
私たちの身の回りにある電気製品には、便利さの反面、感電や発火といった重大な事故につながるリスクが潜在しています。こうした危険を未然に防ぎ、消費者の安全を確保するために不可欠なプロセスが「製品安全試験」です。今回は、製品安全の定義から、漏れ電流や耐電圧といった電気的特性の確認、構造上の安全性、さらには異常事態を想定した試験まで、主要な評価項目を網羅的に解説します。また、技術的な試験のみならず、ユーザーの誤使用まで考慮したリスクアセスメントの重要性についても触れています。製品開発において「受け入れられないリスク」を排除し、安全な製品を市場へ送り出すための実践的なガイドとしてご活用ください。
1. 製品安全試験とは
製品安全試験は、機器が感電、火傷、機械的危険などの危険防止に配慮した設計をしているか、また故障状態にあっても二次的被害を生じさせないか、などを検証し、危険要因を除去して受け入れできないリスクが内在する機器を市場に流通させないための試験である。図1に示すように、安全が確保されているか評価する各試験項目がある。
- ①感電(漏れ電流の測定)
- ②エネルギーによる危険(残留電流の測定)
- ③火災
- ④機械的危険(指挟み、転倒など)
- ⑤熱危険(火傷防止)
- ⑥放射線の危険(X線など)
- ⑦化学的危険(薬品など)
- ⑧患者への危険(医療のみ)

図1. 製品安全試験
【出典:実践!電子機器・部品の信頼性評価・解析ガイドブックPart4 日刊工業新聞社】
2. 漏れ電流試験
漏れ電流を測定することにより、 製品に人が触れたときに、製品から漏れた電流による感電の危険がないか、機器の接触可能部分の漏れ電流を測定して確認する。図2に示すように、自製品の操作部や外装部など、人が触れる部分と大地(接地)間の漏れ電流を測定する。
- ①接地漏れ電流・・・保護接地線を通って、大地に流れる電流。
- ②接触電流(タッチカレント)・・・機器外装から人を介して、大地に流れる電流。
- ③患者漏れ電流・・・医用機器規格で定められる、患者を介して、大地に流れる電流。意識がない患者もいるため、患者保護のためにほかの規格よりも厳しい。

図2. 漏れ電流試験
【出典:実践!電子機器・部品の信頼性評価・解析ガイドブックPart4 日刊工業新聞社】
3. 耐電圧試験
電気製品取り扱う電圧に対して、十分な絶縁耐力があるかどうか(絶縁の強度)を、絶縁間に高電圧を印加して確認する。試験の目的は、絶縁破壊があるもの、または絶縁破壊を起こす可能性のある不良品を見つけることである。耐電圧は絶縁破壊を生じることなく絶縁に印加できる電圧の上限である(絶縁耐力とも呼ばれる)。通常取り扱う電圧の10倍から20倍(一般的に1~20kV)の交流電圧または直流電圧で、規定された電圧を規定された時間(通常1分)を印加したとき、絶縁破壊を起こさなければ、その絶縁物は十分な絶縁耐力を持つと判断される。試験箇所は図3に示すように、自製品の電源線と接地間、トランスの一次側と二次側間などの絶縁抵抗を...

私たちの身の回りにある電気製品には、便利さの反面、感電や発火といった重大な事故につながるリスクが潜在しています。こうした危険を未然に防ぎ、消費者の安全を確保するために不可欠なプロセスが「製品安全試験」です。今回は、製品安全の定義から、漏れ電流や耐電圧といった電気的特性の確認、構造上の安全性、さらには異常事態を想定した試験まで、主要な評価項目を網羅的に解説します。また、技術的な試験のみならず、ユーザーの誤使用まで考慮したリスクアセスメントの重要性についても触れています。製品開発において「受け入れられないリスク」を排除し、安全な製品を市場へ送り出すための実践的なガイドとしてご活用ください。
1. 製品安全試験とは
製品安全試験は、機器が感電、火傷、機械的危険などの危険防止に配慮した設計をしているか、また故障状態にあっても二次的被害を生じさせないか、などを検証し、危険要因を除去して受け入れできないリスクが内在する機器を市場に流通させないための試験である。図1に示すように、安全が確保されているか評価する各試験項目がある。
- ①感電(漏れ電流の測定)
- ②エネルギーによる危険(残留電流の測定)
- ③火災
- ④機械的危険(指挟み、転倒など)
- ⑤熱危険(火傷防止)
- ⑥放射線の危険(X線など)
- ⑦化学的危険(薬品など)
- ⑧患者への危険(医療のみ)

