経済性工学で豊洲移転問題を分析する

経済性工学
 2017年6月現在、東京都は、中央卸売市場を築地から豊洲に移転して、築地への一部希望業者のリターンも考慮した案を選択しました。この意思決定は、正しいのでしょうか。どうも腑に落ちません。今回は、経済性工学の原理原則で豊洲移転問題を分析してみましょう。又、リスクマネジメントの視点も付加して、代替案を計算比較します。
 

1. 結論: 第三の案(大田市場への統合)≫ 築地改修案 > 修豊洲移転案

 ここでは、豊洲移転、築地改修に加えて、そもそも総研の玉川徹さんも提言されていた大田市場への統合案の3案について損得を計算してみました。概要は図1のようです。経済性工学の原理原則では、 発生済み費用は埋没原価として処理されるため、これから発生する費用の差額を比較します。その結果、大きな課題がないかぎり大田市場との統合案がダントツで税金の無駄遣いを防げるようです。次善の策が築地改修案です。そこで、ネットによる漁師と飲食店や個人との直接取引拡大による卸の中抜きが、大きなリスクとして懸念されます。それにより、豊洲の赤字は拡大必至のようです。
 
経済性工学
図1. 豊洲移転の代替案比較表
 

2. 算出の根拠

 これから発生する費用として、ランニングコストの50年間の累積赤字額または黒字額、有害物質除去費用、市場の改修費用を計算しました。収入として、各市場跡地の売却益を、売却金額から解体費用を引いた額としました。ここでは、東京都のプロジェクトチームの算出金額を参考に計上しました。ただし、築地及び太田市場の改修費用は、豊洲の例のよう拡大するおそれもあるため、約2倍の額としました。なお、原価償却費は発生する費用ではないため計上していません。また、計算簡略化のため、各種金利や手数料は除きました。
 

3. 経済性工学とは

 経済性工学とは、経済的に有利な方策を探し、比較し、選択するための理論と技術の総合されたものに対する呼び名であり、経営科学のひとつの分野とされています。簡単にいうと、採算計算や経済性分析などの"損得計算"の意味です。財務会計が過去、管理会計が現在の活動状況を表すのに対して、経済性工学(損得計算)は、将来に向けた意思決定のための計算です。損得計算の中で、多くの人々が勘違いする点があります。例えば、既存の設備を使う場合と新規設備投資を行う場合に、埋没原価(sunk cost)を含めて計算してしまうことです。埋没原価(sunk cost)=埋没費用 とは、目的達成の手段獲得のために、過去に支払ってしまった金額、または、支払いが決まってしまっている金額のことです。経済性工学(損得計算)には、押さえるべき原理原則が3つあります。
 
(1)これから発生する費用、収益だけを計算する。(埋没原価は加味しない)
(2)意思決定の優先順位を、利益の絶対額、効率(比率)の順とする。
(3)変化点に着目する(代替案の相違点になる数字に着目する)。
 

【経済性工学に関連する筆者の技法解説記事】 

 

この記事の著者

粕谷 茂

「感動製品=TRIZ*潜在ニーズ*想い」実現のため、差別化技術力、自律人財創出を支援します。

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