TRIZにおける物理的矛盾

1. 物理的矛盾とは

 TRIZ(発明的問題解決法)の中には、使いこなせると強力なツールの一つに物理的矛盾があります。物理的矛盾とは、ある商品などのオブジェクト(構成要素)が「大きく、かつ小さい」、「存在し、かつ存在しない」、「熱く、かつ冷たい」、「重く、かつ軽い」 のように、改善する特性と悪化する特性のパラメータが同じ特性の場合の矛盾を言います。矛盾マトリクス上で両者の交点に表示される発明原理は、すべて空白となっています。(矛盾マトリクスについては、別の記事を参照してください)物理的矛盾の解決方法は、この矛盾する2つの要件をある観点で分離させることです。その観点として、主に次の4つの分離原理を使います。

① 「空間」で分離する
② 「時間」で分離する
③ 「相変化」を利用する
④ 「上位(下位)システム」に移行する

 2.物理的矛盾の簡単な事例

 プレゼンテーションなどでよく使われる指示棒を、物理的矛盾で解いてみましょう。支持棒は、プレゼンなどで使う場合には長くしたいですね。それに対して、収納する場合には、短くしたいものです。そこで例えば図1のように、4つの分離原理の中の「空間」で分離する原理を使ってアイデア出しをしてみましょう。スクリーン上で指示するポイントと手に持っている指示棒の空間を何かでつなげないかを考えてみます。その時、光でつなげばブレークスルーになると発想するわけです。その具体的な解決策として商品化したものが、レーザーポインターということになります。  

                                                                             図1 物理的矛盾の簡単な事例

3. 物理的矛盾の身近な応用例

 さらに、皆さんにとってもう少し大きな課題を、物理的矛盾を使って考えてみましょう。例えば、狭い土地にいくつもの部屋のある広い一戸建て住宅を建てたいとした時、庭は狭くなるというようなことがよくあります。この課題では、「広く、かつ、狭い」の物理的矛盾(改善する特性と悪化する特性のパラメータが同一)の例になります。

 ここで、TRIZの解決法である「空間で分離する」を用いてみます。間取りの広い住宅を実現するには、上空に伸びる3階建て住宅を考えつきます。「時間で分離する」をヒントに発想すると、日時を変えて住まいを選択する、つまり別の場所にマンションを借りるという案を思い浮かべることができます。

 また、どうしても解決策に行き詰ったときの解決策もTRIZは教えてくれます。上位概念に移行し、必要に応じて問題を再定義し、解決策を見出していくというプロセスです。さらにシステマチックな解決策が欲しい場合には、以前紹介した9画面法と組み合わせてみるのも良いでしょう。

◆関連解説『TRIZとは』

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