ISOは組織に改善の機会を与える(その1)

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 ISOISO品質及び環境マネジメントシステムの2015年改訂は組織にとって絶好の『改善の機会』と捉えて下さい。実際に2015年版を構築された企業では、経営者は、業務と整合し非常に分かり易く役に立つと言われています。これまでも、組織の事業プロセスと整合した運用は言われてきました。しかし、事業とISOが別物として運用されている組織が非常に多いのが現実です。
 
 今回の品質又は環境マネジメントシステムは、規格の要求事項の中に明確に『事業プロセスとの統合』が求められています。本稿では、2回に分けて、2015年改訂の骨子及び主旨を解説します。

1.ISO規格の構造

 
 これまでからISOの規格は、PDCAのサイクルに基づくように作成されていましたが、規格(品質・環境・情報セキュリティなど)の文書構成は統一されていませんでした。今回の改訂は、Annex SLによる、上位構造(HLS)の設定によって、すべてのマネジメントシステムの文書構成の統一が図られ、箇条における要求事項、並びに用語の共通化も図られています。
 
 規格の内容では、トップマネジメントの関与の強化、リスク及び機会に基づく考え方が取り入れられ、又、パフォーマンス重視の考え方を含め、事業プロセスへの統合が強く求められ、且つ、PDCAのサイクルをより鮮明にした改訂内容になっています。
 

2.他のMS規格との整合化

 
 Annex SLによる上位構造(HLS)によって、文書構成と用語の共通化により、他のマネジメントシステムとの整合が図られ、統合マネジメントシストシステム(例えば、品質と環境との統合)の構築、運用が非常に容易になっています。 これは、規格が求める事業プロセスとの統合を進める上でも非常にやり易いと言えます。
 

3.組織の状況とリスク及び機会

 
 組織の状況の理解として、組織の持っている外部及び内部の課題(事業に影響を与える事柄:良い点、悪い点の両面)の特定と利害関係者のニーズ及び期待(法的を含む、要求事項)を決定し、これらに対して、取り組むべきリスク及び機会を決定にすることからの目標の設定など、事業活動と整合した運用が明確にされています。
 
 これまでは、ISOのための目標設定がされるような運用が多く、目標の設定に苦慮される組織が多く見受けられました。しかし、今回の改定では、リスク及び機会から組織として取り組むべき事柄が明確にされ、そこから目標が設定される運用になるため、これも事業プロセスに整合した目標設定になると言えます。
 

4.トップマネジメントのリーダーシプの強化

 
 トップマネジメントのリーダーシップについては、ISOがトップダウンによる運用と考えておられる経営者も沢山おられましたが管理責任者やISO委員会などに丸投げされる経営者も存在していましたが、今回の要求により、トップマネジメントのリーダーシップの重要性をご理解頂けると考えています。又、今回のトップマネジメントの表現は、これまでの経営層という表現より範囲を広く捉えることもできます。トップマネジメント=経営者だけでなく、階層や部門のトップもトップマネジメントであることを理解し認識された運用がより効果的と考えて下さい。
 

5.プロセスアプローチ採用の強化

 
 プロセスアプローチはこれまでの規格から採用を推奨されていましたが、規格校正の並びがPDCAのサイクルと整合しない点から有効な運用に至っていなかったと考えられ、今回はPDCAのサイクルが廻りやすい規格構成になっています。
 
 組織の品質又は環境方針及び戦略的な方向性の従い意図した結果を達成するためにも、プロセスの明確化と相互作用の体系化によるマネジメントすることは、PDCAサイクルのプロセスにおいて、望ましい影響を機会と捉え、望ましくない影響をリスクと捉えた運用が品質又は環境マネジメントシステム全体をマネジメントでき、且つ、事業プロセス(事業マネジメント)との統...
 ISOISO品質及び環境マネジメントシステムの2015年改訂は組織にとって絶好の『改善の機会』と捉えて下さい。実際に2015年版を構築された企業では、経営者は、業務と整合し非常に分かり易く役に立つと言われています。これまでも、組織の事業プロセスと整合した運用は言われてきました。しかし、事業とISOが別物として運用されている組織が非常に多いのが現実です。
 
