物流管理のポイントとは

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1. 物流管理監督者が把握すべきデータとは

強い会社は強い現場から生まれます。その強い現場をつくるのは監督者なのです。そこでとても大切になってくるのが、物流管理監督者のマネジメントになります。

 

物流現場の管理監督者は、自らの役割をきちんと認識しておく必要があります。個々の物流現場の実績が、その集合体である物流センターの実績となり、物流センターそれぞれの成績が会社全体の成績につながります。当たり前のことかもしれませんが、個々の物流現場がいかに良い実績を示すかが、会社の収益性に影響を及ぼします。

 

では物流現場の監督者は、具体的にどのようなマネジメントをしていったらよいのでしょうか。その点について少し考えてみましょう。

 

まず必要なことの第一歩が、日々の実績を把握するということでしょう。自分たちが行った仕事の結果がどうだったのかを知る必要があります。ではなぜ、日々実績を管理しなければならないのでしょうか。会社によっては、月次を閉めて初めてパフォーマンスが良かったのか悪かったのか、結果を知るというケースがあります。もし、月次でパフォーマンスが悪かったということが翌月半ばに分かったとしたらどうでしょう。

 

何かしら問題があって悪い結果が出たとしたら、その問題への対応開始まで1ケ月半費やしてしまうことになります。もしこの情報が日々分かるとしたら、その時点でアクションを取れるのです。だから物流監督者は日々の売上高、経費、収支を把握していきましょう。これが最低限把握するべきデータということになります。

 

では次に把握すべきデータには何があるでしょうか。物流監督者はコストだけを把握しているわけではないので、SQDCM[1]の視点でみていく必要があります。先ほどの事例がコストに関する結果系指標の把握でしたので、それにつながる要因についてみていきましょう。

 

物流現場で利益を上げるためには、売り上げを増やすか経費を減らすかのどちらかになります。現場監督者が特に気を配らなければならないのは経費です。ではその経費の中で最も大きな比率を占めるものは何でしょうか。それは、人件費ではないかと思います。

 

2. 物流コスト

物流現場監督者は自分の管理領域の経費の内、大きな比率を占める人件費データについて、細心の注意を払って管理していく必要があります。一つひとつの仕事を行っていく際「投入すべき工数」が決まっていると思います。まずこの決まっている投入工数を超えていないかについてチェックしていきましょう。

 

そのためには、どの仕事にどれだけ時間をかけたかが把握できないと困ります。多くの会社がこの時点で工数管理をあきらめてしまう節がありますが、きちんと作業日報をつけることで、最低限のデータ把握は実施しなければならないでしょう。

 

標準時間を設定してあれば、その時間値と実際にかかった時間値を比較しましょう。個々の作業者別に標準時間でできている作業の比率を把握することも大切です。そしてその時間値以上かかっている作業者に対し、個別に指導していくといった愚直な管理も必要なのです。

 

人件費以外にもコスト系で把握すべきデータがあれば、きちんと管理していきましょう。例えば、トラック輸送にかかる燃料使用量は把握すべきデータと考えられます。燃料使用量データもドライバー別に把握し、最も優れたドライバーは毎月表彰していくような仕掛けを作るのもよいのではないでしょうか。

 

3. 安全管理

次に安全管理について考えてみましょう。輸送における仕事場は公道です。それだけに安全に関しては十分な取り組みを実施することが望まれます。ドライブレコーダーを導入しているのであれば、問題と思われる運転に対しては、関係者を集めて勉強会を開くとよいのではないでしょうか。

 

デジタルタコグラフ[2]から取れる安全運転データは一つの参考資料になります。これもドライバー別に把握し、優良なドライバーは褒めるといった習慣をつけるとよいかもしれません。そしてこの安全系データは必ず現場に貼り出すようにしましょう。他の作業者が見れば、なぜその人の運転データがよいのか興味を持つと思います。

 

このような事を続けることで、次第に作業者やドライバーのレベルが上がっていくことにつながるのです。この「掲示効果」は安全だけではありません。他のカテゴリーでも同様です。現場に大きな管理ボードを掲示し、誰もが見られるようにすることは、現場改善に多大な効果を上げるのです。

 

