位置関係-3 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その106)

 

 現在、KETICモデルの中の「知識・経験を関係性で整理する」を解説しています。前回からは、KETICモデルの中の空間的な「位置(関係)で整理する」を解説しています。今回も引き続きこの解説をします。

◆関連解説記事『技術マネジメントとは』

 

1. 位置関係が示すアナロジー

 この位置関係のことを考えていると、もとは空間的な位置関係から出発しているのですが、それがアナロジー的に他の意味を持つようになるという発見があります。例えば、東西が政治体制の西側(資本主義)、東側(共産主義)を意味するというようなことです。

 この連載の目的は、イノベーションを起こすことが目的ですので、位置の分類においても、もとの空間的な位置関係を超えて、広く発想することで、発想の方向性(次回解説予定)の対象は広がりますので、その点から重要です。

 今回はこの空間的位置関係から生まれるアナロジーを考えてみます。

 

2. 位置関係が示すアナロジーの例

 位置関係を示す言葉から、アナロジー的に他のことを意味する例として以下があります。

(1)左右

 左右は位置的な関係を示しているものですが、そこから思想の傾向を示す言葉として、右翼や左翼などの言葉も発生しています。なぜ保守的な思想が右で進歩的思想が左というかは、フランス革命時代の議会の建物での両方の思想を持つ政治家の座っていた位置(右翼・左翼)に由来するそうです。

(2)南北

 南北問題などという言葉があります。南に位置する国は貧しく、天然資源などの所与のものに依存をしている一方で、北に位置する国は豊かで人的資源に依存をしているというものです。また英語にgo southという言葉がありますが、文字通りの意味は南に行くという意味ですが、状況が悪化するなどを意味します。つまり英語圏の人たちは、北は良くて南は悪いとイメージをもっている、もっていたということではないかと思います。

(3)上下

 上下関係、上から目線、下々の者、上意下達など、上下という空間の位置関係の言葉は、人間の置かれた非空間的な関係の中でも良く使われます。

(4)遠近

 遠縁の者(どこか遠ざけるようなニュアンスがある)、近親者だけで(同じ価値観を共有するというニュアンスがある)などと、遠くのものは異質なもので、ネガティブなものと認識され、一方で近いものは同じ価値を共有するものでポジティブにとらえる強い傾向があるように思えます。

 

3. 空間的位置関係が示すアナロジーの面白さ

 人間は常になんらかの空間の中に存在していて、それが抽象的なものであっても、空間的な位置関係性は認識・直観しやすいということがあります。そのため、空間的な位置づけを一つのキーワードや象徴と...

して、他のことを意味させるということが頻繁に起こるのではないでしょうか。

 またそのもとの空間的な位置関係は絶対的なものであり、それと関連付けて考えられるようになったアナロジーとしての認識は、強く固定観念として人間の心理の中に固着しているように思えます。

 そのような関係性を他のまったく別の分野に当てはめて、そこから何か従来になかった思考を試みる。また、その固定的観念をそのままの認識として放置するのではなく、何等かの変化を促したり、活用することでイノベーションに結び付けることができるように思えます。

 この解説は次回に行いたいと思います。

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