不具合事例から知る製品安全の基礎知識(その5)

投稿日

 前回の不具合事例から知る製品安全の基礎知識、その4に続いてプラスチック製品の不具合事例 (その3を)解説します。今回が、最終回です。
 

(3)プラスチック製品の不具合事例 (その3)

事例⑥ アクリル製冷水筒の破損

 密閉式のアクリル製冷水筒の破損
                   製品安全         
図8 密閉式のアクリル製冷水筒の破損、出所:経済産業省HP
 
<不具合内容>
 
 密閉式のアクリル製冷水筒において、熱湯を注ぎ、冷める前に蓋を締めたところ破損し、使用者が火傷を負った。製品本体に「冷めるまで蓋をしない」との注意喚起表示は行われていなかった。事業者、業界団体は注意喚起情報を公開した。
 
<事例から学べること>
 
・「予見される誤使用」を想定した設計、評価を行うこと。
・同様の製品において、「熱湯を注ぎ冷める前に蓋をする」ことは、予見される誤使用とみなされると理
 解する必要がある。
 

◆不具合事例から知る製品安全の基礎知識のまとめ

 不具合事例を見ていると、製品の使用形態をしっかり把握しないまま設計していると思われるケースが目立ちます。私も10年以上製品設計に携わっていますが、使用者がどのように使うのか、「予見可能な誤使用」と「異常使用」の境界をどこに引くのかについては、ずっと悩まされてきました。その判断によって設計が大きく変わってくるからです。これは、多くの製品設計者に共通の悩みだと思います。1970年代から80年代にかけて、トヨタで主査(製品開発責任者)を務めた安達瑛二氏は著書で以下のように語っています。
 
 「設計における最大の問題点は、市場における商品の使用条件の把握です。十分な技術を持つ企業の商品が品質問題を起こす原因の一つはここにあります。新技術を使...
 前回の不具合事例から知る製品安全の基礎知識、その4に続いてプラスチック製品の不具合事例 (その3を)解説します。今回が、最終回です。
 

(3)プラスチック製品の不具合事例 (その3)

事例⑥ アクリル製冷水筒の破損

 密閉式のアクリル製冷水筒の破損
                   製品安全         
図8 密閉式のアクリル製冷水筒の破損、出所:経済産業省HP
 
<不具合内容>
 
 密閉式のアクリル製冷水筒において、熱湯を注ぎ、冷める前に蓋を締めたところ破損し、使用者が火傷を負った。製品本体に「冷めるまで蓋をしない」との注意喚起表示は行われていなかった。事業者、業界団体は注意喚起情報を公開した。
 
<事例から学べること>
 
・「予見される誤使用」を想定した設計、評価を行うこと。
・同様の製品において、「熱湯を注ぎ冷める前に蓋をする」ことは、予見される誤使用とみなされると理
 解する必要がある。
 

◆不具合事例から知る製品安全の基礎知識のまとめ

 不具合事例を見ていると、製品の使用形態をしっかり把握しないまま設計していると思われるケースが目立ちます。私も10年以上製品設計に携わっていますが、使用者がどのように使うのか、「予見可能な誤使用」と「異常使用」の境界をどこに引くのかについては、ずっと悩まされてきました。その判断によって設計が大きく変わってくるからです。これは、多くの製品設計者に共通の悩みだと思います。1970年代から80年代にかけて、トヨタで主査(製品開発責任者)を務めた安達瑛二氏は著書で以下のように語っています。
 
 「設計における最大の問題点は、市場における商品の使用条件の把握です。十分な技術を持つ企業の商品が品質問題を起こす原因の一つはここにあります。新技術を使う場合も、品質問題の原因の多くは新技術そのものよりも使用条件不明にあります。」
 
 プラスチックの物性は使用環境に大きく依存するため、他の材料を使用する時より、さらにしっかりと製品の使用形態を把握する必要があります。それらを把握するためにも、市場の不具合事例にはたくさん触れるべきだと考えます。
 
参考文献
  安達瑛二(著)コロナ社 『製品開発の心と技-設計者を目指す若者へ』
 

   続きを読むには・・・


この記事の著者

田口 宏之

中小製造業の製品設計の仕組み作りをお手伝いします!これからの時代、製品設計力強化が中小製造業の勝ち残る数少ない選択肢の一つです。

中小製造業の製品設計の仕組み作りをお手伝いします!これからの時代、製品設計力強化が中小製造業の勝ち残る数少ない選択肢の一つです。


「知的財産マネジメント」の他のキーワード解説記事

もっと見る
特許法の先使用権によるノウハウ保護のポイントとは

   1. ノウハウとは  ノウハウとは「技術秘訣」と訳されることがありますが、国際商業会議所(ICC)によるノウハウ保護基準条項...

   1. ノウハウとは  ノウハウとは「技術秘訣」と訳されることがありますが、国際商業会議所(ICC)によるノウハウ保護基準条項...


変化し続ける人や組織を「どのように」作っていくか 技術経営で築く真田丸(その1)

1、時代により変わるビジネス  日本史では時代が戦国から江戸に移ると、大きなパラダイムシフトに見舞われ、多くの人が失業して別の仕事を獲得していきまし...

1、時代により変わるビジネス  日本史では時代が戦国から江戸に移ると、大きなパラダイムシフトに見舞われ、多くの人が失業して別の仕事を獲得していきまし...


特許権と企業経営 知財経営の実践(その47)

1. 知財の持つ価値  知財経営の実践については、その重要性が参考文献のように報告されています。〔1〕〔2〕知財の活用を、企業経営においては、常に意...

1. 知財の持つ価値  知財経営の実践については、その重要性が参考文献のように報告されています。〔1〕〔2〕知財の活用を、企業経営においては、常に意...


「知的財産マネジメント」の活用事例

もっと見る
特許情報の見える化と解析で何が出来るのか

♦提案可能な特許情報の見える化事例  パテントマップソフトの使用などに代表される特許情報の見える化は、業界の技術情報とその動向を理解する...

♦提案可能な特許情報の見える化事例  パテントマップソフトの使用などに代表される特許情報の見える化は、業界の技術情報とその動向を理解する...


特許確認と新製品

        今回は、新製品が既存の特許を侵害していないか、を確認するための特許の調べ方、考え方について解説します。    開発した技術が他人...

        今回は、新製品が既存の特許を侵害していないか、を確認するための特許の調べ方、考え方について解説します。    開発した技術が他人...


IP(Intellectual Property=知的財産)ランドスケープとは

  1. 膨大な特許情報  我が国の2016年における特許出願数(国際特許出願件数含む)は約32万件、世界の特許出願件数は約312万件※1で、この...

  1. 膨大な特許情報  我が国の2016年における特許出願数(国際特許出願件数含む)は約32万件、世界の特許出願件数は約312万件※1で、この...