等価交換法の基礎と業務への活用

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1. 等価交換法とは

 みなさんは等価交換法をご存知でしょうか?正直、聞き慣れないワードだと思います。

 等価交換法とは、アイデア発想法の一つです。一般にアイデア発想法には、下図[1]に示すように発散思考と収束思考で構成されます。発散とは文字通り、目的に応じたアイデアを広く数多く生み出すことで、収束とは多数のアイデアから目的に応じた最良のものを導き出す活動です。

 発散思考の中では、ブレインストーミングに代表される自由発想法やオズボーンのチェックリストのようにキーワードをもとに行う強制発想法などがあります。この中で類比発想法と呼ばれる方法の一つが等価交換法となります。類比発想法は、類似性や同一性に着目しながら関連で結び、目的とした解を得る方法で、等価交換法以外にもシネクティクス法やNM法があり、目的に応じた使い分けがされています。

図. アイデア発想法


 今回紹介する等価交換法は、設定したテーマに対して、その対象と等価なものを探索し、置き換える方法です。非常にシンプルな発想法だと思いませんか?そうです、みなさんも日常で自然に行っているアイデア発想法なのです。

 それでは、等価交換法の手順を下記に示します。

  1. 対象テーマ、課題を設定する
  2. 対象テーマ、課題と等価なものを探し出す
  3. 等価なものを対象テーマや課題へと置き換える
  4. 置き換えたものを起点として、アイデアを膨らませる

 ここで等価交換法を使って、新しいデリバリーサービスを考えてみましょう。デリバリーを対象テーマすると、既存サービスには宅配サービスや食配サービス、タクシーなどがあります。デリバリーを個人の元へ直接、届ける事業として定義し、これと等価で新しいサービスを考えると、デリバリー対象は有形ではなく無形でも良いと発想できます。例えば、香りや高原などの新鮮な空気といった具合です。ほかにもモノや人のように固形である必要はなく、液状のものをデリバリーするとしたら温泉や健康茶といったアイデアが浮かびます。

 このように比較的、短時間でアイデアを発想したい場合において、等価交換法を活用すると良いでしょう。

2. ものづくり企業における等価交換法の活用法

 それでは、ものづくり企業の開発現場では、等価交換法をどのように活用すると良いでしょうか。下記に2つ紹介します。

 一つ目の活用先は、新商品や研究開発テーマの企画、アイデア発想です。
例えば、既存事業として医療機器向け樹脂材料を開発しているのであれば、人体へ悪影響がほとんど見られないという安全、信頼性が顧客価値です。では、医療機器と等価で安全、信頼性を重視する他の市場には、どのような業界があるでしょうか?例えば、自動車や航空機など人命にかかわる業界への応用が考えられます。樹脂材料が経年劣化しにくい、軽いという価値を持っていれば、その価値を別の業界に活用できないか、その業界で販売するためにはどのような研究開発テーマが必要となるか…という具合にブレイクダウンすることで等価交換法によるアイデア創出が活きてきます。

 2つ目の活用先は、組織マネジメントです。例えば、メンバーのモチベーションが低くなっているという課題に対して、動機付けをキーワードに等価となるものを探します。実際に私が行った活動では「動機付け」を「業務のゲーム化」、「社内専門家制度」と等価交換しました。動機付け=ゲームをクリアするように、業務をステップごとに細分化し、一つ達成するごとに得点をカウント、メンバー全員に周知しながら競う方法ですが、ゲーム好きなメンバーが多くいた組織で有効で...

