中国工場の実状を知る 中国工場の品質改善(その38)

 前回のその37に続いて解説します。

【第3章】(自社)中国工場、品質管理の進め方

 
 
 

【3.6 中国工場での人材マネジメント】

◆ 定着している人を有効活用する

 定着してもらうようにいろいろな手立てをすることは大事ですし、必ずやらなければならないことです。一方で、定着してくれている人を中心に育て、活用するという考え方もあります。中国の労働者の流動性は日本と比べたら高いのは間違いありませんが、中国人全員が簡単に職場を変えるということでもありません。

 流動性の高い一番手は、単純作業者でしょう。この人たちは給与や仕事の内容など、よりよい条件のところに簡単に移ります。

 二番手は、大卒の若者たちでしょう。若い人は自分に自信があり、どこでも働けると思っているので、自身のキャリアアップに繋がるところさえあればすぐ転職してしまう傾向にあります。しかし、そんな中国人でも年齢を重ね自分のことが分かってくると自信も薄れ、30代半ばになると安定を求めるようになってきます。さらに年齢を重ね、ある程度の給与になった人は、他に行ったとしても同じ給与をもらえる可能性は低くなりますので転職率は低くなります。

 このほか、地元に住んでいる人や家(マンション)を持つ人も同様、転職率は低くなります。特に結婚して家がある女性などの定着率は高いといえます。

 このように定着してくれる人は誰なのかを見極め、そうした人たちを育てていくことを考えてみてください。とても優秀ということはないかもしれませんが、日本企業は、超優秀な人よりも長く働いてくれる人を戦力化する方が得意なのではないかと思います。

 ここでは、中国工場で中国人をマネジメントする立場の日本人に求められることについて記します。

(1)リーダーとして認知されること

 最初に必要なのは、中国人スタッフからリーダーとして認知されることです。中国現地スタッフは常にあなたを見ています。日本人のことを本当によく見ています。今度来た日本人はいったいどれくらい出来る人なのか値踏みしています。リーダー(トップ)として認知されるにはまず、自分の思いを語れるかが必要です。この工場をどういう工場にしたいのか、働いている従業員にはどうなって欲しいなど、ビジョンを示し、そのための行動を取ることが求められます。

 また、軸がぶれないことも大切です。判断の基準が常に同じであること、自分の思い、会社の方針に従って判断を下していることが求められます。その都度判断基準が変わって、言うことがその場しのぎになっていては信頼されません。

(2)困難にも逃げずに判断すること

 中国で生産をしていれば、いろいろなトラブルに遭遇します。それらトラブルが発生した時に逃げず、他人任せにしないで判断を下さないと信頼されません。

(3)片腕となる部下を持つこと

 当然のことながら中国人スタッフとのコミュニケーションが取れることは必須です。また、自分一人ですべてやることは出来ないので、部下に任せる度量、能力が大事になります。この時に、前述した片腕となる中国人スタッフを持つことがカギとなります。

(4)学習能力があること

 中国工場に行くと日本とは違うこと、例えば労務関係の法規や、日本では経験のない業務を行うことも少なくありません。そのような事にぶつかった場合、分からないものは分からないと認識し、中国...

人スタッフに聞いて確認することです。知ったかぶりは自分の首を絞めることになります。ただ、何回も同じことを聞くと中国人スタッフから覚えるつもりがないと思われてしまいますのでしっかり学習し、次からは確認しながらでも判断できるようになっていくことが大事です。

 また、分からないからといって中国人にすべてを任せるのではなく、要所要所でチェックを入れるようにしてください。この人はこの問題に詳しくはないが誤魔化しは利かないと中国人スタッフに思わせることです。そうしないと中国人は、好き勝手に動き出すことになります。

 次回は、中国人従業員のモチベーションの向上や管理者の育成についての事例です。

 【出典】根本隆吉 著 「中国工場の品質改善」 日刊工業新聞社発行、筆者のご承諾により抜粋を連載 

◆関連解説『生産マネジメントとは』

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