SWOT分析とは? 意味や問題点について分かりやすく解説

 

1. SWOT分析とは

SWOT分析とは、1960年代に考案された、組織のビジョンや戦略を企画立案する際に利用する現状を分析する手法の一つ。SWOTは、Strength(強み)、Weakness(弱み)、Opportunity(機会)、Threat(脅威)の頭文字を取ったものです。 SとWは内部環境即ち自分たちの組織を分析し、OとTは外部環境即ち自分たちでは動かし難状況を分析します。 ここから戦略を作成するには、内部環境と外部環境を掛け合わせた4つの組合せに関する検討が有効で「クロスSWOT分析」と呼ばれます。

2. SWOT分析における内部環境、外部環境とは

SWOT分析は、組織やプロジェクトの戦略的な状況を評価するためのツールで、ここでの内部環境は、組織内部の強みと弱みを指し、外部環境は、組織外部の機会と脅威を指します。内部環境は組織が直接コントロールできる要素であり、外部環境は組織がコントロールできない要素です。

3. クロスSWOT分析を行う視点

以下が、クロスSWOT分析を行う際の視点です。

(1) 内部要因

  •  組織の強みや弱みを評価する
  •  製品やサービスの品質や効率性を考慮する
  •  組織内のリソースや能力を分析する

(2) 外部要因

  •  市場の機会や脅威を把握する
  •  競合他社の動向や市場トレンドを考慮する
  •  政治、経済、社会、技術の変化を考慮する

(3)クロス分析

  •  内部要因と外部要因の相互関係を分析する
  •  強みを活かす機会や弱みを克服する方法を模索する
  •  脅威を回避するための戦略を立てる

4. SWOT分析の問題点と考え方

SWOT分析の問題点は、他者・他社の分析が甘かったり、自分を強く見せようとして分析するために起こる不正確な分析結果です。自分・自社の強み、弱み、機会、脅威を正確に考えましょう。その上でクロスSWOTでそれぞれを掛け合わせて、次のように考えてください。

  • 「強み」によって「機会」を最大限に活用するために取り組むべきことは何か?
  • 「強み」によって「脅威」による悪影響を回避するために取り組むべきことは何か?
  • 「弱み」によって「機会」を逃さないために取り組むべきことは何か?
  • 「弱み」と「脅威」により最悪の結果となることを回避するために取り組むべきことは何か? 

 

5. SWOT分析を成功させるための実践的なポイント

SWOT分析は、ただの現状分析ツールではありません。それは、未来に向けた具体的な行動計画を策定するための出発点です。しかし、その分析結果を最大限に活かすためには、いくつかの重要なポイントを押さえる必要があります。

(1)客観性と事実に基づいた評価

SWOT分析で最も陥りやすい罠の一つは、主観的な願望や憶測に基づいて分析を進めてしまうことです。たとえば、「当社の製品は競合他社より優れているはずだ」という希望的観測で強みを定義したり、「市場の縮小は一時的なものだろう」と脅威を過小評価したりすることがあります。これでは、正確な現状把握はできません。

 

重要なのは、常に客観的なデータと事実に基づき、強み、弱み、機会、脅威を評価することです。市場調査データ、顧客アンケートの結果、財務諸表、競合製品のレビューなど、具体的な証拠を収集し、それらを元に分析を進めましょう。感情や直感に頼るのではなく、数字と事実が語るストーリーに耳を傾ける姿勢が不可欠です。

 

(2)多角的な視点の導入

一人または少人数のチームでSWOT分析を行うと、どうしても視野が狭くなりがちです。強みや弱みは、内部の人間にとっては当たり前すぎて見過ごされてしまうことがあります。また、外部の機会や脅威も、特定の部署の視点だけでは捉えきれない場合があります。

 

そこで、多様な背景を持つ人々を分析プロセスに参加させることが非常に有効です。営業、マーケティング、開発、カスタマーサポートなど、様々な部署のメンバーに加えて、社外の専門家や、可能であれば顧客の意見も取り入れることで、より多角的な視点で分析できます。異なる視点がぶつかり合うことで、見過ごされていた新たな強みや、潜在的な脅威が明らかになることも少なくありません。

 

(3)目的の明確化と共有

SWOT分析を始める前に、「なぜこの分析を行うのか」という目的を明確にすることが重要です。新製品の市場投入、既存事業の立て直し、新たな事業領域への進出など、目的に応じて分析すべきスコープや深さが変わります。

 

目的が曖昧なままだと、分析は単なる情報の羅列に終わり、具体的なアクションプランに繋がりにくくなります。また、分析に参加するメンバー全員が目的を共有することで、全員が同じ方向を向いて議論を進めることができます。例えば、新製品の市場投入が目的なら「この新製品が持つ強みは何か?」「市場における機会はどこにあるか?」といった具体的な問いに焦点を当てて分析を進めます。

 

(4)分析結果を戦略に繋げる「クロスSWOT分析」の活用

SWOT分析は、それ自体がゴールではありません。その結果を元に、具体的な戦略を策定することが最も重要なステップです。ここで威力を発揮するのが、本文中にも触れられているクロスSWOT分析です。

 

これは、強みと機会、弱みと機会、強みと脅威、弱みと脅威という4つの組み合わせ(マトリックス)を元に、具体的な戦略を導き出す手法です。

  • 強み × 機会(SO戦略): 強みを活かして機会を最大限に利用する積極的な戦略です。 例:高い技術力(強み)を活かして、成長市場(機会)に新製品を投入する。
  • 弱み × 機会(WO戦略): 弱みを克服して機会を獲得する戦略です。 例:人材不足(弱み)を解消するために、外部パートナーと提携(機会)してプロジェクトを進める。
  • 強み × 脅威(ST戦略): 強みを利用して脅威を回避または軽減する戦略です。 例:強固なブランド力(強み)で、競合他社の参入(脅威)に対抗する。
  • 弱み × 脅威(WT戦略): 弱みと脅威が重なり、最悪の事態を避けるための防衛的な戦略です。 例:資金力の弱さ(弱み)があるため、不況の長期化(脅威)に備え、コスト削減を徹底する。

 

このクロス分析を通じて、単なる現状分析から一歩進んだ、具体的で実行可能な戦略へと落とし込むことができます。

 

6. まとめ、SWOT分析は「対話」から始まる

SWOT分析は、情報を収集し、整理するだけの作業ではありません。それは、チームや組織が現状を深く理解し、未来について真剣に「対話」するプロセスそのものです。客観的な事実に基づき、多角的な視点を取り入れ、明確な目的を持って議論することで、単なる分析結果を超えた、組織としての洞察と行動力が生まれます。そして、その対話から生まれた戦略こそが、組織を次のステージへと導く羅針盤となるのです。

◆関連解説記事『知財経営の実践(その4) SWOT分析』

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