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4. 物流品質

物流品質には、間違った製品を届けてしまう誤配や数量を間違える誤出荷、製品を損傷してしまう破損がありますが、これに加えてドライバー品質なども重要です。お客様に製品を配達に向かったドライバーの身なりや態度は、直接お客様に評価されますので、社員教育は大切になってくるのです。

 

物流会社は誤配送をデータとして把握しておかなければなりません。一般的に誤配率として把握します。この率はppm(parts per million:パーツ・パー・ミリオン:百万分率)レベルであることがポイントです。

 

誤配率がパーセントレベルですと、ちょっと心もとない会社だと判断されるでしょう。皆さんが通信販売で商品を購入した際、間違った品が届くということはまず無いのではないでしょうか。これが日本の物流品質の実力なのです。

 

これは結果系の指標ですが、要因系の指標としては倉庫内での誤ピッキング率や製品破損などが挙げられます。倉庫内で見つけることで社外への流出を防ぐことができます。そこでこの要因系指標は必ず管理し、流出不良率を下げるとともに、社内での品質不良を減らす改善につなげていきたいものです。

 

5. 納期管理

物流の命ともいえる納期管理ですが「本日中に終える」などといったラフな管理では困ります。「この仕事は何時何分までに終える」「この製品は何時何分に出荷する」といった管理が望まれます。これらはどちらかというと、要因系の指標ということになります。

 

結果系の指標として納期遵守率は代表的です。納期をもう少し細かくすると納入時刻遵守率ということになります。

 

6. 管理のポイント

物流に関する日々の管理で、やるべきことがみえてきた...

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1. 物流管理監督者が把握すべきデータとは

強い会社は強い現場から生まれます。その強い現場をつくるのは監督者なのです。そこでとても大切になってくるのが、物流管理監督者のマネジメントになります。

 

物流現場の管理監督者は、自らの役割をきちんと認識しておく必要があります。個々の物流現場の実績が、その集合体である物流センターの実績となり、物流センターそれぞれの成績が会社全体の成績につながります。当たり前のことかもしれませんが、個々の物流現場がいかに良い実績を示すかが、会社の収益性に影響を及ぼします。

 

では物流現場の監督者は、具体的にどのようなマネジメントをしていったらよいのでしょうか。その点について少し考えてみましょう。

 

まず必要なことの第一歩が、日々の実績を把握するということでしょう。自分たちが行った仕事の結果がどうだったのかを知る必要があります。ではなぜ、日々実績を管理しなければならないのでしょうか。会社によっては、月次を閉めて初めてパフォーマンスが良かったのか悪かったのか、結果を知るというケースがあります。もし、月次でパフォーマンスが悪かったということが翌月半ばに分かったとしたらどうでしょう。

 

何かしら問題があって悪い結果が出たとしたら、その問題への対応開始まで1ケ月半費やしてしまうことになります。もしこの情報が日々分かるとしたら、その時点でアクションを取れるのです。だから物流監督者は日々の売上高、経費、収支を把握していきましょう。これが最低限把握するべきデータということになります。

 

では次に把握すべきデータには何があるでしょうか。物流監督者はコストだけを把握しているわけではないので、SQDCM[1]の視点でみていく必要があります。先ほどの事例がコストに関する結果系指標の把握でしたので、それにつながる要因についてみていきましょう。

 

物流現場で利益を上げるためには、売り上げを増やすか経費を減らすかのどちらかになります。現場監督者が特に気を配らなければならないのは経費です。ではその経費の中で最も大きな比率を占めるものは何でしょうか。それは、人件費ではないかと思います。

 

2. 物流コスト

物流現場監督者は自分の管理領域の経費の内、大きな比率を占める人件費データについて、細心の注意を払って管理していく必要があります。一つひとつの仕事を行っていく際「投入すべき工数」が決まっていると思います。まずこの決まっている投入工数を超えていないかについてチェックしていきましょう。

 

そのためには、どの仕事にどれだけ時間をかけたかが把握できないと困ります。多くの会社がこの時点で工数管理をあきらめてしまう節がありますが、きちんと作業日報をつけることで、最低限のデータ把握は実施しなければならないでしょう。

 

標準時間を設定してあれば、その時間値と実際にかかった時間値を比較しましょう。個々の作業者別に標準時間でできている作業の比率を把握することも大切です。そしてその時間値以上かかっている作業者に対し、個別に指導していくといった愚直な管理も必要なのです。

