3D-CAD設計手法(S流)概論(その2)

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1. 概形設計:基準(データム)、用途、材料、肉厚、強度

 CAD操作も覚えたし、図面も基礎は学んだ、会社の仕様書も一通り見た。「さぁ設計を始めるぞ!」。しかし、恐らく最初の壁にぶつかるのではないでしょうか?「何したらいいのだろう?」、もしくは、ある程度経験を積まれた方々も「何からやっていこうか」、「今回は前と違うアプローチでやってみようか」。など、このように考えることは普通にあるのではないでしょうか?

 そうです。設計はどこから始めなければならないということはありません。その上で最初に取り決めておくべきこと、確認しておくことがありますので、今回はそのあたりを概形設計、もしくは概要設計として述べていこうと思います。もちろん、各企業でガイドラインを設けていると思いますので、その確認は必ず行ってください。

 ここでは主な項目を挙げています。無論、ほかにも最初から考えておくと、後々検討を進める際、後戻りが少なく済むこともありますが、その中でも私が大事だと考えている項目を下記に挙げました。

  • 基準
  • 用途(仕様)
  • 材料
  • 肉厚
  • 強度

2. 基準の位置はどこに!?

 基準は勝手に決めても、決めなくてもデータ作成はできてしまいます。しかしそうすると、後になればなるほど構成が分からなくなり、寸法設定や配置構成の間違いなどミスを誘発してしまいます。

 また、各部品やユニット、アセンブリなど構成ごとに基準すべき位置は異なっている可能性があります。つまり基準は部品として必要な基準と構成(ユニット、アセンブリ)として必要な基準ができることを配慮し、構成していきましょう。部品の基準はその部品の機能中心位置や、寸法測定の基準位置が部品の基準になり得ます。またユニットやアセンブリの中心でいえば、やはり機能の中心位置とすることになるでしょう。このあたりは各企業、または部署内でルール化していると思いますので、必ず確認や取り決めを行ってから設計をスタートするようにしてください。

 3D-CADデータ作成で、基準はデータムという名称(コマンド)になっています。どの位置を基準にするかは「設計=データ」となるようにモデリングすると良いと思います。

図1. 基準設定

3. 用途(仕様)は何だ!?

 設計するにあたり「用途や仕様は顧客から指示されるか、社内で企画され考えてから取り掛かるため、そんなことは知っている」という状態からスタートするものだと思っています。ただ、ここに落とし穴が生じることがあるため、敢えて項目として加えました。機器だとしたら、担当レベルでどこまで仕様を把握して取り掛かっているか、また各部品の仕様を把握しながら設計をスタートしているかについても、やはりチームとして一度、確認の意味も含めレビューを実施してみてはいかがでしょうか。もちろん暫定な部分もあるでしょうし、変更したい部分もあるかと思いますが、それらをチームとしてしっかりと共通認識にすることが大事です。

 特に仕様変更し、部品レベルで求められるものが変わった際、今までと同じ設計で進めていると気付かないまま、落とし穴にはまっていることもありますので最初、もしくは気付いた時点で確認することが大事です。

4. 材料、肉厚、強度~データを作っていく上での基礎中の基礎

 この3項目については、一纏(まと)めで説明します。まずは部品材料です。実は、材料は決定を後回しにしがちだったり、特に意識せず今までと同じ材料で考え始めたりするものですが、後で変更を余儀なくされることがありますので、その都度確認することが大事です。

 なぜ、暫定でも最初に決めておく方が良いかというと、材質で製造方法が変わることが多々あるからです。また後で述べる強度や重量の考慮が必要となるものですと、材料を決めておか...

 

1. 概形設計:基準(データム)、用途、材料、肉厚、強度

 CAD操作も覚えたし、図面も基礎は学んだ、会社の仕様書も一通り見た。「さぁ設計を始めるぞ!」。しかし、恐らく最初の壁にぶつかるのではないでしょうか?「何したらいいのだろう?」、もしくは、ある程度経験を積まれた方々も「何からやっていこうか」、「今回は前と違うアプローチでやってみようか」。など、このように考えることは普通にあるのではないでしょうか?

