「CSM(CS経営)」とは、キーワードから、わかりやすく解説

 

1. CSMとは

CSM(CS経営)は、企業の経営を顧客満足 (customer satisfaction) を目標としてあたること。顧客に対して最大限の満足を与えることを目標に,企業の存在意義を見出す経営。顧客満足実現のために「CS推進室」といった部署を設ける企業もある。

2. 企業の成長に活かすことがCS経営の本質

企業の成長に活かすことがCS経営の本質ですが、別の言い方をすれば、顧客が知覚する価値を理解して、その価値を実現することが企業の成長につながるとも言えます。CS経営として「お客様の声」だけではなく「顧客が知覚する価値」を理解することがCS経営の中核です。

3. CSMと顧客満足の向上

顧客満足の向上について説明します。最近は「顧客満足度」という言葉に加えて「顧客ロイヤルティ」という言葉が多く使われるようになりました。「顧客満足度」も「顧客ロイヤルティ」も似たような言葉ですが、内容は少し異なります。

「顧客満足度」は、購入した製品やサービスに対して顧客が感じる満足感を表す指標です。顧客が製品やサービスに期待した価値(機能や品質)よりも提供された価値の方が高ければ、「顧客満足度」は高まります。

一方「顧客ロイヤルティ」は、製品やサービス、または企業に対して顧客が感じる信頼や愛着を表す指標です。心理的な信頼や愛着が継続的な購買行動に繋がること分かってきたため、顧客に提供する製品やサービスを総合的に評価する指標として「顧客ロイヤルティ」が使われるようになりました。

一般的に「顧客満足度を高めても継続的な購買には繋がらないが、顧客ロイヤルティを高めれば継続的な購買行動に繋がる」とされています。しかし一旦「顧客満足」を高めなければ「顧客ロイヤルティ」を得ることができません。また一旦「顧客ロイヤルティ」を得たとしても、一度でも顧客の期待を裏切ってしまえば、せっかく得た「顧客ロイヤルティ」を失ってしまいます。

4. 顧客ロイヤルティを高めるためのCSMの具体的な実践

顧客ロイヤルティを高めるCSMの実現には、顧客の感情や体験に深く寄り添う視点が不可欠です。単に製品やサービスの質を向上させるだけでは不十分で、顧客が企業とのあらゆる接点において感じる「感情的な価値」を創造する必要があります。これには、顧客の期待を超えるようなパーソナライズされた体験の提供や、予期せぬ喜びを与える「おもてなし」の精神が求められます。

たとえば、ある顧客が商品を購入した後に、その使い方に関する個別のアドバイスや、関連する情報を提供するメールが届いたとします。これは単なるアフターサービスを超えた、顧客一人ひとりに合わせた特別な配慮です。こうした細やかな気配りが、顧客に「自分は大切にされている」という感覚を与え、企業への信頼や愛着へとつながっていくのです。

さらに、現代のCSMにおいては、顧客との継続的な対話を重視することが重要です。SNSやオンラインコミュニティを通じて顧客の声を積極的に収集し、それらを製品やサービスの改善に活かすだけでなく、顧客からのフィードバックに迅速かつ丁寧に応えることで、エンゲージメントを高めます。顧客自身が企業のブランド形成に参画していると感じられるような仕組みを構築することで、単なる消費者から、ブランドの「熱心な支持者」へと変貌していくのです。

5. 顧客の期待を上回る体験の創造

顧客の期待を上回る体験を創造するためには、「期待マネジメント」という視点が重要です。これは、顧客が製品やサービスに対して抱く期待値を正確に把握し、その期待を少しだけ上回る価値を提供し続けることです。もし期待値が過度に高ければ、たとえ良いサービスを提供しても失望させてしまう可能性があります。逆に、期待値を低く設定しすぎると、そもそも選択肢にすら入らないかもしれません。

効果的な期待マネジメントには、まず顧客の「潜在的なニーズ」を深く理解することが不可欠です。顧客自身が言葉にしていない、あるいは自覚していないようなニーズを洞察することで、競合他社にはないユニークな価値を提供できます。たとえば、高級ホテルではチェックイン時に顧客の体調や好みをさりげなく確認し、客室に事前に好みの枕やアロマを用意しておくといったサービスがこれに当たります。これは顧客の言葉にならない「快適さへの欲求」を満たしているのです。

また、顧客の期待を超える体験は、必ずしも高額なサービスや製品である必要はありません。ほんのささやかな「サプライズ」が、大きな感動を生むこともあります。例えば、レストランで誕生日だと伝えていない顧客に、食後のデザートプレートにさりげなく「お誕生日おめでとうございます」とメッセージを添えるといった行為です。こうした予期せぬ喜びが、顧客の記憶に深く刻まれ、強固なロイヤルティの土台を築き上げます。

6. 従業員満足度とCSMの相関関係

CSMを成功させる上で、忘れてはならないのが「従業員満足度(ES:Employee Satisfaction)」です。顧客に最高の体験を提供するためには、まずその体験を提供する側の従業員が、仕事にやりがいを感じ、企業に愛着を持っていることが不可欠です。従業員が満たされていなければ、顧客に対して心からの「おもてなし」を提供することは困難になります。

従業員満足度を高めるためには、「インナー・ブランディング」の概念が重要となります。これは、企業理念やブランドの価値を従業員に深く浸透させ、彼らがその価値を体現できるようサポートすることです。従業員が自身の仕事に誇りを持ち、企業のブランドを心から信じることができれば、そのポジティブな姿勢は自然と顧客への対応に表れます。

具体的には、従業員が顧客の課題解決に積極的に関与できるよう、権限委譲を進めることが有効です。例えば、顧客からのクレームに対して、上司の許可を待つことなく、その場で解決策を提示できる権限を現場の従業員に与えるといった取り組みです。これにより、迅速な問題解決が可能になるだけでなく、従業員は「自分たちの判断で顧客を幸せにできる」という達成感を味わうことができます。このような経験が、従業員のエンゲージメントをさらに高め、結果として顧客ロイヤルティの向上へと繋がるのです。

また、従業員が自由に意見を述べられる文化を醸成することも大切です。顧客から得たフィードバックや、業務改善に関するアイデアを気軽に共有できるプラットフォームを設けることで、従業員は自らが組織の一員として貢献していることを実感できます。従業員一人ひとりの声がCSMの改善に活かされることで、彼らはより積極的に顧客と向き合うようになり、企業全体として顧客志向の文化が育まれていくでしょう。

7. まとめ

CSMは単なる顧客満足の追求ではなく、「顧客ロイヤルティの構築」という高次元の目標を目指すものです。それは、顧客の期待を上回る体験を創造し、顧客を熱心な支持者へと変えるプロセスに他なりません。そして、その実現には、従業員一人ひとりが企業のブランドを体現し、顧客との強固な信頼関係を築くことが不可欠です。

真のCSMとは、顧客と従業員、そして企業が一体となって成長し、「共に価値を創造していく」という思想です。この考え方を組織全体に浸透させることで、企業は競合他社には真似のできない、強固なパワー・ブランドを築き上げることができるでしょう。それは一朝一夕に成し遂げられるものではありませんが、顧客との深い絆を育むための、価値ある旅の始まりなのです。


  


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