製品設計:ミス防止対策(その4)

【製品設計:ミス防止対策 連載目次】

 前回のその3に続いて解説します。
◆関連解説『技術マネジメントとは』
 
 品質を分類すると、次の4分類になります。①企画品質、②設計品質、③製造品質、④使用品質、今回は、製品設計のミス防止対策として、②設計品質(具体設計段階で決まる品質)を解説します。
 

1. 設計の具体的な項目

 
 設計の主な項目を列挙します。
 
   ・設計インプット(商品仕様)を正しく理解
   ・設計アウトプット(図面)を検証
   ・過去に発生した問題のフィードバック
   ・製造牲、保守性も考慮した設計
   ・実際に試作して設計通りのものか確認する
 
 言わゆる設計品質が良い、悪いと言うのは、インプットに対してアウトプットが、正しいかどうかで決まります。インプットは、顧客との取り決めを文書にした仕様書を主体として、法規制、安全規格、社内設計規格などが相当します。また設計過程で得られるDR(デザインレビュー)からのフィードバック情報も含まれます。ミスや漏れが無い設計を行うには何が重要なポイントとなるのでしょうか。一つはヒューマンエラーを回避すること、もう一つは漏れのない設計ステップを踏むことです。
 

2. ヒューマンエラーの回避

 
 ヒューマンエラーは、製造工程で良く発生しますが、設計工程でも同じように発生します。それを防止するには、次のようなことを、確実に作業することです。
 
   ・電話やメールでやり取りした内容は、連絡メモとして必ず残す
   ・会議議事録は必ず取る。(特に客先との会議)
   ・図面作成時は、間違いがないか必ず見直す(自工程検査)
   ・図面変更した後、他に関連して変更する箇所が無いか見直す
 
 以上は、ごく当たり前のことですが、これらは忙しい時はつい省略してしまうことが多くなります。とくに、情報のやり取りでありがちな、勘違いや思い込み、確認漏れをなくすために、必ずメモを残す、外部との大事な会議の議事録は必ず相手の確認サインをもらうことが必要です。次に、ヒューマンエラーを回避する手段を解説します。一般的にヒューマンエラーを誘発する要因は次の3点があります。
 
   ・教育訓練不足
   ・行動影響要因
   ・組織風土要因
 
 設計作業は、目に見えない情報を基に、具体的な商品の形を作り上げる作業です。したがって、情報を大切に扱うこと、なぜそうするかの背景も含め正確に理解する、そしてそれを正確に伝えることがヒューマンエラーのミスを防止する上で最も重要なことと言えます。
 

3. 漏れのない設計ステップとは

 
 企画段階で決定された内容(製品仕様)に基づいて、自社の保有する固有技術や、自分のアイデア等を盛り込んで目標の機能やコストを達成させるために踏むステップのことです。主な項目としては、次の4点です。
 

(1) 設計仕様書を作成する

 
 ・機能・性能を具体的な品質特性で表す
 ・その機能・性能を実現するための技術的手段を決定する
 ・具体的には、どのような機構を設けるのか?どのような電子回路を組むのか?その時に必要な部品材
  料は何か?など
 

(2) 技術的手段(方式)の妥当性を確認する

 
 ・過去に実績がある手段か
 ・過去に発生した問題はフィードバックされているか
 ・製造牲、保守性も考慮した設計になっているか
 ・安全性や故障が起きないよう信頼性は確保されているか
 ・目標原価は達成するか
 

(3) 実際に試作検証して設計通りのものか確認する

 
 ・実機を試作して、機能や信頼性の確認を行う
 ・設計FMEAを実施する
 

(4) 最終のアウトプットとして、設計図面を...

リリースする
 
 設計の規模によっても異なりますが、基本的には各ステップごとにデザインレビューを実施して、次のステップへ進めるかどうかをジャッジします。設計品質が良い、悪いと言うのは、インプットに対してアウトプットが正しいかどうかで決まります。正しいアウトプットを得るためには、正しいステップを確実に実行しながら設計を進めます。納期に追われて、ステップを省略すると必ずミスが出ます。また、設計手戻りが生じると、そこでもミスが生じる可能性があります。設計ステップを漏れなく進めることが、設計ミスをなくす唯一の手段です。
 
 次回は、設計品質向上の課題を解説します。
 
 

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