レジリエンスを高める技術(その1)

【レジリエンスとは 連載へのリンク】

1、6つのレジリエンス・コアコンピテンシー ← 今回の解説記事

2、自己認識(Self-awareness)

3、セルフコントロール(Self-regulation)

4、楽観性(Optimism)

5、心理的柔軟性(Mental Agility)

6、徳性の強み(Character Strengths)

7、人とのつながり(Connection)

 

 レジリエンスを高める技術を、これより分割して解説します。今回が、第1回です。
◆関連解説『人的資源マネジメントとは』
 

1.ポジティブ心理学

 
 ポジティブ心理学は、1998年当時、米国心理学会会長であったペンシルベニア大学心理学部教授のマーティン・E・P・セリグマン博士によって発議、創設された最新の心理学で、私たち一人ひとりの人生や、私たちの属する組織や社会のあり方が、本来あるべき正しい方向に向かう状態に注目し、そのような状態を構成する諸要素について科学的に検証・実証を試みる心理学の一領域です。
 
 ポジティブ心理学の大きな成果のひとつが米陸軍兵士を対象にしたレジリエンス研究です。レジリエンスとは、日本語訳がまだ定着していませんが、逆境力、回復力、復元力などと訳されています。この研究は、Master Resilience Program (MRT) とよばれているもので、戦地から戻ってきた多くの兵士が躁鬱感ややる気が起きないなどの精神的な問題に陥り、自殺にまで追い込まれるという問題に対して、総合的なトレーニングを行い、大きな効果を上げたというものです。現在では、ポジティブ心理学の一領域として、民間企業でも実施し成果を上げています。
 

2.レジリエンス(Resilience)

 
 MRT ではレジリエンスを次にように定義しています。
 
◆レジリエンスとは、成長し、また、さらに力強く成長する能力であり、苦境にあっては耐え抜く力です。
 
◆レジリエントな人には次のような特徴があります。 
   (1)リスクを予測し、かつ、リスクを引き受ける力を備えていると同時に、自分に与えられた
      チャンスをフルに活かす力を備えている。
   (2)リスクをチャンスととらえるが、やみくもな楽観主義ではない。
   (3)問題解決を見据え、自分の感情を把握し、コントロールする術に長けていること。
 
◆ レジリエンスは次のような能力の向上に寄与します。 
   (1)メンタル・タフネス
   (2)最高のパフォーマンス
   (3)柔軟性の高いリーダーシップ
   (4)目標達成
  
 この定義を見てわかるように、レジリエンスは逆境から這い上がるときに必要な特別な力というのではなく、社会生活を送る上で重要な力だということがわかります。逆境というほどではなくても、日常的に落ち込んでやる気が起きないことがあると思います。そういうときにできるだけ早く立ち直ることができれば、自分にとっても周りにとっても、所属している組織にとってもよいことなのは間違いありません。そのためには、一人ひとりが自分のレジリエンス・スキルを高めることが大切です。
 

3.6つのレジリエンス・コアコンピテンシー

 
 MRT ではレジリエンスを高めるためには以下に示している6つのスキル(コンピテンシー)を高める必要があるといっています。それぞれ次のようなことができるスキルのことです。
 
         
 
(1)自己認識:自分の思考スタイルを知る。自分の思考のクセを知る。
 
(2)セルフコントロール:自分の欲求を律する。自律心、自己調整、自己鍛錬などと同義。
 
(3)楽観性...
:自分にとっても社会にとっても望ましいと考えるものを期待し、追求する。
 
(4)精神的柔軟性:何かにとらわれたり、こだわったりすることを避けて、冷静に状況を把握し、柔軟に対応する。
 
(5)徳性の強み:自分の強みを知って日頃からその活用を心がける。
 
(6)人とのつながり:人との良好な関係を構築する。
 
 これら6つのコアコンピテンシーの一つひとつについて、次回以降でそのスキルを高めるための技術、方法を解説していきます。
 
 

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