の電子が収容できることになります。M殻のそとにはさらにN殻が配置されます。

 

磁性体

 

【電子殻への電子配置】

通常は原子番号の順にエネルギー順位の低い殻の内側から順序よく埋まっていき、電子は逆向きのスピンがペアになるよう入っていくので、磁気モーメントは小さい。

磁性体

⑵ルール破りな遷移金属

M殻の3p軌道がいっぱいになったら3d軌道にいくかと思いきや、エネルギー順位はわずかにN殻の4s軌道のほうが小さいため、3d軌道ではなく4s軌道に電子は埋まっていきます。そのあと3d軌道に電子が入っていきます。

磁性体

今までは電子スピンは正方向が来たら次は負方向と順番にバランスよく軌道に埋まっていきましたが、21Scからはそうはいきません。21番から25番までは5つの軌道に同じスピンの方向でどんどん入ってきます。それから26番から30番まで反対向きの電子が入ってくる。ということです。つまり21番から29番のところが非常にスピンモーメントがアンバランスな形になります。それを遷移金属と呼びまして同じような性質を持っています。このうち26Fe、27Co、28Niなどが強磁性の性質を持ちます。

磁性体

 

 

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この記事の著者

岩瀬 栄一郎

メカトロ製品など原理開発から構造設計まで競争力ある製品へと育てませんか。設計根拠を大切にし、工法を考慮した、性能、品質の作りこみをしていきます。

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