市場知識 普通の組織をイノベーティブにする処方箋 (その34)

 
  
  
 前回まではKETICモデルの知識の3つの構成要素である、技術知識、市場知識、自社の強みの内、技術知識について解説してきました。今回から、市場知識についてです。
◆関連解説『技術マネジメントとは』
 

1. まったく新しい市場を対象とする場合の心構え

 
 良くまったく新しい分野のテーマに取組みたいが、その市場について全く知識がなく、途方に暮れているなどの悩みを聞く事があります。しかし、安心してください。大航海時代のコロンブスのような冒険者たちが、その当時の人間にとって未知の大海原に乗り出すのとは違います。
 
 その市場の情報や情報源は既に多く、そして必ず存在しています。だからこそ、その市場に乗り出すという仮説を持っているのですから。
 
 もちろん個人差や経験の差はあるとは思いますが、すでに社会人として多少の経験はしていて、また研究開発という思考を重視する活動を行ってきているのですから、少なくともそれなりの思考能力を持っている筈です。
 
 そうであれば、市場に関する地道な体系的な活動を行うことにより、その市場を知ることは十分できます。したがって、落ち着いて、そのような活動を一つ一つ確実に行うことです。
 

2. 市場を知るための手段

 
 それでは市場を知るための手段にはどのようなものがあるのでしょうか。
 

(1) 公開資料の活用

 
 まずは手っ取り早く、既に市場で公開されている資料を収集し、読むことです。
 

(2) 自ら市場を知るための積極的な活動を行う

 
 その上で、それら収集した公開情報に基づき、自ら積極的に行動し、思考することです。そこには2つの活動・思考があります。
 
 

(3) 調査会社に調査

 
 最後に自身の活動や思考では埋めきれないピンポイントの情報に関しては、その分野に通じた調査会社に調査をさせるということがあります。
 

3. 公開資料の活用

 
 まずは、公開資料の活用から解説をしたいと思います。その分野のテーマを選ぶための情報は、既に様々な情報源から得ているのですから、インターネット上、新聞・雑誌、書籍等、既に様々な情報が公開されている筈です。インターネット検索をすれば、公開資料そのもの、もしくはそのタイトルは網羅的に知ることができます。短時間でそのような情報を全て集めて、目を通しましょう。私がコンサルタントになりたてのころは、インターネットは活用されていませんでした。その時代に比べれば、極めて短期間で公開情報を入手することができます。その効果はまさに革命的です。
 
 公開情報を読む時に大事なのは、そこの書かれていることだけでなく、次のような点を意識して、深い思考をしながら読むことです。
 

(1) 自分のこれまで得た個人・社会人としての知識と自分の想像力を総動員して読むこと

 
 ・なぜこのようなことになっているのだろうか?きっとこのような理由があるのではないか?
 ・こういう場合こういう結果になる筈だが、これは間違いではないか?
 ・こうだとすると、こんな機会がありそうだが、そういうことはこの業界の人達は考えていないのだ...
ろうか?
 

(2) 個別の情報だけでなく、その市場の全体像を把握しようとして読むこと

 
 ・こういうことが事実だとすると、その他にも結果としてこんなことが考えられる。
 ・この市場はこんな市場セグメントから構成されているんだな。
 ・この市場全体には、こんな追い風があるんだな。向い風はなんだろうか?
 ・だとすると、今後こんなことも考えられるな。
 
 次回も引き続きこの解説を続けます。
 

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