4Pマーケティングミックスとは?マーケティングを考える上で重要な要素をわかりやすく解説
1. 4Pマーケティングミックスとは
4Pマーケティングミックスとは、ある製品やサービスを販売するに際して4つのPすなわちProduct(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(宣伝)を整合させて企画するフレームワークです。 他人のケースは良く分かるのに、自社になると全く統一感のない戦略になりがちです。フレームワークから、客観的に考えてみましょう。
2. マーケティングの4Pとは
マーケティングのフレームワークとして有名な「4P」。1960年にジェローム・マッカーシー(Jerome McCarthy)によって提唱された概念で、企業のマーケティングを考える上で重要な要素を4つに整理・集約したことで広く用いられるようになりました。
『誰に何をいくらでどのように売るのか?』を次の4つのPの要素に分けて検討します。
(1)Product=製品戦略(品質・機能・デザイン・ラインナップ・技術力・保守サービス など)
“何を”の部分は最重要であることはいうまでもありません。ターゲットセグメントから見て魅力的な製品やサービスをつくりあげなくてはビジネスにならないからです。
(2) Price=価格設定(価格・導入形態・支払い方法・支払い条件など)
マーケティングの中でも価格優位性は大きな差別化要因になります。製品やサービスそのものによる差別化が難しくなっている時代にあって、顧客から見た時の“コスト要因”は、購入するか否かの有力な判断基準の一つとなるからです。
(3) Place=販売チャネル(流通経路・店舗の立地条件・在庫・店の品揃え・配送 など)
直接販売か、代理店による販売か、訪問販売によるプッシュ型か、通信販売によるプル型か、店舗による対面販売か、ECによるネット販売かになります。インターネットの発達により、顧客に価値を届ける方法は近年大きく変化しつつあります。また流通と決裁システムが統合されており、様々な形態が選択できるようになりました。
(4)Promotion=広告・販促(広告宣伝、広報、販促活動、メディア活用 など)
イベント、キャンペーン、セミナー、Web、検索連動広告、メルマガ、DM、プレスリリース、カタログ、媒体を戦略的にどう活用するか、本格的なデジタル時代とともに、顧客に確実に到達するために戦略的なプロモーションの実行が求められます。
3. 4C分析:顧客視点のマーケティング
成熟した市場では、製品やサービスを提供する側(企業)の視点だけでなく、それを受け取る側(顧客)の視点がより重要になります。ここで登場するのが、ロバート・ラウターボーンが提唱した4Cというフレームワークです。4Pが企業側の視点であるのに対し、4Cは顧客側の視点からマーケティングを捉え直すための概念です。4PをそれぞれのCに対応させて考えることで、顧客中心の戦略を構築できます。
4P(企業視点)・・・・・・・4C(顧客視点)
Product(製品)・・・・・ Customer Value(顧客価値)
Price(価格)・・・・・・・ Cost(顧客が払う費用)
Place(流通)・・・・・・・ Convenience(利便性)
Promotion(宣伝)・・・・ Communication(コミュニケーション)
【Customer Value(顧客価値)】
4PのProduct(製品)は、企業が提供する「モノ」や「サービス」そのものを指しますが、4CのCustomer Value(顧客価値)は、その製品やサービスが顧客にもたらす「便益」や「解決」を意味します。例えば、カメラを販売する場合、企業は「高性能なレンズ」や「コンパクトなボディ」といった製品のスペックを考えます(Product)。しかし、顧客が本当に求めているのは、「美しい思い出を記録したい」「SNSで共有して人とのつながりを深めたい」といった体験や感情の価値(Customer Value)です。顧客が抱える課題を深く理解し、その課題を解決するための価値をどう提供するかを考えることが、現代のマーケティングにおいて不可欠です。
【Cost(顧客が払う費用)】
4PのPrice(価格)が、企業が設定する「金銭的な対価」であるのに対し、4CのCost(顧客が払う費用)は、顧客が製品やサービスを手に入れるために支払う総コストを指します。これには、製品の購入価格だけでなく、「お店に行くまでの時間や労力」「操作を覚えるための手間」「使用後の維持費」など、金銭以外の要素も含まれます。顧客は、単に価格の安さだけで購入を判断するわけではありません。これらの見えないコストも含めて、総合的に価値を評価しているのです。企業は、顧客が感じる負担をいかに軽減できるかを検討する必要があります。
【Convenience(利便性)】
4PのPlace(流通)は、製品を顧客に届ける「場所」や「方法」を意味しますが、4CのConvenience(利便性)は、顧客が「いかに簡単に製品を手に入れられるか」という観点です。例えば、実店舗の立地だけでなく、オンラインでの注文のしやすさ、支払い方法の多様性、迅速な配送などが含まれます。また、購入後の問い合わせ対応やアフターサービスも利便性の一部です。顧客のライフスタイルや行動パターンを分析し、最もストレスなく製品にアクセスできる手段を提供することが成功の鍵となります。
【Communication(コミュニケーション)】
4PのPromotion(宣伝)が、一方的に情報を発信する「告知」や「広告」であるのに対し、4CのCommunication(コミュニケーション)は、企業と顧客との間で双方向に行われる「対話」を意味します。ソーシャルメディアやレビューサイトが普及した現代では、顧客は企業からの情報だけでなく、他の顧客の意見や感想も参考にしています。企業は、一方的な情報発信に留まらず、顧客の声に耳を傾け、質問に丁寧に答え、関係を築く努力が求められます。顧客との対話を通じて、信頼関係を構築し、長期的な関係を維持することが重要になります。
4. 4Pから4Cへ、マーケティング戦略の進化
4Pと4Cはどちらか一方だけを考えるものではなく、相互に補完し合う関係にあります。4Pは企業が実行すべき施策を整理するための実用的なフレームワークであり、4Cはそれらの施策を顧客視点で見直すための思考法です。成熟した市場では、まず4Cで顧客のニーズや行動を深く掘り下げ、その洞察に基づいて4Pの具体的な戦略を策定するという流れが理想的です。顧客が求める価値を理解し、その実現に向けて社内の資源を最適に配分することが、持続的な成長を遂げるための重要な要素となります。
5. まとめ
流通チャネルを選択し、販売促進をするかはすべて製品供給側に委ねられていたのです。しかし、成熟社会を迎えて市場が飽和している現在は、買い手のニーズに寄り添わなくてなりません。これからの企業は、製品を提供するのではなく、顧客が抱える課題の解決が求められ、販売価格ではなく導入費用の適正化が求められます。流通は顧客の導入利便性に応えなくてはならず、Promotionよりも関係維持に向けた顧客とのCommunicationを重視したマーケティングを心掛けなくてはならないのです。成熟社会を意識したマーケティング戦略、4つのP:Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(宣伝)を整合させて企画することができるかどうかが、企業経営に求められるのです。