 そうです。設計はどこから始めなければならないということはありません。その上で最初に取り決めておくべきこと、確認しておくことがありますので、今回はそのあたりを概形設計、もしくは概要設計として述べていこうと思います。もちろん、各企業でガイドラインを設けていると思いますので、その確認は必ず行ってください。

 ここでは主な項目を挙げています。無論、ほかにも最初から考えておくと、後々検討を進める際、後戻りが少なく済むこともありますが、その中でも私が大事だと考えている項目を下記に挙げました。

  • 基準
  • 用途(仕様)
  • 材料
  • 肉厚
  • 強度

2. 基準の位置はどこに!?

 基準は勝手に決めても、決めなくてもデータ作成はできてしまいます。しかしそうすると、後になればなるほど構成が分からなくなり、寸法設定や配置構成の間違いなどミスを誘発してしまいます。

 また、各部品やユニット、アセンブリなど構成ごとに基準すべき位置は異なっている可能性があります。つまり基準は部品として必要な基準と構成(ユニット、アセンブリ)として必要な基準ができることを配慮し、構成していきましょう。部品の基準はその部品の機能中心位置や、寸法測定の基準位置が部品の基準になり得ます。またユニットやアセンブリの中心でいえば、やはり機能の中心位置とすることになるでしょう。このあたりは各企業、または部署内でルール化していると思いますので、必ず確認や取り決めを行ってから設計をスタートするようにしてください。

 3D-CADデータ作成で、基準はデータムという名称(コマンド)になっています。どの位置を基準にするかは「設計=データ」となるようにモデリングすると良いと思います。

図1. 基準設定

3. 用途(仕様)は何だ!?

 設計するにあたり「用途や仕様は顧客から指示されるか、社内で企画され考えてから取り掛かるため、そんなことは知っている」という状態からスタートするものだと思っています。ただ、ここに落とし穴が生じることがあるため、敢えて項目として加えました。機器だとしたら、担当レベルでどこまで仕様を把握して取り掛かっているか、また各部品の仕様を把握しながら設計をスタートしているかについても、やはりチームとして一度、確認の意味も含めレビューを実施してみてはいかがでしょうか。もちろん暫定な部分もあるでしょうし、変更したい部分もあるかと思いますが、それらをチームとしてしっかりと共通認識にすることが大事です。

 特に仕様変更し、部品レベルで求められるものが変わった際、今までと同じ設計で進めていると気付かないまま、落とし穴にはまっていることもありますので最初、もしくは気付いた時点で確認することが大事です。

4. 材料、肉厚、強度~データを作っていく上での基礎中の基礎

 この3項目については、一纏(まと)めで説明します。まずは部品材料です。実は、材料は決定を後回しにしがちだったり、特に意識せず今までと同じ材料で考え始めたりするものですが、後で変更を余儀なくされることがありますので、その都度確認することが大事です。

 なぜ、暫定でも最初に決めておく方が良いかというと、材質で製造方法が変わることが多々あるからです。また後で述べる強度や重量の考慮が必要となるものですと、材料を決めておかなければ計算ができないため、決めておくべき(CADデータにも反映させる)項目です。

 材質と共に考えるのが、肉厚とそこに追従する強度になります。これらは必ずワンセットで考える必要があります。また材質が全く異なるものになれば、製造方法や設計に配慮するポイントも変わってきます。例えばプラスチックと金属では全く違いますし、射出成形とプレス・切削では抜き勾配を配慮するべきか、という点でも変わってきます。このように設計の基本となる部分ですので、最初から配慮していくことで、やり直しを軽減することができます。

図2. 材料設定

図3. 肉厚設定

5. 3D-CADへの反映

 ここまでに挙げた項目をCADデータに当初から考慮&反映することで、後々の設計出戻りを軽減することができ、効率的に設計すると同時にCAE、計算、製造性の確認などを行う際、スムーズなやりとりを可能にすることができます。

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この記事の著者

鈴木 崇司

IoT機構設計コンサルタント ~一気通貫:企画から設計・開発、そして品質管理、製造まで一貫した開発を~

IoT機構設計コンサルタント ~一気通貫:企画から設計・開発、そして品質管理、製造まで一貫した開発を~


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