機械学習とフレーム問題

 
 近ごろ機械学習を勉強しながらそれを業務に活用するよう努力しているせいか、機械学習、もしくは人口知能(AI)に関する記事がよく目に留まるようになりました。よく「AI  によって将来無くなる仕事」といったような記事を目にするのですが、以前はそのような記事を読んでも単なる脅かし程度にしか思えなかったのですが、機械学習を知るようになってからはその根拠が少しずつ理解できるようになってきました。
 
 私の単純な理解では「フレーム問題の心配がない仕事は簡単に AI に置き換えることができるけれども、フレーム問題が発生するような仕事はそう簡単には AI に置き換えることができない」ということだと思います。
 
 フレーム問題とは、与えられた情報や条件の範囲内(枠組み: フレーム)の中でしか、人工知能は情報の処理ができない、ということです。人工知能技術の一つである機械学習などはその典型だと思います。
 
 
機械学習
 
 機械学習では過去のデータを統計処理してモデルを作り、そのモデルを使って将来を予測しようとします。問題は過去のデータ数も項目数も有限であり、機械学習はその枠組み(フレーム)内でしか学習できず、その枠組み(フレーム)に沿った予測しかできないということです。
 
 卑近な例では、リーンシックシグマのプロジェクトでプリント基板の開発期間を機械学習を使って予測しようとした時、使ったデータの項目数(パラメータ数)は 20 個ほど、データ数は 200 個程度でした。この過去のデータを学習してある程度の予測モデルを作ることはできましたが、正直にいって、優秀なプロジェクト・マネジャーの行程見積もりには到底敵いませんでした。プロジェクト・マネジャーは遥かに多くの複雑なデータを処理しているので、単純な機械学習が勝てるわけがありません。きっと将来プロジェクト・マネジャーが人工知能をツールとして使うことはあっても、人工知能に置き換わってしまうことはないと思います。
 
 機械学習のテクニックの一つに人工ニューラルネットワークというものがあります。脳細胞の特徴(ニューロンの結合)を活かして学習モデルを作るというものです。この人工ニューラルネットワークの賢さは、ニューロンの数に大きく影響を受けてしまいます。もしプリント基板の機械学習で人工ニューラルネットワークを使ったとしたら、そのニューロンの数はたった 20 個だけです。
 
 ウィキペディアに”動物のニューロンの数一覧”というのがありました。それと比較すると、プリント基盤の開発期間予測モデルは、線虫(ニューロン数 302 個)よりも劣ることになります。ましてやニューロン数 860億個の人間に勝てるわけがありません。
 
 では色々な記事が書いているように、本当に人口知能に置き換えることができる人間の仕事はあるのでしょうか。フレーム問題の心配がない仕事、つまり限られた情報だけを使って、例外事項がほとんどない機械的な仕事は近い将来人口知能に簡単に置き換えることができるでしょう。
 
 リーンシックスシグマの仕事はどうでしょうか。リーンシックスシグマの仕事は一言でいえば「問題を解決すること」です。定型的なものはなく、解決すべき問題はいつも大きく違います。そのたびに様々な情報を集めてそれを分析し、問題解決に活かしていきます。近い将来リーンシックスシグマの仕事が AI に置き換わってしまうことはないと思います。
 
 しかしリーンシックスシグマの仕事は AI によって大きく変わると思います。例えば問題の原因分析などは、これまでの経験や知識などに頼らずとも、 AI を使うことで的確な答えが簡単に得られるようになるかもしれません。リーンシックスシグマのデジタル化やビッグデータ化はすでに来ています。
 

この記事の著者

津吉 政広

リーンやシックスシグマ、DFSSなど、問題解決のためのフレームワークを使った新製品の開発や品質の向上、プロセスの改善を得意としています。「ものづくり」に関する問題を一緒に解決してみませんか?

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