 今回の品質又は環境マネジメントシステムは、規格の要求事項の中に明確に『事業プロセスとの統合』が求められています。本稿では、2回に分けて、2015年改訂の骨子及び主旨を解説します。

1.ISO規格の構造

 
 これまでからISOの規格は、PDCAのサイクルに基づくように作成されていましたが、規格(品質・環境・情報セキュリティなど)の文書構成は統一されていませんでした。今回の改訂は、Annex SLによる、上位構造(HLS)の設定によって、すべてのマネジメントシステムの文書構成の統一が図られ、箇条における要求事項、並びに用語の共通化も図られています。
 
 規格の内容では、トップマネジメントの関与の強化、リスク及び機会に基づく考え方が取り入れられ、又、パフォーマンス重視の考え方を含め、事業プロセスへの統合が強く求められ、且つ、PDCAのサイクルをより鮮明にした改訂内容になっています。
 

2.他のMS規格との整合化

 
 Annex SLによる上位構造(HLS)によって、文書構成と用語の共通化により、他のマネジメントシステムとの整合が図られ、統合マネジメントシストシステム(例えば、品質と環境との統合)の構築、運用が非常に容易になっています。 これは、規格が求める事業プロセスとの統合を進める上でも非常にやり易いと言えます。
 

3.組織の状況とリスク及び機会

 
 組織の状況の理解として、組織の持っている外部及び内部の課題(事業に影響を与える事柄:良い点、悪い点の両面)の特定と利害関係者のニーズ及び期待(法的を含む、要求事項)を決定し、これらに対して、取り組むべきリスク及び機会を決定にすることからの目標の設定など、事業活動と整合した運用が明確にされています。
 
 これまでは、ISOのための目標設定がされるような運用が多く、目標の設定に苦慮される組織が多く見受けられました。しかし、今回の改定では、リスク及び機会から組織として取り組むべき事柄が明確にされ、そこから目標が設定される運用になるため、これも事業プロセスに整合した目標設定になると言えます。
 

4.トップマネジメントのリーダーシプの強化

 
 トップマネジメントのリーダーシップについては、ISOがトップダウンによる運用と考えておられる経営者も沢山おられましたが管理責任者やISO委員会などに丸投げされる経営者も存在していましたが、今回の要求により、トップマネジメントのリーダーシップの重要性をご理解頂けると考えています。又、今回のトップマネジメントの表現は、これまでの経営層という表現より範囲を広く捉えることもできます。トップマネジメント=経営者だけでなく、階層や部門のトップもトップマネジメントであることを理解し認識された運用がより効果的と考えて下さい。
 

5.プロセスアプローチ採用の強化

 
 プロセスアプローチはこれまでの規格から採用を推奨されていましたが、規格校正の並びがPDCAのサイクルと整合しない点から有効な運用に至っていなかったと考えられ、今回はPDCAのサイクルが廻りやすい規格構成になっています。
 
 組織の品質又は環境方針及び戦略的な方向性の従い意図した結果を達成するためにも、プロセスの明確化と相互作用の体系化によるマネジメントすることは、PDCAサイクルのプロセスにおいて、望ましい影響を機会と捉え、望ましくない影響をリスクと捉えた運用が品質又は環境マネジメントシステム全体をマネジメントでき、且つ、事業プロセス(事業マネジメント)との統合にもつながります。プロセスアプローチの適用により、次の事項が可能となります。
 
5-1 要求事項の理解及びその一貫した充足
    要求事項が意図していることの理解が深まる
 
5-2 付加価値の点からのプロセスの検討
    付加価値を得るためのプロセスの理解と運用
 
5-3 効果的なプロセスパフォーマンスの達成
    プロセスの結果が有効であるためのプロセスの運用
 
5-4 データ及び情報の評価に基づくプロセスの改善
    プロセスを理解し運用により、データ分析・評価からの改善につながる
 
 次回は、6.パフォーマンス重視と文書化の軽減、7.改訂規格の活用、8.ISO規格の読み方、捉え方についてを解説します。
 
 

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この記事の著者

小林 章二

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