 

人件費以外にもコスト系で把握すべきデータがあれば、きちんと管理していきましょう。例えば、トラック輸送にかかる燃料使用量は把握すべきデータと考えられます。燃料使用量データもドライバー別に把握し、最も優れたドライバーは毎月表彰していくような仕掛けを作るのもよいのではないでしょうか。

 

3. 安全管理

次に安全管理について考えてみましょう。輸送における仕事場は公道です。それだけに安全に関しては十分な取り組みを実施することが望まれます。ドライブレコーダーを導入しているのであれば、問題と思われる運転に対しては、関係者を集めて勉強会を開くとよいのではないでしょうか。

 

デジタルタコグラフ[2]から取れる安全運転データは一つの参考資料になります。これもドライバー別に把握し、優良なドライバーは褒めるといった習慣をつけるとよいかもしれません。そしてこの安全系データは必ず現場に貼り出すようにしましょう。他の作業者が見れば、なぜその人の運転データがよいのか興味を持つと思います。

 

このような事を続けることで、次第に作業者やドライバーのレベルが上がっていくことにつながるのです。この「掲示効果」は安全だけではありません。他のカテゴリーでも同様です。現場に大きな管理ボードを掲示し、誰もが見られるようにすることは、現場改善に多大な効果を上げるのです。

 

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4. 物流品質

物流品質には、間違った製品を届けてしまう誤配や数量を間違える誤出荷、製品を損傷してしまう破損がありますが、これに加えてドライバー品質なども重要です。お客様に製品を配達に向かったドライバーの身なりや態度は、直接お客様に評価されますので、社員教育は大切になってくるのです。

 

物流会社は誤配送をデータとして把握しておかなければなりません。一般的に誤配率として把握します。この率はppm(parts per million:パーツ・パー・ミリオン:百万分率)レベルであることがポイントです。

 

誤配率がパーセントレベルですと、ちょっと心もとない会社だと判断されるでしょう。皆さんが通信販売で商品を購入した際、間違った品が届くということはまず無いのではないでしょうか。これが日本の物流品質の実力なのです。

 

これは結果系の指標ですが、要因系の指標としては倉庫内での誤ピッキング率や製品破損などが挙げられます。倉庫内で見つけることで社外への流出を防ぐことができます。そこでこの要因系指標は必ず管理し、流出不良率を下げるとともに、社内での品質不良を減らす改善につなげていきたいものです。

 

5. 納期管理

物流の命ともいえる納期管理ですが「本日中に終える」などといったラフな管理では困ります。「この仕事は何時何分までに終える」「この製品は何時何分に出荷する」といった管理が望まれます。これらはどちらかというと、要因系の指標ということになります。

 

結果系の指標として納期遵守率は代表的です。納期をもう少し細かくすると納入時刻遵守率ということになります。

 

6. 管理のポイント

物流に関する日々の管理で、やるべきことがみえてきたのではないでしょうか。こういった管理自体ができているかどうかについても管理していくことが望ましいでしょう。そこで管理の状況を把握するために、いくつかある管理のポイントをみていきましょう。

 

物流現場に設置する管理ボードに、SQDC[1]それぞれの指標の目標と実績を記した管理グラフが掲示されていることと、実際にタイムリーに記入されているかどうかチェックします。管理の中で重要なアイテムが人財育成の計画とその実績管理でしょう。個人別に今年度は何を教えていくのか、向上させるレベルはどれくらいかなどを表で管理していきましょう。

 

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物流はどちらかというと日々の管理が苦手だといわれますが、ここは少し努力をして、日々の管理を行うように努めましょう。その結果として物流品質向上や効率化、安全の確保などができるようになります。そしてそれが顧客に評価されてビジネスが拡大するのです。

 

【用語解説】
[1]SQDCM:「Safety」、「Quality」、「Cost」、「Delivery」、「Morale」の略。関連記事:物流会社が取り組むべき管理技術
[2]デジタルタコグラフ:自動車運転時の速度や走行時間、距離などの情報を記録する運行記録計。

 

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この記事の著者

仙石 惠一

物流改革請負人の仙石惠一です。日本屈指の自動車サプライチェーン構築に長年に亘って携わって参りました。サプライチェーン効率化、物流管理技術導入、生産・物流人材育成ならばお任せ下さい!

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