アローダイアグラム法(PERT)とは、キーワードからわかりやすく解説

 

1. アローダイアグラム法(PERT)

アローダイアグラム法(PERT)とは、プロジェクトの計画に際して、作業と作業を矢印(アロー)で結び、そこに所要時間を配置することで、最短時間やCP(クリティカルパス)を見つける方法です。 タスクをバー状に表現するスケジュール管理のガントチャートに似ていますが、この場合タスク数が増えてしかも相互の関係性が複雑になると管理が難しくなるため、PERTの価値が出てきます。 さらに大がかりで複雑になってくると、PERTでも手作業での管理、特に変更修正が難しくなります。 そんな時はMicrosoft Projectなど、PERTの原理を使ったスケジュール管理ソフトを使った方が効率的です。

 

2. 日程計画と進捗管理にアロー・ダイヤグラム法を用いる

ネットワーク理論をプロジェクトの計画・立案・管理に適用したPERT(Program Evaluation and Review Technique)やCPM(Critical Path Method)のネットワーク図を用いた日程の計画と管理の方法を「アロー・ダイヤグラム法」と呼び、この効果は、アロー・ダイヤグラム法のアウトプットにより複雑な計画の全貌を細大漏らさず一望できるところにあります。

 

(1)日程計画とその進捗管理にアロー・ダイヤグラム法を用いることによって出来ること

  1. きめの細かい計画が立てられる。
  2. 計画の段階での案の練り直しがしやすいので、最適な計画を立てることができる。
  3. 実施段階に入ってからの状況の変化、計画の変更などに対する対処がしやすい。
  4. 一部の作業の遅れが全体の計画に及ぼす影響についての正確な情報が迅速に得られるので、対応策が早く打てる。
  5. 計画の規模が大きくなればなるほど、効率よく管理できる。
  6. 進捗管理の重点が明確になるので、効率よく管理できる。

 

3. アロー・ダイヤグラム法のオリジナル手法について

オリジナルは、PERTとCPMで用いるネットワーク図であるとされています。ただ、CPMは、ネットワ-ク図は使用するものの、その目的とするところが、線形計画法を用いて、費用を最小にする最適解(最適スケジュール)を求めるところにあるので、アロー・ダイヤグラム法のオリジナルとしては、PERTの方がふさわしいといえます。そのPERTは、ソ連が1957年10月4日に打ち上げに成功した宇宙衛星スプートニクにショックを受けたアメリカで、ミサイルギャップを埋めるため海軍に設けられた特別プロジェクトに参加した、ブーツ・アレン・ハミルトン社(コンサルタント会社)の数学者C・E・クラーク氏のアイデアをもとに開発されたもので、ネットワーク理論をプロジェクトの計画、立案、管理に適用する手法で、対象となったポラリス計画では、7年の予定を2年縮めたといわれます。
 
これを契機にアメリカ政府は新規プロジェクトに対し、PERTの採用を決めたことから、産業界に急速に広まったのは、VA(その後国防省がVEと呼称)と軌を一にするところです。その後、国防省とNASAが、時間のほかに、人、物、金など生産資源をネットワークで管理するシステム“PERT/COST”に発展させていますが、ここでいうCOST(費用)は単なる予算の形での導入であり、CPMの費用とは異なったものです。
 
ちなみに、PERTを開発するきっかけとなったポラリスプロジェクトは、3000を超える企業群が関わり数年かかるプロジェクトだったので、オリジナルを勉強した内容を適用する際は、プロジェクトの大きさを考慮しないと用途を誤るので要注意です。

 