 

1. 等価交換法とは

 みなさんは等価交換法をご存知でしょうか?正直、聞き慣れないワードだと思います。

 等価交換法とは、アイデア発想法の一つです。一般にアイデア発想法には、下図[1]に示すように発散思考と収束思考で構成されます。発散とは文字通り、目的に応じたアイデアを広く数多く生み出すことで、収束とは多数のアイデアから目的に応じた最良のものを導き出す活動です。

 発散思考の中では、ブレインストーミングに代表される自由発想法やオズボーンのチェックリストのようにキーワードをもとに行う強制発想法などがあります。この中で類比発想法と呼ばれる方法の一つが等価交換法となります。類比発想法は、類似性や同一性に着目しながら関連で結び、目的とした解を得る方法で、等価交換法以外にもシネクティクス法やNM法があり、目的に応じた使い分けがされています。

図. アイデア発想法


 今回紹介する等価交換法は、設定したテーマに対して、その対象と等価なものを探索し、置き換える方法です。非常にシンプルな発想法だと思いませんか?そうです、みなさんも日常で自然に行っているアイデア発想法なのです。

 それでは、等価交換法の手順を下記に示します。

  1. 対象テーマ、課題を設定する
  2. 対象テーマ、課題と等価なものを探し出す
  3. 等価なものを対象テーマや課題へと置き換える
  4. 置き換えたものを起点として、アイデアを膨らませる

 ここで等価交換法を使って、新しいデリバリーサービスを考えてみましょう。デリバリーを対象テーマすると、既存サービスには宅配サービスや食配サービス、タクシーなどがあります。デリバリーを個人の元へ直接、届ける事業として定義し、これと等価で新しいサービスを考えると、デリバリー対象は有形ではなく無形でも良いと発想できます。例えば、香りや高原などの新鮮な空気といった具合です。ほかにもモノや人のように固形である必要はなく、液状のものをデリバリーするとしたら温泉や健康茶といったアイデアが浮かびます。

 このように比較的、短時間でアイデアを発想したい場合において、等価交換法を活用すると良いでしょう。

2. ものづくり企業における等価交換法の活用法

 それでは、ものづくり企業の開発現場では、等価交換法をどのように活用すると良いでしょうか。下記に2つ紹介します。

 一つ目の活用先は、新商品や研究開発テーマの企画、アイデア発想です。
例えば、既存事業として医療機器向け樹脂材料を開発しているのであれば、人体へ悪影響がほとんど見られないという安全、信頼性が顧客価値です。では、医療機器と等価で安全、信頼性を重視する他の市場には、どのような業界があるでしょうか?例えば、自動車や航空機など人命にかかわる業界への応用が考えられます。樹脂材料が経年劣化しにくい、軽いという価値を持っていれば、その価値を別の業界に活用できないか、その業界で販売するためにはどのような研究開発テーマが必要となるか…という具合にブレイクダウンすることで等価交換法によるアイデア創出が活きてきます。

 2つ目の活用先は、組織マネジメントです。例えば、メンバーのモチベーションが低くなっているという課題に対して、動機付けをキーワードに等価となるものを探します。実際に私が行った活動では「動機付け」を「業務のゲーム化」、「社内専門家制度」と等価交換しました。動機付け=ゲームをクリアするように、業務をステップごとに細分化し、一つ達成するごとに得点をカウント、メンバー全員に周知しながら競う方法ですが、ゲーム好きなメンバーが多くいた組織で有効でした。動機付け=社内専門家は、メンバー一人ひとりに専門技術を設定し、担当技術について誰よりも(少なくとも社内No.1となる)知見を得るために社内・外活動をする施策です。こちらはメンバーの責任意識が芽生え、スキルアップと同時に積極性が生じた好例です。

 以上のように等価交換法は、課題となるテーマを設定し、課題解決のキーワードと等価であるものを探し、アイデアを膨らませる方法です。まれに、これは「等価の定義にあたらない」と「等価そのものを議論」してしまうケースを見掛けますが、好ましくありません。アイデア発想の一助として、ある意味で気楽に取り組み、気づいていないアイデアを発見する道具として活用してください。

 

[1] 問題解決手法の知識, 高橋 誠,日本経済新聞出版, 1999/1/12

◆関連解説『アイデア発想法とは』

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この記事の著者

川崎 響子

革新的なテクノロジー事業を最速&確実に量産まで立ち上げます。 世界No.1商品を創る企業を世の中に送り出し続けることが私の使命です。

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