図1. 製品安全試験
【出典:実践!電子機器・部品の信頼性評価・解析ガイドブックPart4 日刊工業新聞社】
2. 漏れ電流試験
漏れ電流を測定することにより、 製品に人が触れたときに、製品から漏れた電流による感電の危険がないか、機器の接触可能部分の漏れ電流を測定して確認する。図2に示すように、自製品の操作部や外装部など、人が触れる部分と大地(接地)間の漏れ電流を測定する。
- ①接地漏れ電流・・・保護接地線を通って、大地に流れる電流。
- ②接触電流(タッチカレント)・・・機器外装から人を介して、大地に流れる電流。
- ③患者漏れ電流・・・医用機器規格で定められる、患者を介して、大地に流れる電流。意識がない患者もいるため、患者保護のためにほかの規格よりも厳しい。

図2. 漏れ電流試験
【出典:実践!電子機器・部品の信頼性評価・解析ガイドブックPart4 日刊工業新聞社】
3. 耐電圧試験
電気製品取り扱う電圧に対して、十分な絶縁耐力があるかどうか(絶縁の強度)を、絶縁間に高電圧を印加して確認する。試験の目的は、絶縁破壊があるもの、または絶縁破壊を起こす可能性のある不良品を見つけることである。耐電圧は絶縁破壊を生じることなく絶縁に印加できる電圧の上限である(絶縁耐力とも呼ばれる)。通常取り扱う電圧の10倍から20倍(一般的に1~20kV)の交流電圧または直流電圧で、規定された電圧を規定された時間(通常1分)を印加したとき、絶縁破壊を起こさなければ、その絶縁物は十分な絶縁耐力を持つと判断される。試験箇所は図3に示すように、自製品の電源線と接地間、トランスの一次側と二次側間などの絶縁抵抗を測定する。
- ①基礎絶縁・・・保護接地した接触可能金属部(FG)と入力部(LN)をショートさせ、試験電圧を印加。
- ②-a強化絶縁・・・人が触れることができる二次回路(保護接地しない外装)と入力部(LN)をショートさせ、試験電圧を印加。
- ③-b強化絶縁・・・トランスの一次側入力と二次側出力に試験電圧を印加。

図3. 耐電圧試験
【出典:実践!電子機器・部品の信頼性評価・解析ガイドブックPart4 日刊工業新聞社】
4. アース通電試験
電気製品の安全性を確認するための試験であり、接触可能な金属部が確実に保護接地されているかを確認するための試験である。機器の故障等、万が一危険電圧が接触可能な金属部に発生したとしても、人体の抵抗よりも低い抵抗で アース(保護接地)されていれば、人体を通して電流が流れず、感電の危険から生命を守ることができる。アース導通試験はシャーシと被試験物のグラウンドポスト間のインピーダンスを測定することで行われる。一般的には25Aの電流を1分間印加し、そのときのインピーダンスが0.1Ω以下であることが求められる。図4にアース通電試験の保護接地概念図を示す。

図4. 保護接地の概念図
【出典:実践!電子機器・部品の信頼性評価・解析ガイドブックPart4 日刊工業新聞社】
5. 残留電圧試験
ユーザーが電気製品の電源プラグを引き抜いたとき、そのプラグの刃に触れた場合に感電しないように、プラグの差し込み刃に残留する電圧を測定し、その安全性を確認する。電源の一次側回路のコンデンサに蓄電された電荷が残留電圧の原因であり、 これは、差し込み刃を刃受けから引き抜いたときの電圧値の変化を測定する。図5に栓刃間の電圧波形を示す。電気用品安全法(電安法)では、差し込み刃間の電圧は1秒後において45V以下であることが規定されている。試験は10回程度繰り返して行う。

