「3D-CAD」とは、キーワードからわかりやすく解説
1. 「3D-CAD」とは
CAD(Computer Aided Design)は、当初1980年代から2次元の手書き図面をデジタルデータに置き換えて再利用することを目的に普及し、今ではほとんどの設計でCADが使われています。 機械用、電気用、建設用、土木用などがあります。 さらに1990年代から2000年代にかけて、3次元化が進んだことで、単に製図のデジタル化に留まらず、組合せや意匠の評価などの確認、評価が可能になり、業務によっては設計効率が大幅に向上しました。
2. 「3D-CAD」の効果
3D-CADの導入(運用)効果の第一は見える化です。2D図面では、一角法、三角法と言った作図ルール(図学)を理解する所から始まり、形状や構造、機能(動作)を伝える為に、断面図や拡大図、詳細図を多用して、設計者の意図を伝えていました。
設計意図(開発意図)を伝える手段としては、難解で作図ルールを理解している人たちだけが、その情報を読み取れると言う状況だったのです。それが3D化=見える化によって、作図ルールを知らない人でも、一目瞭然と言う状況を作り出しました。開発、設計に携わらない人でも、形状、構造、機能を短時間で理解できると言う効果が有ります。
3D化には“空間認識”という効果もあり、新規設計(開発)された製品が使われる空間(エリア)、部品同士の位置、結合関係、他製品との連携と言った空間設計、干渉回避が可能で、2D図面では、見落としがちな干渉が3D化によって回避できます。配線、配管なども正確で無駄のない経路計算が出来る事で、部材の無駄を大幅に削減できます。質量、体積、面積、重心などは瞬時に計算できるのも3D-CADの効果で、より軽く、より丈夫な素材選定や素材コスト計算が瞬時にできます。
3. 製造プロセスとのダイレクトな連携
3D-CADがもたらす最大の変革の一つは、設計データと製造現場のプロセスとのシームレスな連携です。かつて、設計図面が完成した後、製造部門は2D図面を読み解き、NC(数値制御)工作機械用のプログラムを手動で作成する必要がありました。この「CADとCAM(Computer Aided Manufacturing)の壁」は、時間とコストを要し、ヒューマンエラーの原因ともなっていました。
しかし、現代の3D-CADシステムは、設計された3Dモデルから直接、加工に必要なNCプログラムを自動生成するCAM機能を内包、または緊密に連携するよう進化しています。これにより、モデルのわずかな変更も即座に製造データに反映され、リードタイム(開発期間)が劇的に短縮されました。また、3Dモデルは3Dプリンティング(AM:Additive Manufacturing)のデータとしてそのまま利用可能です。試作だけでなく、治工具や最終製品の一部までを直接出力できるようになったことは、複雑な形状の製造を容易にし、サプライチェーンに新たな柔軟性をもたらしました。
さらに、PLM(Product Lifecycle Management)システムとの統合により、3D-CADデータは単なる設計情報に留まらず、製造、検査、販売、保守に至るまでの製品ライフサイクル全体を通じて活用される「マスターデータ」としての役割を担っています。設計変更の履歴、使用された材料の情報、製造時の公差設定などが一元管理され、製品の品質向上とトレーサビリティの確保に貢献しています。
4. 高度化するシミュレーションと仮想環境の活用
3D-CADのもう一つの強力な進化は、CAE(Computer Aided Engineering)機能の劇的な向上です。かつての設計者は、試作品を作って物理的な試験を行うまで、製品が実際に機能するかどうかを完全に確認できませんでした。しかし、現在では、3Dモデル上で様々な物理現象を再現し、設計の妥当性を検証することが日常的に行われています。
- 構造解析: 部品にかかる力(応力)や変形を計算し、強度不足や剛性過多(重すぎること)を防ぎます。
- 熱流体解析: 製品内部や周囲の空気や液体の流れ、温度変化をシミュレーションし、冷却性能や燃費などを最適化します。
- 機構解析: 複数の部品の動きを定義し、干渉や動作不良がないかを検証し、複雑なメカニズムの動作を仮想的に確認します。
これらのシミュレーションを設計初期の段階で繰り返すことで、試作回数を大幅に削減し、開発コストを抑えることが可能になりました。また、ジェネレーティブデザインという新しい手法も登場しています。これは、設計者が与える「強度」「質量」「製造方法」などの要件に基づき、AIが最適な形状を自動的に生成するもので、人間の発想では生まれ得ない、驚くほど軽量で高強度な構造体を生み出すことが可能になっています。
5. 将来への展望と新しい設計のあり方
今後、3D-CADはVR(仮想現実)/AR(拡張現実)技術との融合が一層進むと考えられます。設計者は、モニター越しではなく、VRゴーグルを装着して実物大の3Dモデル空間に入り込み、直感的にデザインの検討やレビューを行うようになるでしょう。
また、BIM(Building Information Modeling)に代表されるように、建設・土木分野では、単体のモデル作成に留まらず、プロジェクトに関わる全ての情報(コスト、工程、維持管理データ)を3Dモデルに紐づけて管理する流れが主流となりつつあります。
3D-CADは単なる製図ツールではなく、デジタルツイン(現実世界の複製)を構築するための基盤技術へと進化しています。これにより、設計者はより創造的で、かつてないほど正確で効率的な製品開発を実現し続けています。
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