デザインによる知的資産経営:各部門の役割(その3)

 前回のその2に続いて解説します。知的資産経営において、企業の知的資産を集積して利用することが重要であり、全部門の力が必要です。今回は、製造部門がどのように知的資産経営に関わるかについて解説します。
 

3.製造部門

 
 製造部門(工場)は、開発・設計部門から提示された仕様書に基づいて試作品を製造したり、量産品を製造する作業を行い、「経営」と直接関わることは考えられていなかったと思います。もちろん、生産性を上げる工夫、不良品を減らす工夫などを通じて経営に関与してはいますが、デザインによる知的資産経営においては、図3のようにより積極的な関与が求められます。
 
 製造部門(工場)がすべきことは、自社設備や技術・技能の開示です。つまり、自社の工場にはどのような設備があって、どんなことができるのかという情報の開示です。このような情報は、経営者なら当然知っているはずだと思われていますが、本当にそうでしょうか?
 
 経営者は、どのような設備があるかという目録や設備の主な機能は知っているでしょう。主な機能とは、その設備を導入したときに認識していた機能です。しかし、工場で実際にその設備を扱ううち、導入した設備を改良したり、「こんなこともできる」という新たな発見もあるのではないでしょうか。そのような発見は、おそらく工場内で一部の人が気づき、知っているのみであって、共有はされていないと思います。
 
 わずか数人の間であっても、心がけなければ情報の共有は実現しにくいことです。開発部門と工場とが緊密につながっている体制であれば、開発部門は知っているかもしれませんが、それでも全社員が共有する資産にはなっていないと思います。それ以外にも、「ウチの工場ではこのような裏技を使って、他社にはまねできない製品を製造している、コストダウンを実現している」。さらには、「当社には***という熟練者がいるのでこの工程がうまく管理されている」といった「無形資産」があると思います。知的資産経営に必要なのは、財務諸表に表されるような資産情報ではなく、形には表れない、もっと具体的な情報です。そのような情報を工場にとどめずに会社の共有資産にしなけ...
ればなりません。工場の具体的な情報を技術部員だけでなく営業部員や開発部員が知ることになれば、そこからヒントを得て新しい提案ができるかもしれません。それが「知的資産経営」です。特許などの知的財産権をベースとした「知的財産経営」との大きな違いなのです。
 
           
図3.製造・技術部門の役割
 
 
◆関連解説『技術マネジメントとは』

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