図5. 栓刃間の電圧波形
【出典:実践!電子機器・部品の信頼性評価・解析ガイドブックPart4 日刊工業新聞社】
6. 異常試験
自製品の異常動作、故障状態を想定した状態で、その製品の他の部分にどのような影響が発生するか、発火や絶縁破壊などの危険に対しどのような注意が必要なのか、評価試験を行う。このとき、製品の2箇所以上が同時に故障することはないものとする(単一故障試験)。
7. 構造試験
製品の構造上、人に対して危険な要因がないか、配線や表示灯の注意喚起が正しく表示されているか、確実に配線が固定されているか、実装基板などで絶縁距離が保たれているか、確認する試験である。
【構造確認】
テストフィンガーやテストピンを使用し、製品の開口部に指が入ったときや、充電部や可動部への接触有無を確認する。
【配線の色、表示】
電源ケーブルは流れる電源によって色が決められている。単相3線式は3本の電線を使用しており、中性線には白色、中性線の上下にある電線には黒色と赤色を使用する。国内のACケーブルでは、ニュートラル(N:Neutral)には白色、ライブ(L:Live)には黒色または赤色、アース(E:Earth)には緑色を使用する。弱電系では特にルールはないが、一般的に、赤色はプラス、黒色はマイナスとする。他にも組み合わせによって赤はプラス、白はマイナスとしたり、白はプラス、黒はマイナスとしたり、赤はプラス、青はマイナスとして使用する場合もある。
【絶縁距離(沿面・空間距離)】
絶縁物体上に置かれた導体に高電圧が印加されると、絶縁物の表面を伝わって放電が起こる。プリント基板で高電圧回路を設計する場合は沿面距離の確保が重要になる。沿面距離は実行動作電圧によって決められているが、この距離の確保が難しい場合は、図6のように基板に溝を設けて沿面距離を確保する。しかし、図7のように溝を設けても充填剤で埋め込んでしまうと元の空間距離に戻ってしまい、せっかく溝で対策した沿面距離が確保できなくなってしまうので、注意が必要である。

図6. 溝を設けた基板
【出典:実践!電子機器・部品の信頼性評価・解析ガイドブックPart4 日刊工業新聞社】

図7. 充填剤で溝を埋め込んだ基板
【出典:実践!電子機器・部品の信頼性評価・解析ガイドブックPart4 日刊工業新聞社】
8. 機械強度試験
機器の外郭(ケース)に鋼球やインパクトハンマーで衝撃を加え、つぶれ、割れにより危険な充電部が露出しないかを確認する。鋼球落下試験は、自製品に一定の重量の鋼球を一定の高さから落として、ヒビや故障などの異常が生じるかを調べる試験である。
9. ボールプレッシャー試験
危険電圧の部分が直接接している熱可塑性の絶縁材料が、異常熱に対する耐性を持っているかを確認する試験である。図8に示すように、先端が直径5mmの鋼球状になっているボールプレッシャー試験器を20Nの力で絶縁材料に押し付け、各規格で要求されている試験温度のオーブンに1時間放置する (導電部を保持する部品は125℃、その他の部分は80℃)。その後、鋼球によってできた凹みの直径を測定し、2mm以下であることを確認する。

図8. ボールプレッシャー試験器
【出典:実践!電子機器・部品の信頼性評価・解析ガイドブックPart4 日刊工業新聞社】
10. グローワイヤー(耐燃焼性)試験
電気・電子製品の異常過熱が起こりうる抵抗や、トランスなどの部位に使用する樹脂材料等に対して、火災の危険がないか、熱による危険がないか(火傷の恐れがないか)の安全性を確認する。650℃のグローワイヤ(熱源)を試料に近づけて試料の燃焼もしくは赤熱が起きないか、またはグローワイヤを引き離した後、試料の燃焼または赤熱が30秒以内に消え、かつ使用した包装用ティッシュが着火しないかどうかを確認する。
11. リスクアセスメント
リスクは、危害程度と頻度の組み合わせで表現される。リスクを見つけてその大きさを評価・識別し、受入可能なレベルまで必要な手立てを打っていくという手順になる。安全にとって、製品の誤使用はもう1つの大きな問題である。合理的に予見可能な誤使用はリスクアセスメントに組み込まなければならない。誤使用とはいっても、誰でもやってしまいそうなものから、どう考えても非常識なものまで、さまざまな段階がある。これをどこまで対策すべきか、安全確保の概念図としてOKAトライアングル(図9)がある。非常識な誤使用と、合理的に予見可能な誤使用には明確な境界があるわけではなく、時代や文化によって常に変動している。そういう意味で、誤使用の対応に当たっては、メーカーの常識ではなく、世の中の常識を考えなければならない。具体的なユーザー像を想定し、その人がどのように製品を使おうとしているのか、というシナリオを策定し、それに基づいて製品を評価する。

図9. OKAトライアングル
【出典:実践!電子機器・部品の信頼性評価・解析ガイドブックPart4 日刊工業新聞社】
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