4. PERTを構成する要素と表記方法

アローダイアグラム法、特にPERT(Program Evaluation and Review Technique)のネットワーク図は、プロジェクトを構成する個々の作業(アクティビティ)と、それらの作業間の順序関係を視覚的に表現するものです。ネットワーク図は主に二つの要素で成り立っています。一つはノード(Node)、または結合点(Event)と呼ばれる要素で、これは作業の開始や完了といった特定の時点を示します。一般的に円で表され、その中には連番の数字が振られます。ノードは「何かが完了した状態」を表すため、時間や資源を消費しません。もう一つはアロー(Arrow)、つまり矢印で、これはノードからノードへと結ばれ、具体的な作業(アクティビティ)そのものを表します。アローの上に作業名や所要時間が書き込まれます。アローは「何らかの作業が行われている」ことを示し、時間や資源を消費します。一つのノードから出て次のノードに入るアローの流れが、プロジェクトの作業順序を決定づけることになります。

また、特殊なアローとしてダミー作業(Dummy Activity)があります。これは、実際の作業を伴わないものの、論理的な順序関係を示すために使われる破線の矢印です。例えば、作業Aが完了しなければ作業Bを開始できないが、作業Aと作業Cは同時進行可能、といった複雑な依存関係を明確にするために不可欠です。ダミー作業は、図を作成する上でのルールを保ち、ネットワーク上の経路を正しく表現するためにも重要な役割を果たします。

 

5. クリティカルパス(CP)とスケジュールの余裕

PERTを適用する最大の目的の一つは、クリティカルパス(Critical Path、CP)を見つけ出すことです。クリティカルパスとは、ネットワーク図上の最初から最後まで最も時間がかかる経路を指します。この経路上の作業が一つでも遅れると、プロジェクト全体の完了日も遅れてしまうため、「致命的な(クリティカルな)経路」と呼ばれます。クリティカルパス上の作業は、余裕時間(Slack Time)がゼロです。余裕時間とは、その作業の開始または完了が遅れても、後続の作業やプロジェクト全体に遅延を及ぼさない許容される時間の幅のことです。逆に言えば、クリティカルパス上にない作業には、ある程度の余裕時間が存在します。

この余裕時間がある作業を把握することで、プロジェクトマネージャーは資源(人や設備など)の再配分を行う際の判断材料を得ることができます。例えば、クリティカルパス上の作業が遅れそうな場合、余裕時間のある作業に割り当てていた人員をクリティカルパス上の作業に一時的に移動させる、といった柔軟な資源平準化の計画を立てることができます。これが、アローダイアグラム法が進捗管理において高い効率を発揮する根拠となります。

 

6. PERTの利点と限界

アローダイアグラム法、特にPERTは、複雑なプロジェクトを管理するための強力なツールですが、その利点と限界を理解しておく必要があります。

利点としては、先に述べた複雑な計画の「一望性」や、CPの特定による「管理の焦点の明確化」に加え、不確実性の高いプロジェクトへの適用性の高さが挙げられます。PERTは、各作業の所要時間を楽観値(最短)、最頻値(最も可能性の高い時間)、悲観値(最長)の三点見積もりを用いて算出し、統計的な手法(ベータ分布など)を用いて作業時間の期待値と標準偏差を計算します。これにより、単一の見積もり時間ではなく、完了確率を考慮に入れた日程計画が可能となり、研究開発のような前例の少ない、所要時間のばらつきが大きいプロジェクトでも、リスクを定量的に評価しつつ、現実的なスケジュールを設定できるという大きな強みがあります。

一方で、限界もあります。第一に、ネットワーク図を作成するには、プロジェクトの全ての作業と、それらの間の順序関係を事前に明確に定義しなければならず、これに手間がかかります。プロジェクトが進行する中で関係性が頻繁に変わるような場合、図の修正が煩雑になり、手作業での運用は現実的でなくなります。第二に、PERTは基本的に時間(日程)の管理に特化しており、資源や費用の制約を直接的に扱う機能は含まれていません(後のPERT/COSTで補強されていますが)。特に、限られたリソースを複数の作業にどのように割り振るか、といった資源のボトルネックを解決するには、他の手法や専用のプロジェクト管理ソフトウェアの併用が必要となります。しかし、これらの限界を理解しつつも、PERTが提供するプロジェクトの論理構造の可視化とスケジュールの厳密な分析は、現代のプロジェクト管理においても基本的な考え方として非常に重要です。

 


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