価値づくりの研究開発におけるオープン・イノベーション 研究テーマの多様な情報源(その17)

 

 

1.「価値づくり」は自社の外から始まる  

◆関連解説『技術マネジメントとは』
 前回のその16に続いて解説します。「価値づくり」の大変重要なポイントは、それが自社の外、すなわち市場から始まるということです。顧客が現状に全て満足しているということはありません。なぜなら、BtoB製品であれば、顧客である企業は常に山積した課題を抱えているからです。課題のない企業などはないでしょう。なぜなら、企業経営はまさに課題解決の連続と同義であるからです。 
 BtoC製品でも同様です。人間の欲望はきりのないもので、現状に満足するということはありません皆さん、自分自身のことを考えてみればこの点はあきらかです。BtoB製品、BtoC製品両者とも、自社が提供している製品やサービスの周辺では課題や追加的な欲求が必ず存在している筈です。  
 つまり、自社の外、すなわち市場に目を向ければ、「価値づくり」の機会は、常に存在しているということです。これら課題や欲求は、涸れることのない「価値づくり」の源泉です。そのため、「価値づくり」の研究開発においては、ここを出発点とするのです。
 

2.最適な「価値づくり」を実現するために

 ここでの問題が、新たな「価値づくり」を自社の製品やサービスで実現しようと思えば、全ての経営資源が自社に存在してはいないものです。なぜなら、市場での「価値づくり」の機会は、自社の経営資源とは全く関係なく、そこに存在しているからです。もちろん、自社の経営資源で実現できる範囲での「価値づくり」をするということも、可能かもしれません。しかし、それは自ら、「価値づくり」の機会を大きく狭めてしまうもの以外のなにものでもありません。まさにこの考え方が、従来の「ものづくり」の考え方です。極論すると、自ら保有する経営資源の制約を考えることなく、市場に存在する「価値づくり」の機会に目を向け、ひたすらそこに邁進するのが「価値づくり」の基本的な考え方です。
 

3.オープン・イノベーションは「価値づくり」を実現するための重要な要素

 そうは言っても、その製品やサービスを実現できなければ絵に描いた餅です。ここで登場するのが、オープン・イノベーションです。オープン・イノベーションは、外部のアイデア・知識、技術、その他の能力を活用して、新た事業や商品を展開しようとする概念です。このオープン・イノベーションは、「価値づくり」の場で、自社の経営資源の欠落を補うという重要な機能を担ってくれます。
 

4.オープン・イノベーションのもう一つの役割

 実はオープン・イノベーション...
は、もう一つの役割があります。新たな「価値づくり」の機会の発見に貢献してくれることです。定常的にオープン・イノベーションの活動を行えば、市場に(潜在的に)存在する「価値づくり」の機会を、より見つけ易くなることです。補完する知識、技術、経営資源を外部で探す活動は、それ自体で、自社の知らない情報や知識を提供し、それらを利用しての新たな「価値づくり」の機会の発見に大きな貢献してくれます。加えて、オープン・イノベーションは、自社の固定的なものの見方を継続的に壊しという、まさにイノベーションの土壌づくりにも役立つという効果を持つものです。
  

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